プロの誇りとアマチュア基準の狭間で 過渡期を感じさせたオールジャパン
千葉ジェッツの初優勝はオールジャパンの歴史を変える快挙にもなった 【加藤よしお】
今大会は賞金が前回の500万円から大きく増額され、優勝した千葉には2000万円が贈呈された。また、代々木第一体育館のコート上に四面の大型ビジョンが設置されるなど、観客を意識した演出も一つの変化だった。オールジャパンの主催は日本バスケットボール協会だが、会場の設営は14日、15日のオールスターウィークエンドに向けてBリーグと協力して進めた部分もあると、Bリーグ関係者が明かしていた。
一方で運営や日程に改善の余地があったことも否めない。過渡期の難しさを痛感した大会でもあった。
プロチーム初の栄冠に輝いた千葉
16−17シーズンは序盤戦で苦しみ、この大会の出場権が決まった11月末の段階では18チーム中7位にとどまっていた。しかしオールジャパンの本番ではBリーグ第7代表ながらリンク栃木ブレックス(第2代表)、シーホース三河(第3代表)を連破。決勝戦は昨年度のNBL王者でもある川崎ブレイブサンダース(第1代表)を88−66で下す快進撃を見せた。大敗した初出場からわずか5年で、日本の頂点に立った。
千葉の小野龍猛キャプテンはこう言う。「プロチームの優勝は本当に意味があると思うが、それを千葉ジェッツが成し遂げられた。このチームを誇りに思っていますし、すごく意味のある優勝だった」
集客やアリーナの熱という部分を見れば、千葉を筆頭にプロチームの努力はむしろ先んじている。ただし経済力や練習環境といった部分で、実業団系のクラブには一日の長があった。観客の入場料収入、地域のスポンサー収入を地道に確保し、そこを強化につなげるというのはプロのあるべき姿。そんな理想が結実した意味は大きい。
コートを見ると、まず日本代表ポイントガード・富樫勇樹の活躍が光った。彼は準々決勝・栃木戦で19得点、準決勝・三河戦が21得点、決勝・川崎戦は20得点とコンスタントにハイスコアを記録している。
富樫は攻撃の中心だが、守備面では身長167センチという物理的なハンデがある。しかし千葉はそこがまったく穴にならなかった。大野篤史ヘッドコーチ(HC)が「富樫選手がポストアップされない(オフェンスプレーヤーに体を密着されて面取りされない)ように、スイッチ(マークの受け渡し)することが徹底できるようになった」と説明するような連携を、チームでしっかり実行していた。特に準々決勝の栃木戦は相手を62得点に封じ「持ち味を全く出させず勝てたというのは、チームのディフェンスにとって自信になった」(富樫)という爽快な試合だった。
大阪が示したプロの貫録
ただ今大会はそのようなジャイアントキリングが起こらず、むしろBリーグ勢がプロの貫録を見せつける結果が続いた。
4日の2回戦は、大阪エヴェッサが青山学院大を89−36という強烈なスコアでたたきのめした。大阪の桶谷大HCは「勝ち負けもそうだけれど、僕らもプロである以上、大学生たちにもどこかしら『プロってここが違うな』と見せるのも仕事。彼らがもっとハングリーになろうと思えるようなプロでなければダメ」とプロの責任を説明する。
大阪は青山学院大のエース安藤周人(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ内定)を今野翔太が厳しいマークで完全に封じた。学生に対する鮮やかな“レッスン”だった。
「安藤くんもこれから代表級の選手になっていくと思うんですけれど、今の彼とプロの良いディフェンダーのどちらが強いか、ちゃんと肌で感じさせてあげた方が良いと僕は思っていた。安藤くんにとっても、今野に守られて良かったと思います」(桶谷HC)