羽生結弦「一歩一歩進めていると実感」 NHK杯出場の日本勢が一夜明け会見
NHK杯男女シングルを終え、羽生ら日本勢が一夜明け会見で大会を振り返った 【写真:アフロスポーツ】
今季のGPシリーズについて振り返った羽生は、「成長できた部分があり、課題となった部分も多々見つかった」と語り、来年の平昌五輪に向けて「一歩一歩進めている実感はあります」と収穫を口にした。また12月8日(現地時間)にフランス・マルセイユで開幕するGPファイナル、22日から大阪・東和薬品RACTABドームで開催される全日本選手権に向けては「身体面にかけて試される期間。この3連戦を健康な状態で1つ1つの試合で力を出せるようにしたい」と意気込みを語った。
一方、日本勢としては16大会連続でのGPファイナル進出を決めた宮原は「試合が終わってホッとはしていますけど、GPファイナルではもっと良い演技をしなければいけないと思うので、気持ちを切り替えて練習していきたい」と気を引き締める。
今季シニアデビューを果たした樋口新葉(日本橋女学館高)は、GPシリーズ2戦の戦いで「自分が思っていたより食いつけたかなと思う」と手応え。「このまま全日本で頑張って、(来年3月の)世界選手権に出られるようにしたい」と、さらなる目標を掲げた。
以下、一夜明け会見での日本人選手コメント。
羽生、新たな4回転は「来シーズンに向けて視野に」
今季のGPシリーズ2戦を戦い、成長と課題を口にした羽生 【写真:アフロスポーツ】
(手こずると思われた新しいプログラムの習得はわずか3戦で形になった。どういう練習アプローチをとっていたのか?)最初に4回転トウループと4回転サルコウを習得したときは、2シーズンまるまる使ってようやく安定したという印象が強いと思います。ただ、4回転ループに関しては、他の4回転と違って2種類の4回転のベースができてからの習得だったので、そこが安定の速さにつながっているかなと思いますし、回転の速さだったり、着地の衝撃だったりが、トリプルアクセルから4回転の差と、4回転から4回転のほうが少ないので、4回転トウループやサルコウを入れたときよりも早く感じられるのかもしれません。
(エキシビの練習で4回転ループのコンビネーションを試していたが)今日初めてやってみてできたので、練習で少しずつやっていって、平昌に向けて視野に含めてやっていければいいかなと思っています。(今新たに挑戦しようと思っているジャンプは)今回、公式練習でびっくりされた方もいると思いますが、最後のジャンプに4回転トウループやサルコウを入れる練習をしています。もちろん曲かけの練習で、最後にルッツを外して4回転を入れるのは難しいんですけど、練習で少しずつやっていって、来シーズンに向けても視野に入れていけたらいいなと思っています。
(食事に関しての意識は)栄養面に関しては注意するようにしています。このNHK杯から全日本選手権にかけてが、身体面にかけて試される期間だと思います。せっかくファイナル進出も決めることができたので、この3連戦を健康な状態で1つ1つの試合で力を出せるようにしたいと思います。
(4種類目の4回転に取り組んでいく予定は?)とりあえず左足のリスフラン関節を痛めたあと、一番負担がかからなかったのはループとルッツだったんです。ルッツは左足踏み切りですけど、フリップと違ってアウトサイドで踏み切るので、わりとかかとの方に乗れるんですね。だからかかとに乗るからこそ、リスフラン関節への負担が少ないので練習はしてきました。一昨シーズンのアイスショーの練習で、一回まぐれで降りたことがあるんですけど、それ以降はケガの心配もあってやっていなかった。今季のオフの段階ではステップアウトまではいったので、それを来シーズンに組み込むという話ではないですけど、一応視野には入れていけたらいいなと思います。
田中刑事(倉敷芸術科学大)、五輪へ「挑戦していきたい」
NHK杯で表彰台に上った田中刑事だが「まだまだ足りない」と話す 【写真:アフロスポーツ】
(大きい舞台でしっかり力を出し切れた要因は)今回、緊張感が他の試合と比べて多かったので、フリーを滑るまで緊張でどうしようという気持ちだったんですけど、リンクに立ったら、日本ということもあるのかもしれないですけど、演技しやすい雰囲気を作れたのは良かったと思います。変に身構えず、攻めていこうという気持ちでやりました。
(4回転サルコウを跳ぶことに迷いはなかった?)今季は4回転トウループも入れたかったんですけど、間に合わなくて挑戦もできていなかったので、サルコウ2本という決断に至りました。今回少しでも結果が出て、その決断は間違っていなかったんだと思いました。(サルコウは完全に自分のモノにした?)去年よりは確実に確率が上がったので、今年はその確率をさらに上げる練習ができています。ショートの段階でまだまだできるなと思って、それをフリーで修正できたので、普段の練習からその修正力をつけたいと思います。(確率を上げる練習とは?)一度フォームが崩れると、崩れたままになって、本番まで崩れたイメージを引きずることが多いので、そのイメージをリセットする作業をするようにしました。その作業が去年よりスムーズになっていると思います。
(点数については)自分の納得する点数が出せたんですけど、今回の羽生選手やネイサン・チェン選手(米国)のような点数を出すには、4回転もそうなんですけど、スケーティングなんかも伸ばさないといけないと感じたので、そのための強化をしていく必要があると感じました。設定する点数はないですけど、目標としては常に自己ベストを更新していくことです。
(表彰台に立って印象に残っていることは)国歌を聴けたのがよかったです。今回はユヅに向けられたものでしたけど(笑)。いつか自分の成績で聴きたいなと思いました。(羽生と一緒に表彰台に立つのは久しぶりだと思うが)なんか不思議でしたね。いつか一緒にこういう大きな舞台で戦って、まだまだ追いつかないなという気持ちもあるんですけど、こうして少しでも同じ舞台で、僕自身も結果を出せたし、これから食いついていけるように戦っていきたいです。(五輪への道も開けてきたと思うが)僕は挑んでいかないといけない立場。あと1年ちょっとしかないので、挑戦していきたいです。
日野龍樹(中京大)、羽生の言葉に「もうちょい待って」
羽生から「もっとこいや!」と言われた日野龍樹は「もうちょい待って」と控えめコメント 【写真:アフロスポーツ】
(一緒に戦っていく上で必要なことは)一つは経験と、もう一つは自分が持ち合わせている技が他の選手とは違ったので、なるべくもっと持ち物を増やして、次の大会に出られたらいいなと思います。
(羽生から「もっとこいや!」という愛の一言があったが)その質問が来るとは思っていました(苦笑)。でも僕は高校1年生でジュニアGPに初めて出たときも、出来はそんなに悪くなかったのに、全体のレベルの高さに跳ね返された。彼のように順風満帆に来てはいないので、「もうちょい待って」という感じです。ただ、気にかけてくれるのはありがたいです。(また3人が顔を合わせる大会が来月にあるが)全日本まででも自分を上げたいと思っていますし、そんなに毎回僕について彼が言うことはないと思うので、「頑張っているんだな」と思ってくれればいいなと思います。
(もっとこういう大会に出場したいという欲は出てきた?)もちろんあります。今回出られることになってすごく喜んでいたんですけど、フリーまで滑りきって、また出るときはもっと良い演技をしたいなと思いました。(踊る意識が高まったようだが)どうしてもこれまではジャンプに意識がいっていたんですけど、今年は特にすべての要素に意識を向けているので、少しずつですけどだいぶマシにはなってきたと思います。
(今の男子は4回転をたくさん入れる選手と、演技全体で勝負する選手とで分かれている。自身ではどちらに進んでいきたいと思う?)できれば前者でやっていきたいとは思いますが、焦ってあまりケガはしたくないので、全日本に向けていろいろなジャンプを試してみて、トウループにとらわれ過ぎていたかもしれないので、全日本でこんな感じでやっていくんだなというのが分かると思います。(目標やモチベーションはどこに置いている?)新しい技を習得したかったり、もっと大きな国際大会に出たかったり、出るだけではなく結果を残したかったり、たくさんありますけど、そういうモチベーションが途絶えたことは一度もないし、なかなか遠い道のりですけど、それに向けてあきらめたことは一度もありません。(全日本の結果次第では世界選手権も見えてくるが)理想と現実は別物であって、今の自分を現実的に見るとユニバーシアードが一番現実的だと思います。
(なかなか結果が出ない時期が続いたが)あまりに結果が出ないことで、こういう試合に出ることすら許されなかったので、まず出られたということはそれなりに上がってきたと思っています。こうやって上がってきているなら、これからも上がっていくと信じて、これまで以上に頑張っていきたいと思います。