NBA開幕直後の不穏なニュース

山脇明子

アンソニーがトレード志願か

 米プロバスケットボール協会(NBA)の2010−11シーズンが開幕した。
 今季はヒートにレブロン・ジェームズ、ドウェイン・ウェード、クリス・ボッシュの若手スターがそろうなど注目度が高く、デイビッド・スターンNBAコミッショナーも「過去最高に値するシーズンとなるだろう」と話したほどだ。
 だが、そんなシーズン開幕の中で「なぜ、こんなタイミングで……」と思ってしまうニュースもある。

 その一つはナゲッツのエース、カーメロ・アンソニー。このオフシーズンからずっとトレードのうわさが絶えないが、開幕戦を勝利で終えた後に“I feel it’s a time for change(今が変わる時と感じている)”とチームを出る意志があることを示唆する発言をしたのだ。
 そもそもアンソニーのトレード話は、彼がチームから提示されている延長契約の申し込みを4カ月以上も受けずにいることから始まっている。成立寸前までいったトレードもあったが破たんし、当分はナゲッツに落ち着くものかと思われていた。それも本人が、「アンソニーはトレードを望んでいる」という報道に対して「トレード志願はしていない」と否定し、「(何も起こらない間は)僕はナゲッツであり、全力でプレーする」と話していたからだ。
 アンソニーは「今が変わる時」報道が流れた後、「別にチームを出たいという意味ではない」と弁明した。しかし開幕で好スタートを切った直後のその発言は、戦力もあり可能性を秘めるナゲッツのほかの選手にどう映ったであろうか?  
 もちろん、これはアンソニーだけではなく、彼に残りたいと思わせることのできないチームにも責任はある。だが、エースの行方が不透明なナゲッツが、どのようなシーズンを送ることになるのか疑問は深まるばかりだ。

セルティックスで起きた取っ組み合い

 もう一つは、セルティックスの控え選手、ボン・ウェイファーとデロンテ・ウエストのロッカールーム内での取っ組み合いのけんかである。
 このけんかに対しては、実際に起こったことは認められているものの、きっかけなどについては「練習でウエストがウェイファーに繰り返しファウルをし、練習後ウェイファーに続いてウエストがロッカールームに入っていった」くらいで詳しく述べられていない。
 チームメートのレイ・アレンが言うように、勝負を仕事とする世界では時にこのようなけんかもあるであろう。だが、なぜ開幕直後のチームが一つにならねばならない時に、練習での白熱した争いならともかく、ロッカールームでの取っ組み合いにならなければいけないのか? しかもセルティックスは、昨季ファイナルまで勝ち進み、今季もヒートの対抗馬として争う高レベルのチームだ。
 無論、セルティックスの中心選手であるポール・ピアース、ケビン・ガーネット、アレンらは、これぐらいのことに動じない大ベテランであるため、チームにそれほどの影響は出ないであろう。しかし、そういうお手本になる選手がいるからこそ、若手は自らの立場をわきまえ「個人」ではなく「チーム」としての精神を持つべきだ。
 
 今日もアメリカのスポーツニュースは、結果だけでも注目されるNBAの話題を景気よく報道している。そしてそんな中だからこそ、「悪いタイミング」で起こったニュースについ関心が高まってしまうのである。
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著者プロフィール

ロサンゼルス在住。同志社女子大学在学中、同志社大学野球部マネージャー、関西学生野球連盟委員を務める。卒業後フリーアナウンサーとしてABCラジオの「甲子園ハイライト」キャスター、テレビ大阪でサッカー天皇杯のレポーター、奈良ケーブルテレビでバスケットの中体連と高体連の実況などを勤め、1995年に渡米。現在は通信社の通信員としてMLB、NBAを中心に取材をしている。ロサンゼルスで日本語講師、マナー講師、アナウンサー養成講師も務めている。

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