中国スポーツのエリート教育に変化の兆し
未来の五輪メダリストを夢見る子どもたち。5〜6歳から厳しい練習に励んでいる 【朝倉浩之】
“世界王者の揺りかご”の実態
什刹海(シーシャハイ)体育学校の中庭。デッキチェアが置かれ、開放的な雰囲気だ 【朝倉浩之】
「体操館」では、まだ小学校に入るかどうかくらいの少年少女がくるくると宙返りをして鉄棒や平均台などの練習をこなしていた。コーチの厳しい叱責(しっせき)の声が響きわたり、私の方が身を硬くするくらいだ。この学校には、卓球、体操、バレーボールなど中国の得意種目の代表「予備軍」600名ほどが在籍する。特に体操は5、6歳から10歳までと年齢層は低い。男児は短パンに半裸。女児はレオタード。平均台の上で宙返りをするが、足を踏み外して、転倒する……だが、それにもめげず、また台に駆け上がり、再度、挑戦する。コーチの指導の声は、「子どもたちに何もそこまで」とこちらが思うほど、厳しい。だが、この張り詰めた空気も当然である。優秀な選手は、早い段階で選抜されて「北京市代表」に送り込まれ、この学校を“卒業”する。一方、一定の年齢で見込みがないと判断されれば、親元に送り返される。『育成』とは言うが、いわば毎日が選抜の連続というわけだ。
同校の石風華副校長は「我が校が優秀な選手を輩出できるのは“早期教育”、“優秀なコーチ陣”の2大特徴があるからだ」と胸を張る。そして、この『早期教育』システムこそが、中国の金メダル量産体制を支える屋台骨となってきたのだ。