女子団体、3大会ぶりの五輪団体出場=〜世界体操競技選手権を振り返って(2)女子団体〜

日本体操協会:遠藤幸一
 北京五輪の国別出場枠をかけた体操の世界選手権が1〜9日、ドイツのシュツットガルトで行われた。日本女子にとっては3大会ぶりの五輪団体出場権獲得という目標を達成し、非常に盛り上がった大会となった。ここで五輪団体出場権について振り返ってみよう。

 北京五輪の出場権獲得争いは、2006年の世界選手権から始まった。06年大会での団体予選上位24チームが、今大会の団体出場権を得るが、日本は12位で予選を通過した。
 そして臨んだ今大会では、団体予選上位12位に来年の北京五輪団体出場権が与えられる。13位以下は、13〜15位に個人枠2人、16〜18位に個人枠1人がその国に与えられる。従って、12位以上であれば6人の五輪選手を誕生させることができるが、13位ではわずか2人。そこには大きな差が存在する。
 過去、日本女子はきん差でその団体出場権を逃したことが3度あった。1992年バルセロナ大会、2000年シドニー大会、04年アテネ大会である。それぞれ前年の世界選手権の団体で13位(1991年)、13位(1999年)、14位(2003年)であり、得点上も非常にきん差だった。今回は前回大会で12位を獲得していたが、その前後の国はほぼ横一線の状態であり、さらなる強化は緊急課題であった。

チームに吹いた新しい風

 今回、団体出場権獲得という結果に結びついた理由を振り返ると、中学生選手の台頭と代表選手選考方法の2点は大きな意味を持っていた気がする。中学生選手の台頭は、今に始まったことではないが、鶴見虹子(朝日生命体操クラブ)と山岸舞(戸田市スポーツセンター)のデビューはチームに新しい風を吹きいれた。通常、シニアの世界大会に出場できるのは開催年の12月31日までに16歳になっていなければならない。しかし、五輪前年はその年齢制限が特例として15歳に引き下げられる。今大会を最後にこの特例はなくなるのだが、それが適用される今年に、日本の1、2位を争う中学生二人を代表に選べたことはいいタイミングだった。

補欠を作らない戦術

 代表の選考方法は、国内選考会で7人を正選手に指名し、試合直前に出場する6人を決定するという方法をとった。以前、調子の上がらない正選手と補欠選手を交代することもあったが、すでに正選手・補欠選手という区分けをしていると、なかなか思い切った対応をとれないことから導入したものだ。結果的に現地での調子をもっとも重視し、選考会2位の山岸舞を補欠にすると女子強化本部は決定した。この選考方法は結果次第で大きく評価が変わることになるが、最終判断をする強化本部は最後まで悩み続けたという状況を難しい点として語っている。これは、サッカーや野球などでは、誰を代表に選ぶか、監督の責任で決めるという状況がすでに構築されているスポーツ界とそうでないスポーツ界との違いにもある。今後、こうした戦略を続けているのであれば、現場に対して理解を求めていくことなど、国内体操界における環境整備は必要だろう。

 いずれにしても、体操選手の多くが五輪での活躍を夢見る。その代表になる枠が前回の2人から今回6人へと大幅に増えた。これは国内の女子関係者にとって大きなモチベーションアップにつながる。まずは次の飛躍のためのきっかけはできたので、世界との差をしっかりと分析して、いい戦いのできる準備を期待したい。

<了>
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著者プロフィール

1961年東京生まれ。日本体操協会常務理事・総務委員長。体操の金メダリストである父親を持つものの、小学、中学はサッカーに明け暮れていた。高校で体操に転身。国際ルールのイラストレーターとして世界中の体操関係者にその名を知られている。

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