ヒューズvs.セラ戦も良いけれど、他の見所は?=UFC98
これからがビッグになるための本当の勝負。WEC最強だったソネンと、UFCトップ戦線を賭けた戦いに挑む元IFL世界ミドル級王者ダン・ミラー 【photo by ZUFFA】
特に米国で注目を集めているのが、マット・ヒューズ×マット・セラの因縁のウェルター級戦だ。07年4月に世界ウェルター級王座を獲得したマット・セラは、TUFシーズン6でコーチ役を務め、07年12月には、マット・ヒューズと対戦するはずだった。しかし、セラの負傷でこの一番がヒューズ×GSPの暫定世界王座戦となり、ここからGSPの覇道構築が始まった。
そのGSPに完敗を喫した両者。ヒューズは昨年6月にロンドンで計量ミスをしたチアゴ・アウベスにヒザ蹴りからのパウンドで完敗を喫して以来11カ月ぶりのファイト。一方のセラはそのGSPに敗れ、1年1カ月を経て、久々のオクタゴンとなる。
レスリング+MMAグラップリングを身につけたヒューズに、レスリング+ブラジリアン柔術を習得しMMAに転向したセラ、グラップリング主体の両者の一戦は非常に噛みあうことが予想され、知名度も抜群なだけにおおいに盛り上ることが予想される。
しかし、両者ともこの一戦で勝利を得たところで、神の階級とされるUFCウェルター級戦のトップに返り咲く期待感は薄く、最近のMMA界で増えつつあるOB戦に近いマッチメイクといえるだろう。
名誉を得て、経済的にもひと財産をなした彼らと違い、さらなるステップを目指し、負けられない一戦に挑むのはダン・ミラーとチェール・ソネンのミドル級戦だ。
ダン・ミラーは11勝1敗で昨年夏に活動停止に追い込まれたIFLの世界ミドル級チャンピオンだった。その後、UFCに転向を果たすと、ロブ・キモンス戦を皮切りに、同じ元IFL世界ミドル級王者のマット・ホーウィッチ、WECミドル級から転向してきたコブラカイの組み技師ジェイク・ロショルトを下している。
一方のソネンは、これがUFC復帰後2試合目となるが、前回の試合では“ミスター柔術”デミアン・マイアの三角絞めで一本負けを喫し、捲土重来、岡見勇信の代役として、この一戦に挑む。MMAキャリア7年で既に32戦の戦績を残るソネンは、プロデビュー戦でジェイソン“メイヘム”ミラーを下している。その後、パンクラスに来日し、郷野聡寛とドロー、IFLやROTR、元祖ロシア資本のユーフォリアMFCなど、ハイクオリティの中規模大会で活躍した後、05年10月に初めてUFCで戦っている。
3試合契約を1勝2敗で終えたのち、ボードッグから再びズッファ配下のWECへと戦場を変え、WECでは無冠だったものの最強のミドル級ファイターに君臨した。
WEC重量級のUFC移管により、先のマイア戦でUFCに2年半ぶりのカムバックを果たしたソネン。その初戦で一本負けしてしまったわけだが、あの敗北は勝ったマイアを褒めるべきだろう。多くのUFCミドル級ファイターがハマった、マイアのリバーサルからのボジション奪取に対して、ほぼ完璧という対処を見せたファイターはソネンが初めてだったからだ。
ソネンからすれば、想定外の崩しでポジションを許し、そのまま三角絞めで敗れたが、勝負が決した瞬間以外で危ないシーンは皆無だった。
WECでパウロ・フィリョに初黒星をつけたように、グラップラーには自信を持つソネンだけに、ヘンゾ・グレイシー系の柔術がベースとなったトータルファイタータイプのミラーは、得意な展開に持ち込める相手といえるが、果てして……。
アンダーカードも充実のラインナップ
また、ミドル級同様、王者が(この場合は自らの意思で)クロスワールドに挑むのがライト級戦線だ。そのライト級戦線から、今大会は前世界王者ショーン・シャークとフランク・エドガーが相対する。UFCライト級のトップコンテンダー、タイソン・グリフィンに土をつけた両者の対戦は、ともにレスリングを得意とし、打撃を織り交ぜた北米MMAスタンダードなスタイルで、真正面からぶつかり合う一戦になりそうだ。
ニュージャージー州出身&在住で、時にはフィラデルフィアまでドライブし、エディ・アルバレスとも練習するエドガーは、ネームバリューでシャークに遅れを取るものの、実力的には知名度ほどの差はないはず。
前王者を倒せば、一気にタイトルコンテンダーの仲間入りも考えられるエドガー。8歳も若い彼が勝つには、テイクダウンを許さないこと、そして打撃を数多く繰り出し、当て続けること。シャークの、同じ高さから出てくるパンチとテイクダウンを見切れない限り、勝機は見えてこない。
またアンダーカードに組まれたライト級には、ズッファ期待のフィリピーノ・フェノミナン=フィリップ・ノヴァーが控えている。TUFシーズン8の準優勝者、アグレッシブかつ変則的いな打撃、柔術はヘンゾ系アレッシャンドリ・ソッカの黒帯の腕前。UFCでは2連敗中のカイル・ブラッドレーを当てがってもらっており、KOもしくは一本決着が求められる一戦となる。
さらに、同じシーズン8で活躍したクリストフ・ソジンスキーは、4月のカナダ大会からスクランブル出場となる。同じ元IFL勢のアンドレ・グスマォンとの対戦は、2007年IFL優勝チーム=ヘンゾ・グレイシー柔術軍団だったNYピットブルスメンバーの中心選手=グスマォンと、クリス・ホロデッキー、ジェイ・ヒエロン、ベンジー・ラダックとLAアナコンダスを構成していたソジンスキーという、かなり通な楽しみ方ができる一戦といえる。
UFC98「EVANSvs.MACHIDA」
<UFC世界ライトヘビー級選手権試合 5分5R>
ラシャド・エヴァンス(王者/米国)
リョート・マチダ(暫定王者/ブラジル)
<ウェルター級 5分3R>
マット・ヒューズ(米国)
マット・セラ(米国)
<ミドル級 5分3R>
ドリュー・マックフィールズ(米国)
ザビエルル・フォウパポッカム(フランス)
<ミドル級 5分3R>
チェール・ソネン(日本)
ダン・ミラー(米国)
<ライト級 5分3R>
ショーン・シャーク(米国)
フランク・エドガー(米国)
<ウェルター級 5分3R>
ブロック・ラーソン(米国)
クリス・ウィルソン(米国)
<ヘビー級 5分3R>
パット・ベリー(米国)
ティム・ヘイグ(カナダ)
<ライト級 5分3R>
フィリップ・ノヴァー(米国)
カイル・ブラッドレー(米国)
<ライトヘビー級 5分3R>
クリジストフ・ソジンスキー(カナダ)
アンドレ・グスマォン(ブラジル)
<ウェルター級 5分3R>
吉田善行(日本)
ブランドン・ウォルフ(米国)
<ライト級 5分3R>
デイブ・カプラン(米国)
ジョージ・ループ(米国)
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