谷本「試合の間にもワクワクしていました」
8月12日、五輪女子柔道63キロ級が行われ、日本代表の谷本歩実が2連覇した 【Photo:ロイター】
以下、谷本と松岡義之コーチのコメント。
谷本「自分の中で一番パワーをもらったのは谷選手」
試合の間にもワクワクしていました。そういうことはデコス選手にしかないんですが、今日も組んだ瞬間に気持ちがあふれて笑顔が出ました。試合ができることがすごくうれしくて、きついとかは全然思わなかったです。今回はけがをしていての優勝。デコス選手もそうだし、私が一流の柔道家だと思う選手に勝てたことが大きかったです。
表彰台では涙が出ました。今まで柔道着も着れないじゃないかと(いう時期があり)、(五輪は)夢の舞台だったので。後ろで(国家を)歌ってくれている人の声が聞こえて、たくさんの人に支えられていたんだなと思った瞬間に。
妹は大泣きしていました。「最高の試合を見せてくれてありがとう」って、言葉にならない声で言ってきました。妹からの手紙は、今まで育美が書いた手紙と私からもらった手紙をまとめ合わせて、たくさん書いてきてくれました。最高の試合を見せてくださいと書いてあって、うれしかったです。
内柴選手の試合を見て、勝つべくして勝つ選手を見て、のびのびと戦おうと勇気付けられました。自分の中で一番パワーをもらったのは谷選手で、部屋が一緒でした。いろいろな思いがあったと思うんですけど、最後に窓から見送ったときに、手を振って「絶対頑張ってね」って言ってくれて、ずっと一緒だったのでグッときました。ずっと谷選手を見てやってきて、目標としている選手なので、最後まで近くにいれて良かったです。
(今後は)今日のためにやってきたので、これからゆっくり考えたいです。デコス選手がこの大会が終わったら70キロ級に上げるので、絶対に試合したかった。最高の舞台で最後の試合ができました。デコス選手が70キロに行くなら、私も行こうかなって言ってさっきも話していました。
デコス選手は柔道をやってきた中で一番好きな選手。胸を借りるつもりで戦いました。ライバルが一番仲良くなるので、柔道を辞めたら語学を勉強していっぱい話したいです。
(これまで世界柔道で勝てなかったのは)63キロ級の層が厚くて、レベルが高いからだと思います。その中でも一番の壁はデコス選手で、ジュニアの時代から決勝でいつも対戦して負けていました。彼女は70キロ級でもすぐにトップの選手になると思いますし、日本の選手もフランスで一番強いのはデコス選手だと言っています。
女子63kg級決勝でL・ドコス(フランス)と対戦し、1本勝ちで2連覇を達成した谷本歩実=12日、北京科技大体育館 【Photo:ロイター】
落ち着いてましたね。ひとつずつの試合は不安でしたけど、あの子はけがで柔道ができない期間があったから、その間に自分を見つめ直す時間もできて、柔道をやれる喜びを感じていたし、応援してくれる人の気持ちをさらに強く感じたと思います。そういう思いを力に変えてやれたと思います。
(決勝は)心理戦だと思っていました。余裕をもたせると強いですから、ペースを狂わせてからが勝負かなと。(今日は寝技もあったが)どこでチャンスがあるかは分からないので、チャンスを逃さない柔道で、それがたまたま寝技になっただけです。
体力的にも技術的にも上がっていて、精神的な部分ですごく自立してきたと思います。前はムラっ気があったんですが、今は安定した気持ちでやれている。特にけがをしてからは精神面での成長が大きかったと思います。
もともと寝技もできる子なんですが、前は立ち技を狙いすぎているところがあった。今日は、ワンチャンスがあれば攻めきろうという姿勢がありました。
練習でもすごくいろいろな技を使っていたんですが、それを我慢するようになりました。無理なところからは(技に)入らない。そういう自分をコントロールするところが、柔道の面でプラスになったと思います。
心技体は今が一番充実していると思います。1本取ることがあの子のモチベーションを上げるというか、あの子は勢いづくと底知れない力を出しますから。
姉妹愛は、強い。心の支えです。横にいるだけで安心するんでしょう。よくケンカもするけど、一緒にいる時間は長いですね。このところは、育美もけがをしてリハビリとかで一緒に行動する時間が少なくなったんですが、その分、自分でなんでもやらないと自立したことが良かったのかもしれないです。
(自身も五輪で金メダルをとって教え子も金メダルですが)そういう感動を味あわせてやりたいということで、今の所属(コマツ)にきた。自分も感動させてもらっているので、指導者冥利(みょうり)ですね。歩実とめぐり合えてよかったですし、歩実もうちに入って良かったと実感していると思います。
<了>
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ