川上が握るブレーブス投手陣再建のカギ
川上はデビュー戦で初勝利
ブレーブスの川上は先発して6回を投げ8三振を奪い勝ち投手となった 【Getty Images Sport】
川上はこの初登板初勝利とともに、日本人メジャーリーガーとして新たな1ページを野球史に刻んでいる。ブレーブスは1871年、最初のプロ野球リーグ全米プロ野球選手協会の設立に参加したボストン・レッドストッキングスを前身とし、現在のメジャーリーグにおける「最古の球団」とされている。ブレーブスは過去3度、本拠地を置いた三都市(1914年ボストン、57年ミルウォーキー、95年アトランタ)で世界一に輝いているが、これもメジャーで唯一の例だ。その伝統あるチームの歴史に、川上はこの日正式にその名を連ねた。
第二次世界大戦後のブレーブスは、通算755本塁打のハンク・アーロンを筆頭に強打者を輩出しているイメージが強い。だが、ボストンでリーグ優勝した1948年にはウォーレン・スパーン、ジョニー・セインの両エースが計39勝をマークし、57年にはスパーン、ワールド・シリーズで2完封を含む3勝でMVPに輝いたルー・バーデットの大活躍があった。ボビー・コックス現監督によって世界一となった95年は、グレッグ・マダックス、ジョン・スモルツ(現レッドソックス)、トム・グラビンの将来殿堂入り確実な三本柱が君臨していた。
メジャー監督として現役最多、歴代4位の通算勝利数を誇るコックスの下で成し遂げられた14季連続の地区優勝は、特に投手陣の活躍が占めるウェートが大きかった。95年は、打線がナショナルリーグ14球団中13位のチーム打率2割5分だったのに対し、投手陣が喫した総失点540、被本塁打107、被打率3割9厘、WHIP(1回平均被安打+与四球)1.25は、いずれも当時のメジャー28球団で最高の数字で、ナ・リーグ2位の守備率9割8分2厘を誇った鉄壁のフィールディングと併せ、手堅いコックス流さい配を支える原動力となった。
先発投手陣の再建が最優先
コックス監督の試合運びは、徹底して「先手」「布石」を打つ点が際立っている。たとえば2点リードの場面で手堅く送りバントで得点圏にランナーを進めて1点を追加し、そのあと相手に2ラン本塁打を浴びても1点差で逃げ切るシーンなどがよく見られる。
基本的にはデイビッド・ジャスティスやフレッド・マグリフ、チッパーとアンドルーの両ジョーンズ、ブライアン・マッキャン、ジェフ・フランコーアら打線には常に強打者をそろえているが、95年のように打線がリーグ下位の数字しか残せなくても、なお105もの得失点差を支える「三本柱」を中心とした投手陣の存在が大きかった。
しかし昨年はグラビン、スモルツ、ティム・ハドソンの三本柱が故障者リスト(DL)入りしたのが響き、最下位となった90年以来18年ぶりに総得点753、総失点778と、得失点差がマイナスになってしまった。それだけに今季のブレーブスは先発投手陣の再建に最優先で取り組み、フリーエージェントで川上とデレク・ロー(前ドジャース)、トレードでホワイトソックスからハビアー・バスケスを獲得し、昨年タイガースから移籍1年目で13勝を挙げたジェイアー・ジャージェンスとともに、移籍したスモルツ、復帰が後半戦になりそうなグラビン、ハドソンの穴を感じさせない陣容となった。
引退後の殿堂入りも確実なコックス監督は、退場回数も07年にメジャー歴代最多となったほどの熱血漢として知られる。中日入団時の監督だった星野仙一氏(現阪神シニアディレクター)とオーバーラップする新しい“ボス”のもと、川上の野球人生における「第2章」が、いま幕を開けた。
<了>
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