年末年始は拳を突き上げたい!

t.SAKUMA
 昨年の大晦日。三崎和雄が秋山成勲にKO勝利(後日、ノーコンテスト)を収めたときの会場の“爆発ぶり”は凄かった。多くの観客が立ち上がり、そして、両手を天に突き上げていたのを思い出す。
 格闘技の魅力の一つは、一瞬で結果が決まってしまうスリルにあると思う。これは、野球やサッカー、その他のスポーツでは味わうことができないものだ。このスリルがあるからこそ、見ている方は緊張感をもって試合をみることができる。

 格闘技選手における、喜びの表現の仕方にさして種類はない。大抵が両手を突き上げてガッツポーズをするか、もしくは最上級として、コーナーポストのロープにに登ることになる。五味孝典は文字通り、コーナーポストの“上”にまで駆け上がる。これは、素晴らしい喜びの表現方法だ。

 一方でそれら一連の行為を見ている人にとって大切なのが、このように選手が喜びを表現しているときに、どのようにしてそれを受け入れるかということだ。観客の側にもさして選択権はなく、両手を突き上げるか拍手をことになるわけだが、最上級の表現方法は、席から立ち上がって両手を突き上げるということになり、さらに付け加えるなら、選手と同様に何を言っているかは不明な雄叫びを発することだ。
 これらはありがちな行為であるものの、選手と喜びを共有するという意味で、格闘技を見る上ではとても大切だ。

 なぜ、喜びを共有することが大切なのか。それは、格闘技では技術的な側面を楽しむのが、他のスポーツと比べて難解であるということがある。ハッキリ言うなら、格闘技はわ“かりにくく難しい”のだ。それならば、一番わかりやすい、勝ち負けという結果が出た瞬間に、このスポーツを楽しむのも大切ではないかと思う。

 格闘技では選手の試合数は、頑張っても年間5〜6試合がいいところ。年間150試合近く試合を行うプロ野球や、その他のスポーツと比べると極端に少ない。しかし、それだけに1試合における勝利や負けの意味は、他のスポーツと比べて必然的に高いものとなる。だからこそ、選手の勝利に対する喜びや、負けに対する喪失感も他のスポーツと比べて異様に高い。

 見ている方としては“勝ち負け”を選手と一緒になって共有することで、さらに格闘技を楽しめるはずだ。だから、格闘技を見るときには、必ずどちらかの選手を応援して見た方が楽しい。(仮にどちらの選手にも興味がないとしても)。感情移入して見ている格闘技の試合と、そうでない試合とでの、面白味は全く違うものになってくる。(格闘技の試合で、選手の知人や友人がひときわ熱くなって試合をみることができるのは、この感情移入がしっかりできているからだと思われる)。
 
 よって、格闘技を観戦する時は、応援している選手が良い試合をして勝ったら、なるべく選手と一緒に拳を突き上げ喜びを共有する。そして、もし応援している選手が負けてしまったら、選手と同様に喪失感を味わい深く落ち込むのが最も格闘技を楽しめる方法だろう。
 
 年末年始と、好カードがそろっている格闘技界。選手には、喜びや悔しさをファンが共有できるような熱い試合を期待したい。一方、格闘技ファンは、会場で見るにせよ、液晶テレビで見るにせよ、両手を突き上げる準備だけはしておきたい。
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント