中国が見据える「五輪後」というテーマ

朝倉浩之
 ここは、中国最大の人気競技の一つ、バドミントンの五輪会場だ。センターコートでは、中国ナンバーワンの選手、林丹がいつものように自信に満ちたプレーを見せ、会場を埋めた観客の大歓声を浴びている。脇のスタンドには黄色のシャツで統一された若者たちが陣取り、「中国、加油!(がんばれ)」の掛け声を会場中に響かせている。記者席は中国人記者でぎゅうぎゅう詰め。トイレに立てば、席はなくなりそうだ。

 北京五輪はまだ10カ月先。この風景は、五輪に向けて会場設備や運営面をテストするプレ五輪である。この「グッドラック北京」シリーズが始まって2カ月。私は、ほぼすべての会場に足を運び、競技場の様子を取材してきた。先日開催された北京マラソンでは、取材用車両の不備や距離不足などの問題が噴出し、運営面での不安を抱かせた。だが、日本で言われているほど心配ではない。一連の「プレ五輪」に関しては、今のところ、ほぼ“準備万端”。運営側の並々ならぬ意気込み、言い換えれば、絶対に失敗できないという悲壮感さえ感じさせる徹底ぶりが見受けられる。

大学内に五輪スタジアムが建てられる理由

バレーボールの会場となる北京理工大学体育館 【朝倉浩之】

 さて、ここ数カ月間、いくつかの五輪会場を回っているうちに、私はあることに気付いた。先ほどのバドミントン会場は北京市南にある北京工業大学の体育館である。その外観と設備は、前近代的な大学本体の容貌(ようぼう)とは対照的で、違和感さえある。瀟洒(しょうしゃ)なデザインの外観、7500人収容の観客席を持ち、テレビ中継にも対応できる設備がある本格的な競技用体育館。これは、来年の北京五輪に向け、新築されたものだ。

 実は、五輪ではいくつかの「大学体育館」が会場として使用される。中国のお家芸、卓球は最高学府の北京大学だし、重量挙げは中国唯一、航空を専門とする航空航天大学。レスリングは北京農業大学、バレーボールは北京理工大学、柔道は科学技術大学、等々。いずれの大学も、その分野では「一流」の名が付く名門である。つまり北京では、五輪スタジアムを「大学の体育館」として、次々に建設しているというわけである。

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著者プロフィール

朝倉浩之

奈良県出身。1999年、民放テレビ局に入社。スポーツをメインにキャスター、ディレクターとしてスポーツ・ニュース・ドキュメンタリー等の制作・取材に関わる。2003年、中国留学をきっかけに退社。現在は中国にわたり、中国スポーツの取材、執筆を行いつつ、北京の「今」をレポートする各種ラジオ番組などにも出演している。

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