R・マドリーで高まる「BBC不要論」 要因はC・ロナウドの得点力低下にあり?

工藤拓

課題の守備が安定、攻撃陣も躍動を見せる

ベンゼマだけでなく、本職のトップ下でプレーしたハメスも出色の出来でゴールを生み出した 【Getty Images】

 ベンゼマだけではない。久々に本職のトップ下でプレーしたハメス、ここ数試合はベンチにも入れていなかったアセンシオの2人も出色の出来で、ベンゼマと絶妙のコンビネーションを奏でながら全4ゴールを生み出している。

 課題の守備が安定し、前線でのびのびとプレーするベンゼマを中心に攻撃陣も躍動した。結果、内容ともに納得の手応えを得た。しかし、この日のパフォーマンスはジネディーヌ・ジダン監督に厄介な問題を提示することにもなった。

 この試合を境に、にわかに高まりつつあった「BBC不要論」が本格的に議論されるようになってきたのだ。

 かつての(カルロ・)アンチェロッティと同じく、昨季ジダンはレアル・マドリーの“顔”である前線の3人について、「万全の状態なら常に先発で使う」と公言している。最近は明言を避けるようになったものの、やはり彼らがチーム内ヒエラルキーの再上位にいることに変わりはない。

 ただ先述した通り、前線にBBCを並べた4−3−3のシステムは守備面で中盤以下にかかる負担が大きい。CLベスト8以上のレベルの相手になると、4バックとMF3人のブロック守備ではしのぎきれない場面も頻繁に出てくる。

 それでも以前は守備のリスクを補って余りあるBBCの破壊力を駆使して、大半の試合は攻め勝つことができていた。だから周囲も他のアタッカーへの冷遇ぶりには同情しつつも、BBCをアンタッチャブルな存在として認めてきたのである。

ゴール数が落ち始めた「絶対的エース」

チームの絶対的エースであるC・ロナウドには得点力の低下が見られる 【写真:ロイター/アフロ】

 しかし、今季はその前提が崩れ始めている。原因はBBCの破壊力をスコアに反映させてきた男、C・ロナウドの得点力の低下だ。

 パフォーマンスの低下が指摘され始めた近年、C・ロナウドはチーム内での役割をフィニッシュの部分に特化し、誰よりも多くのゴールを決めることで自身の価値を保ってきた。歴代の監督たちもまた、ある程度他の選手のタレントを犠牲にしてでも、彼の得点力を最大限に生かすサッカーを選択してきた。S・ラモスは否定していたものの、C・ロナウドがチームで唯一、守備のタスクを免除されていることは周知の事実である。

 だが32歳を迎えた現在、彼はドリブルでDFを抜き去るプレーを滅多に成功できなくなっただけでなく、頼みのゴール数まで落ち込み始めている。今季はここまで公式戦31試合で25ゴール。このままのペースだと、レアル・マドリー移籍1年目以来、7年ぶりにシーズン50ゴールを下回ることになるかもしれない。

 もちろん、ここぞという場面で決めてくれるC・ロナウドの勝負強さは大舞台ほど頼りになる。ラス・パルマス戦でも、敗戦濃厚だった残り5分から2ゴールを挙げ、3−3のドローに持ち込む立役者となったばかりだ。

 ただ、エイバル戦であらためて示された通り、ベンゼマはC・ロナウドに縛られず自由に動いた時の方が確実に怖いストライカーになる。ベイルは良くも悪くも空気を読まないマイペース男だが、やはりC・ロナウドとの併用となると守備面の負担が増える。

 結局、問題はBBCにあるのではなく、C・ロナウド中心のサッカーにある。絶対的エースを外すべき時は、確実に近づきつつあるのだ。とはいえ、C・ロナウド自身、このまま終わるつもりは毛頭ないはずだ。なにせ、とことん負けず嫌いな男である。ここからシーズン終盤に向かって急激にパフォーマンスとゴール数を伸ばし、結局は批判を黙らせることになるかもしれない。

 ジダンも当面の間はそうなることを期待し、いや信じて背番号7をピッチに送り続けることになるのだろう。

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著者プロフィール

東京生まれの神奈川育ち。桐光学園高‐早稲田大学文学部卒。幼稚園のクラブでボールを蹴りはじめ、大学時代よりフットボールライターを志す。2006年よりバルセロナ在住。現在はサッカーを中心に欧州のスポーツ取材に奔走しつつ、執筆、翻訳活動を続けている。生涯現役を目標にプレーも継続。自身が立ち上げたバルセロナのフットサルチームは活動10周年を迎えた。

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