「ミスター完投」今昔物語
少なくなったメジャーの完投数
元広島の「ミスター完投」黒田。メジャーの舞台でロバーツ級の活躍を見せられるか 【写真は共同】
昨年、両リーグを通じて最多完投を記録したのはロイ・ハラデー(ブルージェイズ)の7試合。2ケタ完投数は、1999年にランディー・ジョンソン(ダイヤモンドバックス)が12回を記録して以来、途絶えている。
今季からドジャースのマウンドに立つ黒田博樹は、広島東洋カープ在籍中、先発した通算244試合中、74試合で完投している。「完投率」にすると30.3%にも及ぶが、これは同じセ・リーグの代表的な先発投手である上原浩治(巨人)の28.0%(先発193試合、完投数54)、川上憲伸(中日)の12.4%(先発226試合、完投数28)を上回っていた。黒田は昨年まで2ケタ完投2回を含め、リーグ最多完投したシーズンを6回記録しており、「ミスター完投」の異名を奉られていた。
分業制の影響で、近年のメジャーリーグでは完投数のみならず、先発投手の投球数、投球回数も減少の傾向にあり、昨年の最多投球回数はC・C・サバシア(インディアンス)の241回、最近10年間でも、ジョンソンが12完投した99年の271回2/3が最多である。しかし、今から半世紀前のメジャーには、ジョンソンや黒田も顔負けのタフな大投手が君臨していた。その中でも目立ったのが、50年代にナショナルリーグを代表する右腕投手として活躍したロビン・ロバーツである。
驚異の完投数でチームを引っ張る
ロバーツの驚異的なタフネスが本領を発揮したのは、翌50年のシーズン。40試合中39試合に先発し、完封5を含む21完投、20勝11敗の成績を残した。だが、その活躍はロバーツにとっては「序章」に過ぎなかった。以後、52年の28勝を最高に、55年まで6年連続20勝以上をマーク。投球回数も6年続けて300回を超え、20完投以上が8回、うち30完投以上を2回記録している。
ロバーツと黒田の共通点とは
ロバーツは61年までフィリーズに在籍した後、オリオールズ、アストロズ、カブスを経て66年限りで現役を引退。通算286勝を挙げ、メジャー歴代21位となる投球回数4688回2/3を記録した。完投数305は歴代38位だが、第二次世界大戦後にデビューした投手としてはトップである。
53年に大リーグオールスターの一員として、また90年にはロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)の春季キャンプに臨時コーチとして来日しており、大変な親日家でもある。筆者が2003年にクーパースタウンでお目にかかったときは、「イチローや野茂英雄のような日本人選手がアメリカで大活躍する時代になったとは」と感慨深げに語っていたが、果たして自分の現役時代とオーバーラップする黒田のピッチングは、ことし82歳になるロバーツ氏の目にはどのように映るのであろうか。
<了>
※次回は3月18日に掲載予定です。
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