パドレス失速で三つどもえの戦いへ=ナショナルリーグ西地区、優勝の行方は?

出村義和

攻守でチームを引っ張るジャイアンツのルーキー捕手ポージー 【Getty Images】

 ポストシーズン進出を懸けての戦いが熾烈(しれつ)になってきた。特に、ナ・リーグ西地区は戦前の予想を覆して首位を快走していたパドレスが、8月下旬から10連敗を喫したことで三つどもえの様相を呈してきた。粘り強く追い続けてきたジャイアンツ。9月に爆発的な力を発揮するロッキーズ。個性的な3チームが4.5ゲーム差(現地時間8日時点)の中でぶつかり合う最終盤。9日からはパドレス対ジャイアンツの首位攻防4連戦も始まり、目の離せないレースが最後の最後まで展開されそうだ――。

A・ゴンザレスが孤軍奮闘のパドレス打線

 チーム防御率トップのパドレスはもちろん、ほかの2チームも安定した投手力があったからこそ優勝争いを演じているわけだが、最終盤のカギを握るのは3人の打者ではないか。 エイドリアン(パドレス)とカルロス(ロッキーズ)の2人のゴンザレス、そして大物新人バスター・ポージー(ジャイアンツ)だ。

 最下位の予想が圧倒的だったパドレスは、メジャー2年目で14勝(5敗)のマット・ラトスを中心とする若手投手の成長がそのままチーム力を飛躍的にアップさせた。しかし、長年の貧打線は解消されず、10連敗の原因になったのもチーム打率がリーグ13位の打撃陣にあった。そのため、8月25日時点でジャイアンツに「6.5」、ロッキーズに「10.5」のゲーム差が一気に縮んでしまった。
 もちろん、球団フロントは手をこまねいていたわけではない。ミゲル・テハダとライアン・ラドウィックといった実績のある打者をトレードで獲得するなどの補強を行った。しかし、なかなか機能しない。その中で孤軍奮闘しているといっていいのが、主砲エイドリアン・ゴンザレスなのだ。打率3割8厘、90打点、ホームランは4年連続30本まで3本。
「自分の役割をしっかり果たすこと」と、寡黙な選手として知られるエイドリアンは言葉少なに語るが、まさにその通りのことをやってのけている。3部門の成績以上に目を奪うのが、メジャートップの4割1分6厘という得点圏打撃だ。
 来オフにFA資格を得られることで、トレードのうわさが絶えないが、「周囲の声にまったく惑わされない。素晴らしい集中力を持つ選手」と、バド・ブラック監督は絶賛し、絶大の信頼を寄せる。

新人捕手が引っ張るジャイアンツと終盤強いロッキーズ

 03年以来の地区優勝を狙うジャイアンツには、ポージーがいる。ジャイアンツもパドレスと同じように打撃陣に弱点のあるチームだが、5月29日に昇格以来、そのカンフル剤どころか中心打者にのし上がった。特に、7月は持ち前の広角打法で打率4割1分7厘、7本塁打、24打点の大爆発。月間最優秀新人にも輝いた。打つだけではない。捕手としても新人離れしたリードをみせ、デーブ・リゲッティ投手コーチも「安心して任せられる」と言うほど。最終盤の活躍次第では、出遅れながらも新人王に選ばれる可能性が膨らむ。
 ジャイアンツも打線のテコ入れに、レイズを戦力外になったパット・バレルを手始めに、ホセ・ギーエンやコディ・ロスを獲得したが、効果が表れているとは言いがたい。それだけに、ポージーに対する期待度がますます高まっている。

 ロッキーズにはカルロス・ゴンザレスがいる。メジャー3年目で大ブレーク。打率3割4分、100打点はともにリーグトップ、32本塁打は3位タイだ。36本塁打でトップのアルバート・プホルス(カージナルス)まで4本差。三冠王の可能性もある猛打ぶりを発揮しているのだ。いまや、フルネームを短縮した『カーゴ』というニックネームもつけられ、コロラド随一の人気選手だ。
「勝とうが負けようが、起きたことはすべて過去のこと。目の前にあることをしっかりやる」と、ベネズエラ出身の24歳は力強く語る。
 このカーゴの猛打が大きな起爆剤になって、ロッキーズは9月3日から7連勝をマーク、猛追している。ロッキーズは9月に強く、球団初のリーグ優勝を果たした2007年には最後の15試合で11連勝を含む14勝1敗、ワイルドカードをつかんでいる。また、昨年も9月以降20勝11敗と大きく勝ち越し、ポストシーズン進出を果たしている。

 まだ3チームの直接対決は残されており、しかも最後の3試合はパドレスとジャイアンツの対戦が組まれている。優勝争いとともにワイルドカードでのポストシーズン進出が懸かっている三つどもえレース。ドラマチックな幕切れが待っているに違いない。

※チーム成績、個人成績は現地時間9月8日時点のもの

<了>
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著者プロフィール

スポーツジャーナリスト。長年ニューヨークを拠点にMLBの現場を取材。2005年8月にベースを日本に移し、雑誌、新聞などに執筆。著書に『英語で聞いてみるかベースボール』、『メジャーリーガーズ』他。06年から08年まで、「スカパー!MLBライブ」でワールドシリーズ現地中継を含め、約300試合を解説。09年6月からはJ SPORTSのMLB実況中継の解説を務めている

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