ニックスに低迷期脱出の光=NBA

山脇明子

好スタートを切ったニックス

 米プロバスケットボール協会(NBA)が面白くなってきた。
 シーズン前から騒がれているヒートのことではなく、今季3連覇が期待されるレイカーズのことでもない。アメリカ一の大都市、ニューヨークに本拠地を置くニックスの力が増しているのだ。

 ニックスはこのオフ、フリーエージェント(FA)になったNBAの大スター、レブロン・ジェームズ(現ヒート)に振られてしまったが、大型FAの一人、元サンズのアマレ・スターダマイヤーとの契約に成功した。
 そしてスタートした新シーズン。6連敗を喫するなど11試合を終えた時点で3勝8敗で、今季もプレーオフとは無縁のチームになることを想像させた。
 だがその後5連勝すると1敗を挟んで、現地15日のセルティックス戦を前に8連勝中。ニックスが8連勝したのは1994−95シーズン以来16年ぶりで、25試合を終えて16勝9敗(勝率6割4分)という成績は、96−97シーズンに18勝7敗のスタートを切って以来の好スタートだ。
 しかも12日の試合では、それまで勝率6割3分6厘のナゲッツ相手にスターダマイヤーが30得点の活躍をし、8連勝に大きく貢献。この試合、勝負どころの後半だけで24得点したスターダマイヤーは、ニックスのチーム史上最長となる8試合連続30点以上を記録。ニックス入りしてわずか25試合でチーム史の一つを塗り替えた。

アンソニーがニックス入り希望?

 スターダマイヤーだけではない。NBAデビューから5年間ボブキャッツに所属し、今季からニックス入りしたポイントガードのレイモンド・フェルトンは、得点、アシストともに大きく伸ばし、4年目のウィルソン・チャンドラーはスリーポイント成功率が向上。イタリア人選手、ダニーロ・ガリナリはさらに効果的なプレーができるようになり、ルーキーのランドリー・フィールズはウィザーズのドラフトトップ指名選手、ジョン・ウォールをしのぎ、11月の東カンファレンス月間新人王を獲得。開幕からずっと先発出場で、すでに得点とリバウンドのダブルダブルを6度達成している。

 そして、このノリに乗っている最中にナゲッツのエース、カーメロ・アンソニーがニックス入りを望んでいるという報道が流れた。
 このオフ、FAになる権利を持っているアンソニーは、約半年前から延長契約の申し出を受けているものの、ナゲッツとサインしないままで、このまま拒否が続くようであれば、ナゲッツ側はアンソニーにチーム残留の意思がないと判断してトレードに出す可能性がある。同報道によると、アンソニーはニックスにトレードとなった場合のみ延長契約にサインする意志があるというのだ。
 8連勝した時点で、「もうアンソニーは必要ないのでは?」との声も挙がっている。しかし、もう一人スター選手が加われば、チームはさらにレベルアップできる可能性が高く、長年の低迷で衰えていた人気も上がるはず。

 ニックスが最後にプレーオフのファイナルに進出したのは、ロックアウトで開幕が遅れた98−99シーズン。以降、オーナーやフロントや監督に多くの問題を抱えながら長い低迷期を過ごし、ようやく光が見えてきた。
 米大リーグのヤンキースと同じくニューヨークを象徴するチームであるニックス。このチームが優勝を争えるレベルまで成長すれば、NBAは断然盛り上がるのだ。

<了>
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著者プロフィール

ロサンゼルス在住。同志社女子大学在学中、同志社大学野球部マネージャー、関西学生野球連盟委員を務める。卒業後フリーアナウンサーとしてABCラジオの「甲子園ハイライト」キャスター、テレビ大阪でサッカー天皇杯のレポーター、奈良ケーブルテレビでバスケットの中体連と高体連の実況などを勤め、1995年に渡米。現在は通信社の通信員としてMLB、NBAを中心に取材をしている。ロサンゼルスで日本語講師、マナー講師、アナウンサー養成講師も務めている。

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