TAJIRIが語る4・23「SMASH.2」完全ガイド!

(C)スマッシュ

大成功に終わった旗揚げ戦から1か月。「SMASH.2」の見どころをプロデューサーのTAJIRIに語ってもらった。 【神谷繁美】

 いよいよ開催間近となったスマッシュ・プロレス部門第2弾大会4・23「SMASH.2」(新宿FACE)。これから「SMASH」という舞台で創り出されていくストーリーの第1話とも言うべき闘いがついにこの大会からスタートしようとしている中、プロレス部門のプロデューサーを務めるTAJIRIに各試合の見どころを語ってもらった。

――さて、いよいよ4・23「SMASH.2」(新宿FACE)が近づいてきました

TAJIRI 今回のショーは大きく上から俯瞰(ふかん)して見ると、二人の新人選手がデビューするし、二人の外国人選手がビッグチャンスをものにしようとするステージなんですよね。それで、僕が今までプロレスを15年間やってきた経験から、ある日を境に人生が一変するような日があるんですよ。そういった日を誰がつかむのか、そういうのが今回のショーの軸になったような気がするんですよね。別に意識をしてそうなったわけじゃないんですけど、やっぱり僕がプロデュースをしている以上、自分の経験に基づいたもの、しかも影響が大きかったものから表に出ていくと思うんですよ。今回はそういう見方をすると面白いんじゃないかなという気がしますね。

――それでは、各試合の見どころを語っていただきます!

TAJIRI わかりました(ニヤリ)。

第1試合:TAJIRI vs. カイル・セバスチャン

前回のワールドトライアウトでTAJIRIと対戦したMentalloは、「SMASH.2」の出場権を勝ち取った。果たして今回のセバスチャンは? 【神谷繁美】

TAJIRI カナダの名門であるハートファミリーに入門したけどプロレスラーになる夢が叶わなかったセバスチャンの父親が息子セバスチャンにその夢を託し、セバスチャンが子どものころから家のベッドの上でプロレスごっこをして育てたっていう、これはまさにカナダのプロレス版「巨人の星」ですよ(笑)。そんな彼が、自費で海を渡って日本に来るんですからね。その覚悟だけでも、ある程度できあがってるなと。あと、映像で彼の試合を見たんですけど、とにかく背が高くて(身長190cm)、長い手足を上手く使ってるんですよ。最近の日本のプロレスでああいうスタイルの選手は見たこともないし、WWEでも見たことがない。特異なスタイル、特異な生き物っていう感じがする選手なんですよ。

――セバスチャン選手はまだ20歳ですが、16歳でデビューしているのでキャリア4年です。そんな彼をTAJIRI選手は“天から降ってくるムササビのような男”と表現されてましたよね

TAJIRI 本当にそうなんですよ。だから、僕も今まで経験したことがないような、かなり未知数な試合になってくるんじゃないかっていう気がしますね。そう言えば、昔読んだ子ども向けのプロレス大百科みたいな本で、お父さんからプロレスを教えられている子供の絵が載ってたような記憶があるんですよ。確か、ディック・マードックを紹介しているページだったような気がするなぁ。

――今調べてみたんですけど、確かにディック・マードックの父親もプロレスラーで、マードックは幼少期からプロレスの英才教育を父親から受けていますね

TAJIRI そういった親子関係なんかも、今の日本に失われつつあるものじゃないですか。結局、世間にプロレスを届かせることってそういうことなんじゃないかなって僕は思うんですよ。芸能人とコラボしてテレビ番組に出るとかそういうことだけじゃなくて、世の中にいい心の揺さぶりを起こす作業をプロレスという手段を用いてやらなければいけないのかなと。だから、セバスチャンは、僕がSMASHでやろうとしている方向性にピッタリの選手だと思うし、そのような人生を送ってくれた男がよくぞ日本に来てくれたっていう感じですね(笑)。そして、さっきのファイトスタイルの話に戻るんですけど、セバスチャンは、何かこう作戦として原始的な戦法を取る選手なんですよね。それがまた見ている側にシンプルかつストレートに伝わってくるんですよ。その闘い方を見ていると、彼のお父さんもすごくピュアな人間なんじゃないかなと。そして、セバスチャン自身もすごくストレートでいい男なんじゃないかなっていう気がしますね。

――前回のMentallo選手もそうでしたが、この「ワールドトライアウト」は見ているファンの方々の期待度も高いと言いますか、初めて見る選手にあそこまで声援が飛ぶというのも、これまであまりなかった光景でしたよね

TAJIRI やっぱり、出てくる選手に謎が多いからこそ、見ている側の好奇心っていうのも高いんじゃないかな。実際に、僕が見たセバスチャンの試合映像なんかでも、髪が長くてロングパンツを履いていたかと思うと、別の映像では短いパンツで坊主頭だったりとか、よく見ればどちらもセバスチャンなんですけど、そういった外見ひとつ取っても謎だらけというか。こういった未知の選手がやって来るというのは、闘う僕も楽しみですよ(笑)。

――セバスチャン選手にはどういった期待をされますか

TAJIRI 極論を言えば、セバスチャンには、トライアウトで僕に勝って、日本のメジャー団体にも目を付けられるような選手になって欲しい。そして、最終的にはWWEまで上り詰めて、「レッスルマニア」のリングでお父さんと一緒に泣いてもらいたいなぁ。そこまでのサクセスストーリーを僕も見てみたいし、彼だったらやれるんじゃないかな。

第2試合:大原はじめ vs. 児玉ユースケ

09年3月に練習生としてハッスルに入団、小路(左)の指導を受け、今大会でデビューする児玉(中央) 【(C)スマッシュ】

TAJIRI 児玉は、去年の3月に練習生としてハッスルに入ってきたんですよ。そこから、まさに嵐のような練習生生活を経て、ようやくこぎ着けたデビュー戦ですからね(笑)。

――児玉選手が練習生としてハッスルに入ってきたときの第一印象はいかがでしたか?

TAJIRI 最初にパッと見たときは、若いのになんかさえないなっていう感じだったんですよ(笑)。ただ、そのときに練習生が3人くらいいたんですけど、デビューできるのは児玉だなっていう直感みたいなのもあったんですよね。で、それからすぐに僕は新日本や他団体に出たり、外国に行ってたりしてたのでしばらく道場に顔を出してなかったんですよ。そして、道場にまた顔を出すようになったら、島田(裕二)さんが「今度入ったのは、なかなかいいらしいねえ」って言ってたんで、誰のことかなと思ってたら、それが児玉のことだったんですよ。それは島田さんだけじゃなく、道場にいた周りのみんなも「いいですよ」って言ってたんですよね。

――デビュー前から好評価を得ていたわけですね

TAJIRI 実際に、児玉はボディバランスがすごくいいんですよ。ドロップキックなんかも練習生で入ってきた頃から異様に上手かったですからね。小路(晃)さんが児玉に総合格闘技の練習も仕込んでるんですけど、ボディバランスがいいから本格的にやれば総合でもいけるって、小路さんも僕と同じことを言ってたんですよね

――実際に、児玉選手は、昨年9月に高田道場のグラップリング大会に出場して一本勝ちを収めているんですよね

TAJIRI だから、ファイターとしてはデビューできるだけのレベルにはすでに達してるんですよ。ただ、まだ身体の線がちょっと細いかなと。でも、だからと言って何かきっかけを与えてやらないと、その先も見えてこないじゃないですか。デビュー戦で児玉が何を見せてくれるのか、すべてはそこからだと思います。

――その一方、児玉選手のデビュー戦の相手を務めるのは大原はじめ選手です

TAJIRI 大原は、今回もメーンを任されているし、最近やけにイライラしてるから児玉のデビュー戦なんて眼中にないっていう感じですよね。それで、3・26「SMASH.1」のKUSHIDA戦の試合後に垣間見られたんですけど、大原はじめという男は、実はかなり凶暴な奴なんじゃないかと。だから、児玉は逆に大原を殴り倒してやるぐらいの気合いで臨まないと、やばいんじゃないかなって気がしますね。

第3試合:Mentallo vs. 田中将斗 vs. 小路晃

「日本で人気が出る素質を持っている」とTAJIRIも期待するMentallo(上)は、田中、小路と3WAYマッチで対戦 【神谷繁美】

TAJIRI これは誰がなんと言おうと、デスマッチをやらせたら日本一の田中選手が負けることはまず無いでしょうね。だけど、そういう闘いの中で、Mentalloと小路さんのどっちが存在感を発揮できるのか、あるいは物すごい壮絶なものを見せられるのか、それがこの試合のポイントだと思います。

――TAJIRI選手は「SMASH.1」(3.26、新宿FACE)で行われたワールドトライアウトマッチでMentallo選手と闘われましたが、Mentallo選手がトライアウトに合格できたポイントはどこにあると思われますか?

TAJIRI 改めてあの試合を映像でじっくり見てみたんですが、とにかく技が正確なんですよ。ミスもなかったですよね。ただ、動きそのものはシャープでもなければキビキビもしてなく、まったりしてるところもあってですね(笑)。でも、逆にそのまったりしたところが、あの覆面と妙にマッチしていていいんですよ。最近の外国人選手はあまり見られないタイプですし、たぶん日本で人気が出る素質をMentalloは持ってますよ。

――パッと見は無機質なイメージがあったんですけど、闘いそのものは人間味にあふれているというか、そのギャップがまた良かったですね(笑)

TAJIRI 試合の終盤で、彼が僕のハイキックをくらって崩れ落ちる場面があったんですけど、根元からポッキリ折れたような味のある崩れ方をしていましたよね(笑)。もちろん、ああいうのは狙ってできるものでもないし、先天的な才能なんでしょうね。おそらく、彼の試合を見て、かっこいいと思ったお客さんはいないと思うんですよ。ただ、なんか妙に気になるというか、応援したくなるかわいらしさがあるというか(笑)。

――会場でも、お客さんからMentallo選手への声援はよく飛んでましたよね

TAJIRI 僕が今まで闘ってきた相手の中では、ビリー・キッドマンにひじょうに似てましたね。ビリーも動きそのものは機敏ではないんですけど、技のミスもないし、全体的なアベレージが高い選手なんですよ。それでいて、ビリーもまったりしてるという(笑)。でも、そういうタイプの選手っていうのは、闘う方からすればすごく手ごわいんですよ。主導権を奪おうにも、なかなかペースを崩せないんですよね。

――そんなMentallo選手が、今回は自ら田中選手との対戦を熱望し、さらにはデスマッチルールで闘いたいという希望を出してきたのですが

TAJIRI Mentalloは、FMWが大好きで、田中将斗にあこがれていたんですよね。そのあこがれだった選手とリングの上で闘う日が来るという、それを見られるだけでも僕は幸せですよ。Mentalloが有刺鉄線バットを持つ姿を、僕もいちファンとして見たい(笑)。

――そして、当初はMentallo vs. 田中で発表していたこのカードですが、新たに小路晃選手が加わっての3WAYマッチに変更となりました

TAJIRI もともと田中選手の参戦が決まったときに、僕は小路さんとのシングルマッチを考えていたんですよ。だけど、その間にMentalloが割って入ってきた。もちろん、小路さんとすれば面白くない話ですよね。で、やっぱり「PRIDE」で世界の強豪と渡り合って脚光を浴びていたあの小路晃が有刺鉄線バットを持つ姿っていうのも、この前の会見でもそうだったんですがすごく新鮮でしたよね。

――確かに、小路晃と有刺鉄線バットの組み合わせのインパクトはすごくありました

TAJIRI だから、あとはそのインパクトに負けない試合を小路さんが見せられるかどうかだと僕は思うんですよ。その一方で、田中選手は有刺鉄線バットに魂をぶち込んでフルスイングしてくるわけですよね。小路晃という男は絶対にそれをスカしたりはしないし、きっと胸を張って受けて立つんじゃないかな。そこで男の生き様、そして「俺はプロレスでメシを食っていくんだ!」と言った小路さんの覚悟が見えてくるはずですよ。

――本当にこの3WAYマッチは予測できない闘いになりそうですね

TAJIRI 僕が今まで見てきた田中将斗という男の一面の中で一番ゾクゾクしたのは、彼が凶器アイテムを手にしたときにそれを躊躇(ちゅうちょ)なくフルスイングしていく恐ろしさなんですよ。普段はあんなにおとなしくて優しい男が、あそこまで人が変わってしまうその変わり様が、見ていてもすごく怖いんですよね。そんな一面も持っている田中選手を僕も見たかったし、ファンの方々にもぜひ見てもらいたいんですよね。それと、Tシャツとジーパン姿のいわゆるストリートファイトスタイルの田中将斗っていうのが、これがまたかっこいいんですよ(笑)。あとは、スクランブル・バンクハウス・デスマッチは、有刺鉄線バットをリングの中央に置いて、入場してきた選手がカウントダウンの後にダッシュをして奪いに行くんですよ。あのカウントダウンのときの興奮っていうのも、最近のファンにあまり知られていないと思うので、ぜひ感じ取って欲しいんですよね。そして、闘いの部分に話を移すと、やっぱりこの闘いのキーマンは、僕は小路さんだと思うんですよ。小路さんがもともと持っていたポテンシャルがここで爆発するんじゃないかなっていう期待が、僕の中ではすごくありますね。

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