サンプドリア躍進の秘密=日本代表にも通じるチームの指針

宮崎隆司

予想を超える序盤戦の快進撃

インテルに勝つなど、第8節を終えて2位と大健闘のサンプドリア 【Getty Images】

 セリエA2009−10シーズン、サンプドリアは開幕戦のカターニア戦(アウエー)を終了間際のゴールでしぶとくモノにし、その勢いを駆って第4節まで連勝した。5節のフィオレンティーナ戦(アウエー)で0−2の完敗を喫し、「ここで失速か?」と強く予感させるも、続く第6節で優勝候補の大本命、インテルを撃破。現在、第8節を終えて5勝2分け1敗。得点13、失点7。勝ち点17で堂々、インテルに次ぐ単独2位につけている。

 開幕前、前線2枚「カッサーノ&パッツィーニ」のポテンシャルをして、国内では“それなり”の成績が予想されてはいた。だが、その選手層の薄さゆえに「ギリギリUEFA(現ヨーロッパリーグ)圏内に入れれば御の字」といった前評判にとどまっていた。それが、蓋を開けてみれば前述の成績、序盤戦はまさに快進撃、である。

 もちろん、長いシーズンを戦う上で、くだんの“層の薄さ”がレギュラー陣の疲労を呼び、結果として想定通りの中位あたりに落ち着く可能性は高い。とはいえ、あのカッサーノ以外に1人としてスター級を擁していないというのに、なぜ彼らはここまでの開幕ダッシュを切ることができたのか? あのインテルさえも倒すという、ほぼ奇跡というほどの結果を、いったい何を理由に手にできたのか?
 その秘密を探ることにしたい。
 恐らく、そこから見えてくる結果は、かなり唐突だが、現日本代表のサッカーを語る上でも、少なからず参考となるのではないか、と。

鍵を握るポジショニングの精度

 第1節のカターニア戦。試合後の会見で、サンプドリア監督のデルネーリは次のように述べていた。
「何ひとつ難しいことは選手に求めていない。すべてをセオリー通りに、4−4−2の基本に即してプレーする。わたしが課しているのはこれだけなんだよ」
 デルネーリの言う基本とは――。例えばオフ・ザ・ボールの局面、敵のボール保持者にサンプドリアの選手1人がマークに付いた瞬間、ほかの選手すべてが一斉に各自がしかるべき位置に移動を始めることにある。その移動、つまり選手個々のポジショニングの精度にこそ、現サンプドリアの強さの秘密がある。

 通常、いわゆる中盤での「プレス」とは「敵の選手に対して寄せる」ことを指し、敵のパスがつながるたびに、守る側の選手が次々にボール保持者に対してマークにいく。これが基本だが、デルネーリの言うそれは多少異なるのだ。
 監督いわく、「人の走力はボールのスピードに劣る。よって、敵の選手AからBへとボールが渡るとしても、そのBに人が寄せるころには既にボールはBの足元に達している」。要するに、「そんなことをやっていても疲れるだけ」であると。

 中盤で相手がポゼッションに入った局面。最初にボールを持つ相手選手Aに対するプレスは、通常通り「寄せる」ことで行う一方、そのボール保持者がパスを通そうとする味方Bに対しては、そのBに最も近い位置にいるサンプドリアの選手はプレスを掛けない。狙うのは、あくまでもAとBを結ぶ線上。つまりパスコースを消すこと。人にプレスを掛けるのではなく、スペースにプレスを掛ける。先ほど「各自がしかるべき位置に移動を始める」と書いたが、この移動が、人(相手選手)ではなく空間に向かっているということだ。

 従って、ひとつ一つの「プレス」に要する距離は短くて済む。おのずと無駄な体力の浪費が減るということだ。そうすることで、ボールを奪う、というよりインターセプトした後、鋭く前へ突き進むことができる。サンプドリアの守から攻めへの切り替えは、すべてそれが基本である。そして、前線に運ばれたボールをカッサーノ&パッツィーニがフィニッシュに持っていく。もちろん、形が4−4−2である以上、そこに両サイドの攻撃参加が頻繁に加わることは言うまでもない。
 何ら目新しい発想ではないにせよ、前述の守備システムの向上を徹底させ、それを現実に高いレベルに押し上げた指揮官の手腕はさすがだ。

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著者プロフィール

1969年熊本県生まれ。98年よりフィレンツェ在住。イタリア国立ジャーナリスト協会会員。2004年の引退までロベルト・バッジョ出場全試合を取材し、現在、新たな“至宝”を探す旅を継続中。『Number』『Sportiva』『週刊サッカーマガジン』などに執筆。近著に『世界が指摘する岡田ジャパンの決定的戦術ミス〜イタリア人監督5人が日本代表の7試合を徹底分析〜』(コスミック出版)

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