最高の“ビッグ4”擁するウォリアーズ デュラント加入の代わりに犠牲にしたもの

杉浦大介

得点力に代わってディフェンスが犠牲に

「ディフェンスを向上させなければいけないことはみんな分かっている」とカーHC(右) 【Getty Images】

 もっとも、すべてが順風満帆というわけではない。序盤戦のウォリアーズにとって、ディフェンス面が不安材料になっている。

 平均108.6失点はリーグ25位、最近のNBAで重宝されるディフェンシブ・エフィシエンシー(守備効率を示す数値)105.6は20位。昨季のエフィシエンシーは100.9で4位タイ、ファイナル制覇を果たした一昨年は98.2で1位だったことを思い返せば、低下は気になるところではある。 

「私たちにとって最大のチャレンジは48分間にわたって緊張感を保つこと。相手を得点力で圧倒できると考えがちで、実際にできてしまう。ただ、それはプレーオフでの強豪相手には最善のレシピではない。ディフェンスを向上させなければいけないことはみんな分かっているよ」

 カーHCが述べる通り、好調時は手がつけられない勢いで得点するが、一気に膿を吐き出す場面も目につく。過去得点王4度のデュラントを獲得する代わりにハリソン・バーンズ、アンドリュー・ボーガットという守備に秀でた選手を引き止めなかったため、ディフェンスが犠牲にされている感もある。

 このままでは、キャブズ、クリッパーズといった得点力の高い強豪と対戦する際に不安が残るのは事実だ。しかし、その一方で、カーHCがこう語っているのも見逃せない。

「ウチの選手たちはスキルと才能に恵まれているから、いつも誰かが多くの得点を挙げてくれる。大事なのはミスをしないこと。攻撃は最大の防御。得点を挙げ、ターンオーバーしなければ、ディフェンスの助けにもなるんだ」

 上質なオフェンスこそが防御という考え方で、どこまで勝ち続けられるか。あるいは適応を進める過程で、ディフェンスも徐々に向上していくのか。長いシーズンの中で、それらの答えが見えてくることになるのだろう。

過去に例を見ないレベルの“ビッグ4”

 序盤戦での好材料は、これだけの注目を浴び続けながら、チーム全体が慌てて答えを出したがっているようには見えないことだ。

「まだ学んでいる最中。僕が学んでいる途中にもみんなはさらに向上するから、追いつくのには時間がかかる。ただ、良い方向に向かっているとは思う」

 デュラントはそう語っていたが、実際に今季のウォリアーズに焦りは感じられない。序盤戦から新人パトリック・マカウにも出場機会を与え、最善のローテーションを模索しながら、主力のプレー時間をコントロールしている。

 昨季はシーズン中にNBA記録の73勝を挙げながら、ファイナルでキャブズにまさかの逆転負け。最後の最後でスタミナ切れを味わい、学んだ部分もあるに違いない。今季の成否はプレーオフでのみ測られるだけに、徐々にペースを上げていけばいいという思いもあるのだろう。

 1990年代、シカゴ・ブルズはマイケル・ジョーダン、スコッティ・ピッペン、デニス・ロッドマンという3人のビッグネームを擁した。最近ではセルティックスがポール・ピアース、ケビン・ガーネット、レイ・アレンという“ビッグ3”に率いられ、08年にファイナルを制した。

 しかし、過去のNBAでも、オールNBAチームに入るレベルの選手が4人もそろった例はない。必然的に「ファイナル制覇以外は失敗」という十字架を背負ったウォリアーズは、“ビッグ4”結成1年目にどんな答えを出すのか。

 今後も取り囲むメディアは膨れ上がり、プレーオフが近づくにつれて、サーカスのような趣を帯びていくはず。そして、レブロン&キャブズとの3年連続の最終決戦が実現すれば、リーグ史上に残る注目を集めることは確実。その先にどんな結果が待っているのかは分わからない。ただ1つだけ確かなのは、ファンにとって、2016−17年は絶対に目が離せないシーズンになることだけである。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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