サビオラとアイマール、8年の歳月を超えて=“双生児”と呼ばれる2人が再び共鳴するとき
アルゼンチンでの出会い ポルトガルでの再会
レアル・マドリーからベンフィカに移籍したサビオラ。新天地ポルトガルでの復活を誓う 【Photo:アフロ】
その2人とはハビエル・サビオラとパブロ・アイマールである。サビオラとアイマールの“へその緒でつながった双生児のような”親密な関係が始まったのは、12年以上前に母国のリバープレートで一緒にプレーをしていた時までさかのぼる。その後、「ヨーロッパの舞台でもう一度一緒にプレーしたい」というアルゼンチンの至宝たちの夢が実現するには8年の時を待たなければならず、今夏、サビオラとアイマールの夢がようやくかなうこととなった。これまでプレーしてきたスペインの西隣の小さな国、ポルトガルで。
2人の元アルゼンチン代表選手の間にどれだけの親密度があるかを知らなかったポルトガルの人たちも、ベンフィカのトレーニングウエアを身にまとったサビオラとアイマールの練習風景を見れば十分に認識することができる。そこではお互いをよく知る恋人同士のような2人の存在を確認できるからである。アイマールがボールを送れば、サビオラはそのボールがどこに到達するか分かっているし、逆にサビオラがボールを出せば、アイマールもしっかりとボールの出しどころを理解している。
相手を凝視することは必要ではない。お互いに声を出して確認する必要もない。ただ相手の意図を少しだけ予測して考えるだけで、いつもボールは2人の思い通りのところに収まるのである。ベンフィキスタ(ベンフィカサポーター)はここ10試合のプレシーズンマッチで、サビオラとアイマールの前にボールがあるときにスペクタクルなシーンが展開されることを分かっている。
新シーズンの開幕前だというのに「YouTube」(動画共有サイト)にはサポーターから投稿された2人のコンビネーションプレーの動画が多数アップされている。そのあまたある動画では決まって「アイマールがサビオラへ出した! サビオラからアイマールへ! またアイマールからサビオラへ……」と同じフレーズをアナウンサーが興奮気味に連呼しているのである。
サビオラが移籍を決めた理由の半分はアイマール
特に、ちょうど1年前のリプレーを見ているかのようにサビオラ獲得のためにスペインに飛んだルイ・コスタは、「今回は事前に手紙を書く必要もなかったし(※昨年アイマール獲得時には『僕の背番号10の後継者になってほしい』と直筆の手紙を送っている)、リスボンにサビオラを連れてくるのは簡単だったよ。ベンフィカには彼の無二の親友であるアイマールという切り札があったからね」と語っている。
実際、サビオラもベンフィカと契約した理由の50%はアイマールにあることを認めている。リスボンへ向けて出発する直前、マドリーでのインタビューに応じてくれたサビオラは笑顔でこう語った。
「僕のこの移籍に関しては、パブロがベンフィカに在籍していることが最も重要で、当たり前の条件だったんだ。もう一度彼とプレーしたいと熱望していたし、彼は気心の知れた一番の親友だからね。僕とパブロがリバープレートでプレーしていた時は、僕はいつもパブロのお母さんの家で食事をしていたんだ。彼女は僕にとって素晴らしい料理人だったよ」
さらに、ベンフィカとFCポルトの争奪戦の末、リバープレートからポルトに加入することになったコロンビア代表FWのラダメル・ファルカオも次のように語っている。
「僕が16歳でリーベル(リバープレートの通称)のユースチームに加入したころ、サビオラとアイマールはクラブからもファンからも既に英雄扱いだった。ピッチの中でも外でも双子のように仲が良かった。もちろん僕も彼らを尊敬していたし、目標にしていたよ。だから、リーベル出身の偉大なる“兄貴たち”と同じ舞台でプレーできるなんて夢のようだね。だから、ヨーロッパで成功した彼らがいるポルトガルリーグでプレーすることは、僕にとってはとても誇らしいし、大切なことなんだ」