本番でしか本気にならないイタリアの現状=したたかさは南アフリカでも健在か

宮崎隆司

よく言えば堅実、悪く言えば退屈なサッカー

カメルーンで新戦力のボヌッチ(右)はエトーを完封 【Getty Images】

 良きにつけ悪しきにつけ、相変わらずの“らしい”サッカーをイタリア代表はやっている。直近の3試合を顧みても、2009年11月14日の対オランダを0−0、続く11月18日の対スウェーデンを1−0、そして10年3月3日の対カメルーンを0−0。わずか1勝。しかも、その勝ち方はお決まりの「1−0」というシブい内容であり、さらに言えば、その1点はFWやMFではなく、DFであるキエッリーニが決めたものだ。

 そしてほかの2戦は、いずれも負けないための策の精度を上げる場として、守備の連係確認をする作業が粛々と進められた格好である。とりわけ前述の対オランダは、まるで最初から0−0を狙ったかのような戦い方だった。
 よく言えば堅実、しかし悪く言えば退屈――。それをどう判断するかは見る側ひとり一人に委ねられるところだが、そしてもちろん、この実にイタリア的なサッカーに対して、国内でも不満の声は常に少なからずくすぶってはいる。しかし、例えばセリエAをはじめセリエBやCといった下部リーグ、あるいはユースの現場で生きる監督やコーチたちの声に耳を傾ければ、現状、マルチェッロ・リッピが見せるサッカーに対する否定的な声は、圧倒的に少ない。

 その3試合におけるイタリア代表の布陣は、以下の通りだ。

<オランダ戦(4−2−1−3)>
GK:ブッフォン
DF:グロッソ(クリーシト/後半35分)、キエッリーニ、カンナバーロ、ザンブロッタ
MF:カンドレーバ(モントリーボ/後半31分)、ピルロ、パロンボ(ビオンディーニ/後半26分)
FW:パッラディーノ(ロッシ/後半11分)、ジラルディーノ(パッツィーニ/後半31分)、カモラネージ(マルキオンニ/後半42分)
控え:マルケッティ、デ・サンクティス、カッサーニ、レグロッターリエ、ボッケッティ、マッジョ、ガッロッパ、ディ・ナターレ

<スウェーデン戦(4−3−3)>
GK:マルケッティ
DF:マッジョ(カッサーニ/後半1分)、レグロッターリエ、キエッリーニ、クリーシト(ボッケッティ/後半11分)
MF:カンドレーバ(ロッシ/後半1分)、モントリーボ(パロンボ/後半19分)、ビオンディーニ(ガッロッパ/後半1分)
FW:マルキオンニ(カモラネージ/後半33分)、パッツィーニ、ディ・ナターレ
控え:デ・サンクティス、グロッソ、ジラルディーノ、パッラディーノ

<カメルーン戦(3−4−1−2)>
GK:マルケッティ
DF:ボヌッチ、カンナバーロ(カッサーニ/後半37分)、キエッリーニ
MF:マッジョ、デ・ロッシ(ガットゥーゾ/後半1分)、ピルロ(モントリーボ/後半1分)、クリーシト(マルキージオ/後半1分)、コッス
FW:ボッリエッロ(パッツィーニ/後半1分)、ディ・ナターレ(クアリャレッラ/後半16分)
控え:デ・サンクティス、シリグ、ボネーラ、レグロッターリエ、ペペ、パロンボ

リッピの求める変化への対応

 例えば、先のカメルーン戦で、その前半にリッピが敷いた3−4−1−2(3−5−2)にしても、それを守備的にすぎるとして批判する声は皆無に近い。前述の現場に生きる者たちが一様に語るのは、「ワールドカップ(W杯)に限らず、どんな試合であれ、必ず、守らなければならない局面がある。そうした状況に備えて監督が試験的な策を事前に試みるのは当たり前のこと」となる。
 もちろん、それがW杯を3カ月後に控えた代表となれば、合流できる時間に限りがある以上、そのわずかな時間を重点的に守備組織の確認に費やすのは、それこそ鉄則に沿った形。リッピ自身の言葉を借りるまでもなく、対カメルーンの3−5−2にしても、本大会で起こり得る状況をイメージした予行演習ということになる。

 試合の流れに応じてシステムを変えることは、今日のサッカーでは半ば当たり前のことであり、そしてほかならぬリッピが、その目まぐるしく形を変えるという手法を自らの特徴とする監督だ。
 最終スコアは0−0、しかも見せ場は全くなしという低調な結果に終わったカメルーン戦にしても、監督が求める変化に選手たちがどう対応できるか、これを見極めるための1戦ととらえられている。3−5−2から5−3−2、または5−4−1へ。局面に応じてこうした変化が滑らかにできているか否か、それを確認する上で、リッピ自身が語るように、先のカメルーン戦は「非常に有意義な試合だった」とする見方が大勢を占める。もっとも、メディアの側は、決定力の低さを厳しく批判する姿勢を崩してはいないのだが。

 いずれにしても、なおもカメルーン戦に関して言えば、センターバックとして起用されたレオナルド・ボヌッチ(バーリ)の出来は、地味ながらも、実に大きな収穫だったと目されている。今日のイタリアはトップレベルで慢性的なセンターバック不足に悩んでいる。このため、リッピ自らがミラノに赴き、ベテランDFのアレッサンドロ・ネスタに代表復帰を要請した。だが、これをネスタが「コンディションの維持に自信がない」として断わり、交渉は不調に終わっている。
 よって、ファビオ・カンナバーロとジョルジョ・キエッリーニ(共にユベントス)に続くセンターバックとして、若いボヌッチが抜てきされたわけだが、この期待に22歳のDFは見事に応えてみせた。今季セリエAデビューを果たしたばかりのDFながら、その安定感は既に先輩キエッリーニを凌ぐとの見方もある。あのサミュエル・エトーを完封し、結果として、相手もまた低調なプレーに終始していたとはいえ、イタリアはカメルーンに枠内へのシュートを1本も打たせていないのだ。

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著者プロフィール

1969年熊本県生まれ。98年よりフィレンツェ在住。イタリア国立ジャーナリスト協会会員。2004年の引退までロベルト・バッジョ出場全試合を取材し、現在、新たな“至宝”を探す旅を継続中。『Number』『Sportiva』『週刊サッカーマガジン』などに執筆。近著に『世界が指摘する岡田ジャパンの決定的戦術ミス〜イタリア人監督5人が日本代表の7試合を徹底分析〜』(コスミック出版)

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