閉ざされた世界への扉をこじ開けろ! U−20W杯出場の鍵は“コンパクト”

安藤隆人

4大会連続で準々決勝敗退のU−19日本

日本は4大会連続でU−20W杯出場を逃している。写真は南野拓実(左から2番目)ら14年ミャンマー大会の選手たち 【Getty Images】

 いつしか、U−20ワールドカップ(W杯)への扉はこんなにも重くなってしまっていた――。

 かつてU−20日本代表は1995年のワールドユース・カタール大会(2007年のカナダ大会からU−20W杯に名称変更)から、7大会連続で出場。99年のナイジェリア大会では、小野伸二や高原直泰、本山雅志、中田浩二、遠藤保仁らを擁して準優勝に輝くと、03年のUAE大会でベスト8、05年のオランダ大会、続くカナダ大会でもベスト16に入るなど、好成績を残してきた。

 しかし、08年にU−20W杯のアジア最終予選となるAFC U−19選手権・サウジアラビア大会の準々決勝で韓国に敗れ、ついに連続出場がストップ(※大会レギュレーションは、4チームずつに分かれた4つのグループの各上位2チームが決勝トーナメントに進み、準々決勝を勝利した4チームが翌年のU−20W杯出場権を獲得する。今回は来年のU−20W杯の開催国が韓国のため、韓国代表がベスト4に入ったときのみ、準々決勝で敗れた4チームがトーナメント方式で『5位代表決定戦』を行う形となっている)。これを皮切りに、10年の中国大会、12年のUAE大会、14年のミャンマー大会と、4大会連続で準々決勝敗退を喫し、U−20W杯への切符をつかみ取ることができなかった。

 世界を逃してから、実に10年の歳月が経とうとしている。そして、14日からはAFC U−19選手権バーレーン大会が開幕する。10年間、閉ざされていた世界への扉をこじ開けることができるのか。

積み上げ続けた実戦経験

 08年の敗退から5度目のチャレンジとなる今回のU−19日本代表を率いるのは、内山篤監督。かつてジュビロ磐田で指揮を執った内山監督は、前回のミャンマー大会をコーチとして経験。その後、監督に昇格する形で、今回の代表を指揮することとなった。

「去年の1次予選を終えてから、厳しい相手とやれている。本番までに拮抗(きっこう)したゲームをいかに経験できるか。ギリギリの戦いを経験していかないといけない。本大会に行けば、さらにいろいろなプレッシャーがかかってくるので、その中で何ができるか。そこが一番大事」

 内山監督はチームに必要な実戦経験を積ませるべく、今年に入ってから積極的に海外へ渡った。本番のシミュレーションを兼ねた3月のバーレーン遠征では、バーレーン、マリ、メキシコと対戦。5月には韓国で開催された水原JS杯に出場し、フランス、ブラジル、韓国とまみえた。6月には中国でパンダカップに出場し、クロアチア、チェコ、中国と対戦。6月27日から7月5日にかけては米国へ渡り、パナマ、コスタリカ、米国と戦った。さらに8月29日から9月8日にかけてはフランスとUAEに行き、それぞれのU−19代表とも試合を行っている。日本とは異なる環境で、強豪国との戦いを重ねることで、チームとしての一体感、個のレベルアップを図ってきたのだ。

生命線は「攻守においてコンパクトにやる」

「このチームの生命線は『攻守においてコンパクトにやる』こと」と語る内山監督 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 それも、すべてはアジアを突破するため。いよいよ、AFC U−19選手権が13日に開幕する。着実な準備を重ねてきたU−19日本代表の前には、アジアの強豪国がずらりと顔をそろえる。日本が入ったグループCは、日本以外すべてが中東勢という組み合わせとなった。初戦の相手はイエメン。そして、イラン戦、カタール戦と続く。

 イエメンは不気味な存在、イラン、カタールは間違いなく強敵だ。共に育成年代には力を入れており、アンダー世代の代表から若くしてA代表に食い込んでいる選手が多い。特にカタールは前回大会でアジア制覇を成し遂げるなど、若年層の台頭が目覚ましい。日本にとっては厳しいグループとなったが、内山監督はアジアを突破するために、あるコンセプトをチームの「生命線」と位置付け、選手たちに提示し続けるとともに、共通認識として浸透させてきた。

「このチームの生命線は『攻守においてコンパクトにやる』こと。おそらく中東勢などは、日本に対してオープンな試合にすることを狙ってくる。特にバーレーンの暑さなどで後半に間延びしてしまったら、より相手の良さを出させてしまう。そうならないように、われわれは常にコンパクトにして戦いたい。

 あとはボールを動かしながら相手をうまく揺さぶればボールウォッチャーになるので、早い展開をしながら、サイドで起点を作って、3人目の動きが入ってくるようなサッカーを展開したい。前回のチームを見ても、日本はオープンなゲームになると苦しくなる。だから、このチームが発足したときから、コンパクトにすることを大事にしながら、個の力を選んできました」

「オープンな展開」とは「対日本」の効果的な策として、中東のチームや韓国、北朝鮮などアジアの強国が仕掛けてくる手法だ。ロングボールやサイドチェンジを駆使して、日本の陣容を左右や縦に押し広げることで、セカンドボールを前向きに拾ったり、日本の特徴であるショートパスでの組み立てや、局面での数的優位を作らせないようにする。そして、自分たちの得意分野であるフィジカルとスピードで勝負するのだ。このやり方に日本はこれまで幾度も屈してきた。内山監督が指摘したように、前回大会もグループリーグ初戦の中国戦でオープンな展開に持ち込まれ、1−2で落とした。準々決勝の北朝鮮戦でも、同じように押し広げられ、前線でFWの南野拓実が完全に孤立。1−1の延長戦でも効果的なチャンスを作り切れず、PK戦の末に4−5で敗れた。

 そして、弟分であるU−16日本代表も9月に行われたAFC U−16選手権準決勝で、イラクを相手にコンパクトな中盤を維持できず、相手の強烈なカウンターの前に2−4で屈した。そうした相手の術中にはまらないためにも、日本はどんな状況でも中盤をコンパクトに保つことが要求される。

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著者プロフィール

1978年2月9日生まれ、岐阜県出身。5年半勤めていた銀行を辞め単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は35を超える。2013年5月から2014年5月まで週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!』を1年連載。2015年12月からNumberWebで『ユース教授のサッカージャーナル』を連載中。他多数媒体に寄稿し、全国の高校、大学で年10回近くの講演活動も行っている。本の著作・共同制作は12作、代表作は『走り続ける才能たち』(実業之日本社)、『15歳』、『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、『ムサシと武蔵』、『ドーハの歓喜』(4作とも徳間書店)。東海学生サッカーリーグ2部の名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター

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