圧倒的な個人能力ゆえに見せる守備の弱点 レアル・マドリーの戦術を徹底分析 後編

片野道郎
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“けがの功名”で守備が安定

モドリッチ(19)、コバチッチを並べてプロテクトする苦肉の策による現在の布陣は、攻守のバランスを改善する結果につながった 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

 リーガ・エスパニョーラ第15節のデポルティーボ戦で3−2の逆転勝利を収め、公式戦35試合で26勝9分け無敗というクラブ記録を達成したレアル・マドリー。監督のジネディーヌ・ジダンが、攻撃的プレーヤーに勤勉かつ献身的に守備のタスクをこなすことを受け入れさせることで、守備の安定感が増したことは前編で述べた。

 また中編では、レアル・マドリーが展開する攻撃――自陣からパスをつないで攻撃をビルドアップし、中盤でボールポゼッションを確立して試合の主導権を握る。最終局面ではクリスティアーノ・ロナウド、カリム・ベンゼマらの個人能力を最大限に生かす――という基本コンセプト、そして多くは各選手の即興的な判断と連係に委ねられているということを具体的に説明してきた。後編では、守備にフォーカスして分析していきたい。
 システムを4−2−3−1に変更してからのレアル・マドリーは、より負けにくいチームになった。当初の4−3−3システムで最終ラインの前をプロテクトしていたアンカーが相次いで故障離脱し、このポジションで守備のクオリティーを保証できるプレーヤーがいなくなってしまったのが、システム変更の背景だったことは前編でも見た通りだ。

 最終ラインの前にルカ・モドリッチ、マテオ・コバチッチという2人のクロアチア代表MFを並べてプロテクトする現在の布陣は、その意味で苦肉の策とも言えるわけだが、結果的に攻守のバランスをはっきりと改善する結果につながったのだから、ある意味では“けがの功名”とも言える。
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著者プロフィール

1962年仙台市生まれ。95年から北イタリア・アレッサンドリア在住。ジャーナリスト・翻訳家として、ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を広げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えている。2017年末の『それでも世界はサッカーとともに回り続ける』(河出書房新社)に続き、この6月に新刊『モダンサッカーの教科書』(レナート・バルディとの共著/ソル・メディア)が発売。

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