初代タイガーと天龍が一騎打ち リアルジャパン見どころ
初代タイガー(左)と天龍がシングルマッチで初の一騎打ち 【リアルジャパンプロレス】
■初代タイガー絶好調で、猛爆予感の天龍戦に!?
メーンは初代タイガーと天龍が一騎打ち!
これは大変なことになった。というのは、お互いにこれまでとは違った種類の意気込みが見えるからだ。
以前、天龍と試合をした初代タイガーは、そのチョップの凄まじさに閉口した。
「正直言って、あのチョップは禁止技にしようかなと思ったくらい。普通だったら胸が赤くなるのに黄色くなってしまった。チョップでギブアップしようと思ったのは初めて」というくらいだった。
初代タイガーも辟易する天龍のチョップは、今回、一段と凄まじさを帯びてくるはずだ。というのも、今年の天龍は折原という暴れん坊だが愛すべき弟子のプロデュースで、ミスタープロレスの猛々しい姿を再びよみがえらせたいと決意しているからである。
しかし、そんな天龍となぜ初代タイガーはやらねばならないのか?
そこが、この試合の核だ。
天龍は自分自身を奮い立たせる意味でも初代タイガーと闘おうと思ったに違いない。しかし、初代タイガーもまた常日頃から「ストロングプロレスの復興」を成したいと思っていて、チョップは受けたくないが、そんな天龍こそ、今回の自分の相手にふさわしいと思ったのだ。
そして、そういう選択こそがストロングプロレスの思想なのだということをファンに見せつけたかったのである。
このほど初代タイガーは「佐山原理 新生武士道 真陰」を出版した。これまで現代にあう新しい武士道の構築にエネルギーを注いできたが、ようやくひと段落した。
だから今回の天龍戦に向けてのトレーニングも集中できている。
初代タイガーは言う。
「プロレス界の追い風になるような試合をしたい。いまのファンだけではなく、プロレスを離れてしまったファンにも夢を与えられればいい。相当厳しい試合になるでしょう。ストロングスタイルの本道を貫いて天龍さんとぶつかりたい」
今年還暦を迎えた天龍。しかし目的を持った時の天龍は、普段以上に凄まじい迫力となるのはよく知られている。
「還暦? 3度目の成人式と言ってくれ。ソバット対策に力を注ぐのみだ。いまの自分が出来る旬の天龍源一郎を発揮する」(天龍)
旬の天龍源一郎か!
天龍はいつもファンの気持ちをくすぐるようなうまい言い方をする。しかし、初代タイガーも新生武士道を完成させて、集中したトレーニングをした。これも旬!
ぜひともいまのファンに年齢の壁を越えたストロングプロレスの真髄を見せてやってくれ!
プロレスの醍醐味がすべて備わっている豪華なセミファイナル!
おなじみとなった長州(右)と藤波(左)のタッグマッチ。プロレスの魅力が詰まった豪華な対戦だ 【t.SAKUMA】
藤波と長州は80年代の荒々しい激突とは違って、すっかり円熟味がでてきている。プロレスファンやレスラーが是非とも見なければならないのは、プロレスの戦いの間、リズムだ。
プロレス記者も若い世代が多くなった。ぜひともこのタッグを見て、プロレスの間を勉強してもらえばいいと思う。素晴らしいプロレスの教材だ。もっとも闘う側にとってみれば教材にされては嫌な気分だろうが…。
激しさ、静かな攻防、そしてウルティモとサスケのルチャの妙技。プロレスのすべてが備わっているセミファイナルとなった。
アレク大塚のベルトに“好敵手”佐藤光留が名乗り!
アレク大塚(右)のベルトに佐藤(左)が挑戦 【リアルジャパンプロレス】
しかし、肝心のリアルダークが仲間割れ。急きょ、折原昌夫とタイガー・シャークが対決することになってしまった。意気込みが強ければ強いほど落胆の度も深くなるはずだ。だから私は「大塚はなんで佐藤なんだと思っているだろうな」と勝手に思ったのである。
ところが、なんと浅薄な想像だったのか。大塚は「テンション? 上がってますよ。僕の試合はどうなるのか、と思っていた矢先に佐藤選手が“ベルトが欲しい。取ってやる”と手を上げてきた。やりがいがありますよ。しかも今年はデビュー15年目。ベルトを巻いて記念の興行もやりたいので」と言うのだ。
リアルジャパンのリングに上がって、このベルトを獲得した時、「実はベルトを巻いたのは初めてなんです」と初々しい顔をしたものだった。そして「これから自分がこのベルトの価値を高めてみせます」と言ったものだ。
しかし、ベルトを高めるには強い相手、憎い相手が必要だ。大塚自身のテンションが上がらないと試合に迫力がでないからである。
かつて初代タイガーマスクがデビューした時、相手がダイナマイト・キッドという素晴らしいレスラーだったから、実力を十分に発揮。あの一試合で大スターの階段を昇ることになった。いまでも初代タイガーは「いまの自分があるのはキッドや小林邦昭さんなどの好敵手がいたおかげです」と言うくらいなのだ。
ベルトを高めるには好敵手が必要。
その意味で名乗りを上げてきた佐藤光留に対して興味があるのは当然だろう。
佐藤は自分自身がベルトを獲得したいという欲望のほかにパンクラスミッション(パンクラスのプロレス部門)を意識して挑戦したと思っていい。佐藤の後ろには怖い師匠の鈴木みのるがいる。鈴木の顔に泥を塗ることは出来ないだけに佐藤の意気込みがハンパではないだろうと大塚は察しているのだ。
佐藤が言う。
「大塚選手はキャリアもあって百戦錬磨。だから自分のようなタイプを攻めるのは簡単だと思う。体格的にも劣るので、その差を大会までに埋めたい。埋めるには少しでも研ぎ澄ました練習を積むしかない」
大塚を負かすには、気迫とともに細かなところまで目を配った試合をしなければならん! と覚悟しているのだ。
私はバトラーツ時代から総合格闘技もふくめて大塚の試合を見ているが、大塚というレスラーは相手が強ければ迫力のある、強い試合をするが、相手が弱ければ、その弱さにあわせてしまうタイプだ。
佐藤は細かなところで大きな強さを発揮してくることだろう。大塚vs佐藤。めっぽう強い試合が見られることを期待したい。