注目は投打の超目玉と「ジャイアンツ型」チーム=本格化したストーブリーグの行方

出村義和

レンジャーズのリーグ初優勝に大きく貢献したクリフ・リー。レンジャーズ残留か、ヤンキース移籍かで注目されている。 【Getty Images】

 今年のポストシーズンはロイ・ハラデー(フィリーズ)のノーヒッターに始まり、ティム・リンスカム(ジャイアンツ)対クリフ・リー(レンジャーズ)というサイ・ヤング賞投手の熱い投げ合いでワールドシリーズを締めくくった。投手の活躍が目立ったレギュラーシーズンを凝縮し、ポストステロイド型ベースボールを暗示するような10月でもあった。56年ぶりのジャイアンツ優勝という意外な幕切れとなった2010年シーズンを踏まえて、各チームはどんな補強をしてくるのだろうか。ストーブリーグは15日(現地時間)に始まった恒例のGM会議から本格的に燃え上がる――。

クリフ・リーの争奪戦は一騎打ちの様相、松井は年内決定の可能性も

 新たなFA契約選手は15日の段階で、黒田博樹(ドジャース)を含めて4名。今年から規定が変わり、所属球団の持つFA独占交渉権がワールドシリーズ終了後15日間から5日間に短縮、活発な市場の動きが期待されたものの、ペース的には例年と変わらない。市場は投打の超目玉、クリフ・リー(レンジャーズ)とカール・クロフォード(レイズ)の動向をうかがっているのが現状といえよう。
 リーの争奪戦はレンジャーズとヤンキースの一騎打ちの様相を呈している。レンジャーズは地元テレビ局との20年契約によってばく大な中継権料を手にしたことで、総額1億ドル(約83億円)を超えるような超大型契約にも対応できる体制が整っている。一方のヤンキースは、もちろんレンジャーズを上回る好条件で対抗する。また、インディアンス時代の同僚で親しい関係にあるエースのCC.サバシアが口説き役として動いているという情報もあるので、争奪戦はし烈を極めることになるだろう。
 クロフォードにはエンゼルス、レッドソックスなどが有力といわれているが、フィリーズからFAとなったジェイソン・ワースとも並行して交渉する球団も出てくる見通しもあるので、複雑な展開になるかもしれない。
 
 気になる松井秀喜(エンゼルス)だが、今年は昨年のように守備にこだわっていないこともあり、早い時期からDHの必要なアスレチックス、タイガース、ホワイトソックスなど具体的なチーム名が挙がっている。DHのFAにはウラジミール・ゲレーロ(レンジャーズ)、マニー・ラミレス(ホワイトソックス)ら大物もいるが、彼らの契約交渉は難航が予想される。したがって、松井の場合は単年契約で300万ドルから400万ドル(約2億5000万円から3億3000万円)程度であれば、移籍先が年内に決定する可能性は十分ある。

「ジャイアンツ型」チームのアスレチックスが積極的な動き

 ストーブリーグはまだ序盤戦、大きい動きのない中で目を引くのはアスレチックスの積極性だ。ポスティングで岩隈久志(楽天)の独占交渉権を獲得、トレードで俊足好打の外野手デービッド・デヘスス(ロイヤルズ)、ブルージェイズから戦力外になったパンチ力のある三塁手エドウィン・エンカーナシオンを手にした。今シーズンは81勝81敗の2位に終わったが、この3人が加入するだけでもかなりのレベルアップが望める。チャンピオンのレンジャーズを倒すことも可能だ。というのも、アスレチックスは対岸に本拠地を置くジャイアンツと非常に似かよったチーム構成になっているからだ。特に、イキのいい若手先発投手と、強力なクローザーがいる点だ。リーグトップのチーム防御率(3.56)を支えている先発陣の最年長は、完全試合を達成した27歳のダラス・ブレイデンという若さ。守護神のアンドリュー・ベイリーは故障もあって25セーブに終わったが、安定感は抜群だ。ジャイアンツと強い共通性を持つということは、換言すればポストステロイド時代に相応しいチームということもいえるわけだ。

「優勝ラインが90勝を割り込めば、ウチにもチャンスはある」
今春、アリゾナで取材したときにビリー・ビーンGMは自信あり気に語り、若手投手陣への期待を口にした。それだけに、来シーズンにかける思いは強いのだろう。そして、それがストーブリーグ序盤戦の積極策に示されているとみていいのではないか。一連の動きをみていくと、松井獲得へとつながっていくような気もする。今オフのアスレチックスはなかなか面白い。
 このほか、レイズやレッズといったところも若手投手中心で、ジャイアンツ型といえるチームだ。いずれ、ヤンキースやレッドソックスというビッグマーケットのチームがストーブリーグの主役になっていくだろうが、ジャイアンツ型チームの動向にも大いに注目したい。

<了>
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著者プロフィール

スポーツジャーナリスト。長年ニューヨークを拠点にMLBの現場を取材。2005年8月にベースを日本に移し、雑誌、新聞などに執筆。著書に『英語で聞いてみるかベースボール』、『メジャーリーガーズ』他。06年から08年まで、「スカパー!MLBライブ」でワールドシリーズ現地中継を含め、約300試合を解説。09年6月からはJ SPORTSのMLB実況中継の解説を務めている

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