話題に事欠かなかったウィンブルドン2009=総括

秋山英宏/WOWOW

今年も話題が豊富だったウィンブルドン。男子はフェデラーが、女子はセリーナ・ウィリアムズが優勝を果たした 【Getty Images】

 ラファエル・ナダル(スペイン)がひざの故障で大会開幕直前に欠場を表明。大会は男子シングルスの第1シードを欠いての開幕となった。しかしそれでも、話題は豊富だった。
 全仏オープンでピート・サンプラス(米国)と並ぶ4大大会通算14勝を挙げたロジャー・フェデラー(スイス=第2シード)が、単独史上1位となる15勝目を挙げることができるか。第3シードのアンディ・マレー(英国)が、1936年のフレッド・ペリー以来、途絶えている地元英国選手の優勝を成し遂げるか。女子では、ビーナス・ウィリアムズ(米国=第3シード)の3連覇なるか。あるいは妹のセリーナ・ウィリアムズ(同=第2シード)が姉の偉業を阻止するか。大会の見どころは十分にあった。さらに、今大会から新設された可動式の屋根が、大会にどんな影響を与えるかというのも気になるところだった。

ロディック善戦するも、王者フェデラーは倒せず

 フェデラーもマレーも、順調に勝ち上がった。フェデラーにとって、5度も優勝しているウィンブルドンは自分の庭のようなものだろう。全仏決勝の再現となったロビン・ソデルリング(スウェーデン)との4回戦も3セットで片付けた。大記録の懸かる大会だけに重圧も心配されたが、「逆にそれが原動力にもなっている」と話すなど、余裕十分の勝ち上がりだった。
 一方のマレーにも、国民の期待が重荷になるのではないかと思われた。過去に期待を背負ってもがくティム・ヘンマン(英国)の姿を見てきただけに、余計にその心配があったのだ。「気にしなければ済むこと。新聞は一切読まないよ」と話していたマレー。4回戦でのスタニスラス・ワウリンカ(スイス)とのフルセットの戦いを制したことで、なんとか決勝までたどりつけるのではないか、と思われた。
 しかし、第6シードのアンディ・ロディック(米国)が英国民の期待を打ち砕いた。その確信を込めたネットプレーが、準決勝でマレーの野望を砕き、英国民に天を仰がせたのだ。

 決勝の顔合わせはフェデラー対ロディック。2003、04年のウィンブルドン決勝の再現だった。両者のこれまでの対戦成績はフェデラーの18勝2敗。フェデラーにとって、現在4連敗中のマレーとの対戦が回避できたのは幸運と思われた。しかし、決勝の内容は過去の対戦成績を映し出してはいなかった。ロディックのサーブがさえ、フェデラーのリターンは鋭さを欠いた。フェデラーも、ビッグサーバーの相手のお株を奪うように、50本ものサービスエースを打ち込んだ。試合は4時間18分の大熱戦となった。両選手の集中力が素晴らしく、ファンはその緊迫感に酔いしれた。
 ウィンブルドンの男子シングルス決勝としては最多となる77ゲームに及ぶ長い戦いを制したのはフェデラーだった。2年ぶり、通算6度目の栄冠だった。サンプラスの記録を抜き去ったフェデラーは「このウィンブルドンで記録を破ることができてうれしいよ」と笑顔を見せた。また、この優勝で、ナダルから11カ月ぶりに世界ランキング1位の座を奪い返した。

1/2ページ

著者プロフィール

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント