“勝ち組監督”4人の共通点とは? リーグ戦序盤 プレミア監督通信簿

寺沢薫

モウリーニョの評価は今後の舵取り次第?

マンチェスター・ユナイテッドを率いるモウリーニョの評価は芳しくない。OBのスコールズはまだ「アイデンティティーがない」と一刀両断 【写真:ロイター/アフロ】

 コンテと同じく開幕3連勝を飾りながら、その後にシティとのダービー、ワトフォード戦を続けて落とし、現在は7位につけるマンチェスター・ユナイテッドのジョゼ・モウリーニョも、評価は芳しくない。

 クラブOBのポール・スコールズは、新チームにまだ「アイデンティティーがない」と一刀両断。抱えている選手の質は申し分ないが、指揮官がベストなメンバー構成や戦い方を見いだせていない、というのがスコールズの考える要因だが、他の解説者やジャーナリストも異口同音だ。

「正しい調和を見つける代わりに、スーパースターたちをチームに押しこもうとしてしまった」『イブニング・スタンダード紙』という表現が言い得て妙か。たとえば不振のウェイン・ルーニーがトップ下で“ブレーキ”となり、ポール・ポグバのダイナミックな攻撃参加を邪魔していたチームの構造的問題を、モウリーニョがルーニーをベンチ送りにした第6節レスター戦(4−1)まで是正できなかったのがいい例だ。

 とはいえ「ルイ・ファン・ハール時代が尾を引いている」『メトロ紙』という同情的な見方もあり、前任者の退屈なチームと比べれば「ポゼッションのためのポゼッション」やバックパスが減り、シュート数と得点数が増えて「より大胆なチームになりつつある」『スカイスポーツ』との評もある。今後の舵取り次第で、一気に状況が変わる可能性はありそうだ。

CLとリーグ戦の両立に苦しむラニエリ

昨季の優勝監督ラニエリにはCLとの“二足のわらじ”をもう少し上手に履きこなすことが求められている 【写真:ロイター/アフロ】

 より悩みが深刻なのは、レスターのクラウディオ・ラニエリ監督かもしれない。奇跡の前年王者は、8節消化時点で降格圏と2ポイント差の13位と振るわない。

 初参戦のチャンピオンズリーグ(CL)では2連勝と好調だが、地元紙『レスター・マーキュリー』は「CLを優先するラニエリは正しいのか?」という見出しでラニエリ采配に疑問を呈し、「チェルシーとのアウェー戦で、昨季の年間最優秀選手(リヤド・マフレズ)とクラブ史上最高額の男(イスラム・スリマニ)を温存して、誰が幸せだろうか?」と、現地時間18日のCLコペンハーゲン戦を見据えたメンバーでチェルシーに0−3と敗れた直近の試合を揶揄(やゆ)した。同様にCL直前だった第6節のマンU戦でも、ジェイミー・バーディとマフレズをハーフタイムで下げて休ませ、1−4で大敗したのが布石だった。

 さらに同紙は、8節までに大量14失点の守備にもメスを入れ、エンゴロ・カンテのチェルシー移籍だけでなく、岡崎慎司を起用しないことで、中盤と前線のギャップが埋まらないことセットプレー時のマーキングが甘くなったことなどを問題提起し、「ラニエリは真のテストに直面している」と記事を結んでいる。

 本当の意味で指揮官の手腕が試されるのは、好調時よりもむしろ不調時だ。CL敗退で夢から覚めたときにプレミアの残留争いという重圧にさらされることがないよう、昨季の優勝監督には“二足のわらじ”をもう少し上手に履きこなすことが求められている。

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著者プロフィール

1984年、東京都生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』編集部を経て、株式会社フットメディア(http://www.footmedia.jp/)在籍時にはプレミアリーグなど海外サッカー中継を中心としたテレビ番組制作に携わりながら、ライター、編集者、翻訳者として活動。ライターとしては『Number』『フットボリスタ』『ワールドサッカーキング』などに寄稿する

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