明暗を分けたミランとユベントス=新米監督の下で悪戦苦闘中

宮崎隆司

ミラン好調の起爆剤はアタランタ戦の失態

ふがいないチームを一喝したネスタ。これを機に、ミランは徐々に調子を上げ2位につけている 【Getty Images】

 今季の開幕戦(シエナ戦)を辛うじてモノにするも、続く第2節のダービー(インテル戦)で0−4の大敗を喫する。以降も勝ったり負けたりを繰り返し、波に乗れないままミランは第7節を迎えていた。
 しかし、ほかならぬこの第7節が現在に続く好調のきっかけとなっている。相手はアタランタ。イタリア北部ベルガモに拠を置く地方クラブであり、彼らの最大の目標はセリエA残留である。片やミランは、今さら言うまでもなく、国内はおろか欧州屈指のビッグクラブであり、その名は広く世界に知られている。クラブの規模は次元が違う。であればこそ、ミランには負けてはならないという責務がある。シーズン序盤のつまずきから脱し、勢いを取り戻すためにも、絶対に落とせない下位クラブとの一戦であった。

 だが、現実には、この試合におけるミランのプレーには目を覆うよりほかなかった。後半の残り6分にロナウジーニョのボレーが決まり、何とか1−1の引き分けに持ち込んだが、それが精いっぱい。攻から守、守から攻の切り替えに必要な連係は乏しく、むしろそれは杜撰(ずさん)の一言に尽きた。シーズン開幕前から新監督レオナルドが打ち出していた4−3−3はまったく機能せず、守らない両サイドのFW(ロナウジーニョとパト)の背後で、守備的MFたちは過酷な労働を強いられていた。そうなれば、当然その無理は最終ラインにも影響し、するともう組織戦術うんぬんというレベルの話ではなくなってしまう。ファンの間からも「これじゃあ勝てねーよ」との声が漏れていたほどだ。

 もっとも、このぶざまというべきアタランタ戦での引き分けが、冒頭で述べた通り、その後の復調へと続く起爆剤になっていた。要因は、レオナルド監督のさい配ではない。別段これといった新たな策を監督が授けたわけでもなく、救世主的な選手が突如として出現したわけでもない。
 流れを変えたのは、アレッサンドロ・ネスタ。昨季まで故障に泣かされ続けていたベテランセンターバックは今季からスタメンに復帰し、超攻撃的であろうとする新監督の方針(システム)を支え続けていたのだが、アタランタ戦でさらした自軍の醜態(しゅうたい)に、あの温厚なはずのネスタが“キレた”のである。

ネスタがヒーローインタビューで内部批判

 ロナウジーニョの同点ゴールをアシストし、マン・オブ・ザ・マッチに選ばれたネスタは、試合後のヒーローインタビュー、無論100パーセント公の場で、こうぶちまけたのだ。「なかなか勝てない現状は不運によるところが大きいのでは?」との問いに対し、「運? そんな問題じゃない。もっと普通にサッカーをしなきゃ、それこそ勝てる試合さえ勝てない。当たり前のことを当たり前にやるべきだ!」と。
 さらに、こうも付け加えている。
「ビルドアップの段階であまりにも混乱し過ぎている。だから簡単にボールを奪われ、でもそれを守る局面で各セクション(FW、MF、DF)の距離が開き過ぎている」

 つまり、勝てない理由を主審のジャッジのせいにするとかシュートがクロスバーをたたいたとか、そして『あれが入っていれば勝っていたはずだ』といった、運の有無を嘆く次元にも至ってないということなのだろう。
 そうではなく、プロとして当たり前の仕事をしていないから勝てないのだ、と。すなわち、サッカーの基本が現状ではまったくできていない。「もっと真面目にやれ!」と、吐き捨てたわけだ。
 セリエAのチームで、しかもミランほどのクラブで、ここまで直接的な内部批判を公にしたケースは極めてまれである。しかも、それをあの温厚で知られるネスタが、一人完ぺきな守備を見せ続けていたDFが言い放ったことで、ミランにとってはこれ以上ない薬になった。

 第7節までの成績は2勝3分け2敗。それがネスタの一喝の後、第8節から第16節では7勝1分け1敗。1試合あたりの勝ち点は平均1.28から2.44に跳ね上がっている。第17節終了時点で国内リーグの順位は、首位インテルに8ポイント差の2位(※第17節のフィオレンティーナ戦は悪天候で中止となったため、ミランの消化試合は全16にとどまる)。
 チャンピオンズリーグ(CL)でもギリギリで決勝トーナメント進出を果たし、何とか面目を保っている。ただ、前述の攻撃的システムの中で、それが4−3−3から4−2−4へと変化した今、「2」の負担は着実に蓄積されている。
 退団濃厚という状況から一転し残留を決めたガットゥーゾのけがからの復帰が待たれる。あとは、いつだって陽気にポジティブシンキングのブラジル人監督レオナルドが、どこまでチームを盛り上げ、その結束を保っていけるかに懸かっていると言えるだろう。これだけの選手がそろっている以上、もはやシステムうんぬんが問題ではないとの事実を、あの怒りに満ちたネスタのコメントが雄弁に物語っている。

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著者プロフィール

1969年熊本県生まれ。98年よりフィレンツェ在住。イタリア国立ジャーナリスト協会会員。2004年の引退までロベルト・バッジョ出場全試合を取材し、現在、新たな“至宝”を探す旅を継続中。『Number』『Sportiva』『週刊サッカーマガジン』などに執筆。近著に『世界が指摘する岡田ジャパンの決定的戦術ミス〜イタリア人監督5人が日本代表の7試合を徹底分析〜』(コスミック出版)

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