日本選手団、10個のメダルを目指して バンクーバーパラリンピックが開幕

スポーツナビ

会場の床にはカナダの国旗であるカエデを形取り、子供たちがその中でダンスを繰り広げた 【ディナモスポーツ/望月公雄】

 12日(日本時間13日)、バンクーバー冬季パラリンピックの開会式が「BCプレース」で行われ、10日間に渡る戦いの火ぶたが切られた。

 この日のカナダ・バンクーバーは雨が降るあいにくの天候。特に、この期間は季節の変わり目で、天候が定まらないため、期間中の大半が雨と予報されている。しかし、パラリンピックの開幕をバンクーバーの町が待ちわびていたかのように、昼過ぎには雨が止んだ。開会式開始1時間前――。6万600人を収容する屋内競技場「BCプレース」は、ほぼ満員になり、客席を埋めた人々が歓声を上げる。次第にボルテージが上がった客席ではウェーブが起こり、電灯の付くポンポンを振る。開始10秒前にはカウントダウンが行われ、「One Inspires Many」(一人がみんなを動かす)をテーマにした開会式がスタートした。

日本選手団は24番目に登場

冬季パラリンピックがバンクーバーで開幕。24番目に登場した日本選手団は、アイススレッジホッケーの遠藤を旗手とし、選手たちは笑顔で登場した 【ディナモスポーツ/望月公雄】

 アリーナの中央にはもみじをつかさどったアトラクションが用意されている。カナダ国歌が斉唱されいよいよ開会式がスタートした。五輪のステージでもそうだったように、パラリンピックのステージでも、光の演出でアリーナが華やかに彩られる。そんななか、愛くるしいマスコットのスーミが宙を舞う演出で、会場のボルテージがさらに上がった。

 選手入場では、各国がアルファベット順に登場。移民の多いカナダならではなのだろうか。客席にはカナダ以外の国旗を持った人々の姿も見られ、選手が入ってくるたびに大きな声援が送られた。

下半身が不自由なダンサーのルカ・パトウェルが、杖を使ってブレークダンスを披露。観客はその巧みな技に歓声を上げた 【ディナモスポーツ/望月公雄】

 そして24番目に、日本選手団がおそろいの白のウエアに身を包み登場。旗手を務めたアイススレッジホッケーの遠藤隆行(川越市役所)を筆頭に、アップテンポな音楽に乗りながら、選手たちが笑顔で声援にこたえていた。
 さらに、遠藤のチームメートである伊藤仙孝は、坊主頭の後ろに「金」の文字を刈り込んだヘアースタイルで登場。それが会場のスクリーンに大きく映し出されると、会場が再び沸いた。

 選手入場が終わると、松葉杖のままステージ中央で踊るダンサーのパフォーマンス。その後にミカエル・ジャン総督の開会宣言が行われると、いよいよ聖火が再びともる瞬間が訪れた。

「義足のマラソンランナー」の遺志

聖火台に火が点されて、華々しく冬季パラリンピックがスタートした 【ディナモスポーツ/望月公雄】

 開会式の前日。市内では聖火リレーが行われ、前市長で車いす生活を送っているサム・サリバン氏も参加していた。開会式当日の聖火ランナーに注目が集まったが、それは「カナダの英雄」の両親だった。

 英雄の名は、テリー・フォックス。もともとバスケットプレーヤーとして大学生活を送っていたが、骨肉腫で右足を切断。その後、がん資金を募るために、義足をつけて北アメリカ大陸などを横断するマラソンを敢行し「義足のマラソンランナー」と多くの人々に勇気を与えた。
 しかし、途中でがんが肺へ転移したことが発覚し、翌年22歳の若さで逝去。人々は彼の死後、その遺志を受け継いで毎年、がん研究資金を募る「テリー・フォックス・ラン」というイベントを開催している。そのフォックスの両親が会場に登場すると、場内は今までにない大歓声に包まれた。無事、バンクーバーの地に再び聖火がともり、盛り上がりは最高潮に達する。これから始まる競技への期待が膨らみ、開会式は幕を閉じた。

前回を上回るメダル数「10」が目標

旗手の遠藤隆行らを先頭に日本選手団が笑顔で登場 【ディナモスポーツ/望月公雄】

 今大会の日本選手団は、米国、カナダに続いて3番目に多い42人(男子34人、女子8人)が参加する。前回のトリノ大会では、39カ国中8位となる、金2、銀5、銅2の計9個のメダルを獲得している日本。しかし、今大会は冬季パラリンピック史上最多となる44カ国、505人(男子383人、女子122人)の選手が出場予定で、前回よりもメダル獲得は、困難になるに違いない。
 それでも、日本選手団は前回より1つ多いメダル獲得10個を目標に掲げている。今大会は、アルペンスキーのスーパーコンビ(スーパー大回転と回転を1本ずつ滑りタイムを競う)が正式種目として新たに加わり、さらに車いすカーリングが初出場するなど、出場種目数が増えたこともあって、さらなる高みを目指す。

 大会2日目の13日(日本時間14日)には、アルペンスキーの滑降や、バイアスロン追い抜き、アイススレッジホッケーと車いすカーリングの予選が行われる。中でも男子滑降座位の狩野亮(マルハン)に最初のメダル獲得が期待されている。
 日本にとって華々しい幕開きとなるか、いよいよ明日からの競技に期待したい。
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント