躍進のレッズ、若手台頭で久々のV争いへ=MLB

出村義和

90年以来の好チームに盛り上がる地元

打撃でチームを引っ張るボット 【Getty Images】

 長い低迷を続けていた伝統のチーム、シンシナティ・レッズが本命セントルイス・カージナルスと激しいデッドヒートを演じている。現地時間7月22日現在、1.5ゲーム差の2位に後退したが、それでもシンシナティは久々に訪れた優勝のチャンスに盛り上がりをみせている。
 地元記者として1970年代の終わりから地元紙でレッズを取材し、現在は地元テレビ局でコメンテーターも務めるハル・マッコイ記者は、「ワールドシリーズで最後に優勝した90年以来の好チーム。今の調子なら10月まで勝ち残れるだろう」と、太鼓判を押す。

「このチームが強いのは、25人がそれぞれの役割をしっかり果たして、勝つということに一丸となっているからだ」と、ユーティリティープレーヤーとして渋い働きをしているミゲル・カイロが言う。ナイトゲームの翌日、試合開始は12時35分だというのに、カイロは9時に一番乗りで球場入りして準備を整えていた。チームリーダーのスコット・ローレンが右ハムストリングを痛めているため、このところ代役として先発出場が続いている。そして、打率3割を超える活躍で穴を埋めている。このカイロの姿にレッズというチームの勝つ姿勢がうかがえる。

 もちろん、打撃3部門でチームトップのジョーイ・ボットの強打を抜きには躍進を語れない。しかし、カイロが言うように25人で戦っているという印象が強いチームだ。セカンドのブランドン・フィリップスとショートのオルランド・カブレラの軽快な守備は投手陣の大いなる助けになっている。併殺プレーは、まさにザ・プロフェッショナル。守備面での向上がみられるボットがファースト、そしてゴールドグラバーのローレンがサードを守る内野陣はリーグ最高といわれるフィラデルフィア・フィリーズにひけをとらない。

好調な割には静かな選手たち

 投手陣も安定している。ブロンソン・アローヨ中心の先発陣は、伸び盛りのジョニー・クエト、さらにマイナーリーグ経験なしでいきなり7勝をマークしているマイク・リークの存在で層が分厚くなった。昨年トミー・ジョン手術でほとんど棒に振ったエディソン・ボルケスが復帰、これで現在DL(故障者リスト)に入っているベテランのアーロン・ハラングと、期待の星ホーマー・ベイリーが戻ってきたら、ローテーションからはみ出す投手も出てくるほどの充実ぶり。他にもメジャー3回目の登板で、完全試合まで3人のところまでいったトラビス・ウッドという逸材もいるのだ。

 このような激しい競争は結果となってはっきりと現れている。22日終了時点でチーム防御率は4.17と決していいとは言えないが、先発投手陣は6月20日から7月20日まで2.92という素晴らしい防御率を残している。これはホワイトソックスと並ぶメジャートップだ。
「今年のチームの特徴は、若手の伸びでベテランとのバランスがよくなったこと。これほどたくさんの新人が出て、自信を持って使え、しかも戦力になったのはあまり記憶にない」と、ダスティ・ベーカー監督が言うほど、台頭が著しい。リーク、ウッドの投手コンビを始め、クリス・ヘイシーら野手陣合わせて6人もの新人がいるのだ。

 だから、なのか。クラブハウスは勢いのあるチームの割には静かだ。新人はおとなしくする、というのがメジャー共通の「書かれざるルール」があるからなのだろうか。この点は90年、ルー・ピネラ監督(現カブス)が率いたチームとは大きく違う。当時は、守護神ロブ・ディブルらブルペン陣に個性的で気性の荒いメンバーがそろい、彼らには“ナスティーボーイズ”というニックネームまで冠せられた。実際、ピネラ監督とディブルはクラブハウスで取っ組み合いの喧嘩(けんか)までやったことがある。

 2010年型のブルペンは40歳で初めてオールスターに選ばれたセットアップマンのアーサー・ローズがリーダーだ。クローザーのフランシスコ・コルデロとともに、やはり物静か。90年型とは実に対照的だ。
 しかし、本性をむき出しにして戦うのはこれからが本番。レッズの本拠地グレートアメリカン・ボールパークは10月まで真っ赤に染まるだろうか。

<了>
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著者プロフィール

スポーツジャーナリスト。長年ニューヨークを拠点にMLBの現場を取材。2005年8月にベースを日本に移し、雑誌、新聞などに執筆。著書に『英語で聞いてみるかベースボール』、『メジャーリーガーズ』他。06年から08年まで、「スカパー!MLBライブ」でワールドシリーズ現地中継を含め、約300試合を解説。09年6月からはJ SPORTSのMLB実況中継の解説を務めている

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