R・マドリーで高まる「BBC不要論」 要因はC・ロナウドの得点力低下にあり?

工藤拓

C・ロナウドとベイルを欠いたエイバル戦

BBCを2人欠いて臨んだエイバル戦は、ベンゼマの2ゴールなどで4−1と快勝 【Getty Images】

「誤報だよ。そんなこと言っていない。このチームは全員が走る。平等なチーム内競争が強さの鍵なんだ。出場機会に飢えている選手たちがプレスをかけ、よく走った。今日はそのことが証明されたはずだ」

 現地時間3月4日、敵地でエイバルに4−1と快勝した試合後のミックスゾーンでの発言だ。

 記者たちに囲まれたレアル・マドリーのセルヒオ・ラモスは、自身が前日の練習前に行われたチーム内ミーティングで「守備をしなくていいのは60ゴール決めてくれる(クリスティアーノ・)ロナウドだけだ」と発言したとする報道を否定するとともに、「売らなきゃいけないのは分かるが、何より重視すべきは信憑(しんぴょう)性じゃないのか」と不快感をあらわにした。

 直近の3試合で1勝1分け1敗と勝ち点5を取りこぼしたレアル・マドリーは、第25節終了時点で首位の座をバルセロナに明け渡していた。消化試合が1つ少なく、ホームでのバルセロナとの直接対決も残っている。引き続き優勝争いをリードする立場は保っているものの、3試合で計7失点を計上した守備の乱れは1つのミスが命取りとなるチャンピオンズリーグ(CL)を前に、早急に修正すべき問題だった。

 そのような状況下で行われたのが、報じられた緊急ミーティングである。

 第25節ラス・パルマス戦のハーフタイム、続いて翌日の練習前に意見を出し合った結果、気合を入れ直してエイバル戦に臨んだ選手たちは、最近の不調がうそのような強さを発揮。試合開始30分足らずで3ゴールを挙げ、早々に勝負を決めてしまった。

 S・ラモスの言葉を裏付けるように、この日レアル・マドリーの90分間の走行距離はエイバルのそれを約3キロも上回った。とはいえ、その数字も先の報道で話題となった「守備をしなくていい唯一の選手」がいれば変わっていたかもしれない。

 この日はギャレス・ベイルが出場停止の上、得点源のC・ロナウドも7日に控えたナポリとのCL決勝トーナメント1回戦を万全の状態で迎えるべく、招集メンバーから外れていた。レアル・マドリーが誇る「BBC」(ベイル、カリム・ベンゼマ、C・ロナウド)のうち2人を欠いたジネディーヌ・ジダン監督は、両ウイングにルーカス・バスケスとマルコ・アセンシオを起用。中盤ではトニ・クロースを温存し、ハメス・ロドリゲスをルカ・モドリッチとカゼミーロより前目に起用したのだが、これがここ数試合で失われていた攻守バランスの改善につながった。

リヨン時代を彷彿とさせるベンゼマのプレー

エイバル戦ではベンゼマ(左)が躍動。“怪童”と恐れられたリヨン時代を彷彿とさせるプレーを見せた 【写真:ロイター/アフロ】

「難しかったですね。ロナウドとベイルがいないことが逆に相手にとって良かったのかなと思います。前の選手もディフェンスに降りてきていましたし。ベイルはそんなに(守備を)さぼらないですけれど、ロナウドは特にさぼる。その分、攻撃はすごいですが。(ロナウドの代わりに)さぼらないやつが入ったので、特に前半はなかなか穴がなかった」

 ラスト数分の出場にとどまったものの、ピッチ脇から戦況を見つめていたエイバルの乾貴士は、この日のレアル・マドリーの印象をそう語っていた。

 守備時も前線に残ってカウンターのチャンスを待っているC・ロナウド、戻りはするがボールへのアプローチが甘いベイルとは違い、ルーカスとアセンシオは中盤両サイドのスペースをしっかり埋めながら、時に自陣深くまで戻り、サイドバックのフォローまで献身的にこなしていた。そのため、エイバルは主な攻撃パターンであるサイドからのクロスを、良いタイミングで入れることができなかった。

 さらには両ウイングが低めの位置でプレーする分、普段以上にスペースを得たベンゼマが前線で躍動するという攻撃面でのメリットも生まれた。高い位置からプレスをかけるべく、DFラインを押し上げて守るエイバルに対し、ベンゼマは頻繁にサイドのスペースに大きく流れ、縦パスを引き出して攻撃の起点となっていた。

 しかも、スペースメークやポストプレーといった気の利いたプレーに加え、この日は前半30分までに2ゴール1アシストを記録。それはC・ロナウドのサポート役に徹して久しいレアル・マドリーではあまり見られなくなった、“怪童”と恐れられたリヨン時代を彷彿(ほうふつ)とさせるプレーだった。

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著者プロフィール

東京生まれの神奈川育ち。桐光学園高‐早稲田大学文学部卒。幼稚園のクラブでボールを蹴りはじめ、大学時代よりフットボールライターを志す。2006年よりバルセロナ在住。現在はサッカーを中心に欧州のスポーツ取材に奔走しつつ、執筆、翻訳活動を続けている。生涯現役を目標にプレーも継続。自身が立ち上げたバルセロナのフットサルチームは活動10周年を迎えた。

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