清水の決断、長谷川監督退任が意味するもの=現状維持ではなく次のステップへ
タイトル獲得はならなかったが、残した功績は大きい
今季限りでの退任が発表された長谷川監督(左)。6年にわたって清水を率いたが、タイトルは獲得できず 【写真は共同】
この日、クラブはオフに入っていたため、11月1日、月曜日の朝になって初めてクラブから、「長谷川健太監督 今シーズン限りでの退任のお知らせ」と正式なリリースが出され、やや遅れてではあるが、コーチングスタッフの退任も決まった。バタバタ騒ぎが続く中、選手たちには、練習が行われる前に早川巖社長自ら説明が行われた。これにより、6年にわたる長谷川政権は今シーズンいっぱいで幕を閉じることとなった。
そして、そこからは主力選手の来季の契約延長なしの話など、過熱気味の報道が先行。リーグ戦6試合を残して、清水エスパルスは喧騒(けんそう)の中へとのみ込まれた。
就任1年目こそ残留争いからスタートしたが、そのシーズンの天皇杯では準優勝。長谷川監督は、若手選手の育成に力を入れ、現在のチームの軸となる選手たちを育て上げた。FW出身の選手でありながら緻密な守備戦術を徹底し、ゴール前に人数をかけブロックを作る方法で堅守を構築すると、それが功を奏し、リーグ戦、カップ戦問わず好成績を残すことに成功した。2010年には、ドイツから帰国した小野伸二を獲得し、攻撃的な4−3−3システムを採用。今季こそタイトル奪取を……と気合いを入れて挑んだのだが、過密日程による選手の疲労やけが人の続出などもあって、成績は徐々に下降し、またしてもタイトルには手が届かないシーズンとなった。
しかし、過去5年を振り返ると、タイトル獲得はならなかったが、長谷川監督が残した功績は大きい。特に若手の育成に関しては輝かしい限りだ。就任以後、日本代表に選ばれた選手は候補も含めると、岡崎慎司、藤本淳吾、本田拓也、山本海人、青山直晃、岩下敬輔、太田宏介ら多数に上る。つまり長谷川監督は、これからの清水を背負って立つ若い世代を育て、チームのベースを築いてきたのだ。それだけに、今シーズン限りでの退任は残念でならない。
これ以上の上積みを計算できないと判断
しかし、クラブはこれ以上の上積みを計算できないと判断。現状をキープするのではなく、次のステップに進むことを選択した。
「もともとの3年+2年で1つの区切りとして考えると、今年はオプションの1年。『(監督)本人も結果で評価してほしい』と言っていた。また、サッカー的にも次のステップに入っていかなければいけない」と望月達也強化部長も、長谷川監督との契約延長に至らなかった経緯を語っている。
クラブ側も決して長谷川監督の功績を評価していないわけではない。ただし、これまでタイトルを獲得できなかった理由、原因が必ずあり、そうしたものを克服していくためには改革が必要という考えが根底にある。