本番でしか本気にならないイタリアの現状=したたかさは南アフリカでも健在か
お寒い攻撃と主力の高齢化
イタリアはW杯でも伝統的なしたたかさを発揮するか 【Photo:アフロ】
中盤も問題は少なくない。フィルターとしての機能性は前述の守備陣と同様に安定しているのだが、シーズン終盤に入った今、疲労の蓄積からキレを失っているピルロの姿が象徴するように、全体としての印象も機能しているとは言い難い。前線と中盤をあわせて見ても、若手の“台頭”といえる存在は唯一、守備的MFのクラウディオ・マルキージオ(ユベントス)に限られてしまう。
カメルーン戦の後半、ピルロがピッチから退くと、代わりに入ったリッカルド・モントリーボ(フィオレンティーナ)が懸命にボールをさばくも、流れるようなゲームの構築と言えるシーンはほとんどなかった。初招集となった実力者アンドレア・コッス(カリアリ)も、一定レベルのプレーは見せた。とはいえ、本来トレクアルティスタ(トップ下)であるコッスは、起用された右MFとしては真価を発揮できず、マウロ・カモラネージに次ぐ存在とは言い難い。ちなみに、そのカメルーン戦の後半では、イタリアは布陣を4−4−2に戻している。
そして敢えて挙げるとすれば、3−5−2では「5」の右を、4−4−2では右のサイドバックを務めたクリスティアン・マッジョ(ナポリ)の柔軟性と高いプレーの質が、数少ない中のポジティブな材料だと言えるだろう。
そして現実には、依然として小さくはない問題が横たわっている、というところか。前線は32歳のディ・ナターレ、中盤は30歳のピルロ、そして最終ラインは36歳になるカンナバーロ。チームの骨格を作る上で、こうしたベテランになおも頼らざるを得ないところに、前回大会覇者イタリアの苦しい台所事情が映し出されている。
だからこそ、あくまでもリッピは「チームの結束こそが最も重要」と繰り返し、「技術的に見れば、前回大会のイタリアは決して優勝を狙えるようなチームではなかった。しかし、あの偉業を、われわれは半ば組織力だけで成し遂げてみせた」と語る。そしてこうも明言している。
「今回のイタリアも、武器となるのは唯一、強固な結束しかない。もちろん、その結束は、言うまでもなく堅い守りを指している」
本番でしか本気にならないイタリア
あのカメルーン戦の3日後には、セリエA(第27節)で「フィオレンティーナ対ユベントス」と「ローマ対ミラン」を控えていた。すべてのチームにとって、来季のチャンピオンズリーグ出場権(セリエA4位以内)を獲得するために、極めて重要な試合である。その直前の親善試合で、主力の大半を欠いていたことは紛れもない事実だ。
そしてさらに言えば、カメルーン戦に全力を尽くした選手は事実上、代表初招集に燃えたコッスは別としても、ほぼ1人もいなかったというのが実態である。
あくまでも本番でしか本気にならないイタリアは、やはりW杯ではそれなりの結果を残してみせるのだろうか。いずれにせよ、それこそ“台頭”著しい19歳のFWマリオ・バロテッリ(インテル)は、国内リーグでけた違いのプレーを随所に魅せているものの、あのアントニオ・カッサーノ(サンプドリア)をも凌ぐという強烈なキャラゆえに、世論の強い支持を得ながらも6月の南アフリカでその姿を見ることはないだろう。
以下は、現時点で推察する、W杯に臨むイタリア代表の基本布陣である。
<W杯メンバー予想(4−3−3)>
GK:ブッフォン
DF:ザンブロッタ、カンナバーロ、キエッリーニ、グロッソ
MF:デ・ロッシ、ピルロ、ガットゥーゾ
FW:カモラネージ、ジラルディーノ、ディ・ナターレ
控え:マルケッティ、デ・サンクティス、ボネーラ、ボヌッチ、ネスタ(レグロッターリエ)、マッジョ、クリーシト、モントリーボ(パロンボ)、マルキージオ、トッティ、パッツィーニ、トーニ
<了>