閉ざされた世界への扉をこじ開けろ! U−20W杯出場の鍵は“コンパクト”

安藤隆人

守備の鍵はJリーグにも出場するCBコンビ

守備の鍵を握る中山雄太。柏のトップチームでフル出場を続けている 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 最後に、内山監督が「攻守においてコンパクトにやる」という生命線を維持することを共通理解に置いたチームの軸となる選手を紹介して、大会プレビューを閉じよう。

 守備の鍵を握るのが、柏レイソルでレギュラーを獲得している中山雄太とアビスパ福岡の冨安健洋だ。共にセンターバック(CB)だけでなくボランチもできる選手で、冨安のボランチ起用も考えられるが、現時点ではこの2人のCBコンビが最も安定する。185センチの冨安がボランチに入っても、CBには187センチで左利きの町田浩樹(鹿島アントラーズ)、186センチの板倉滉(川崎フロンターレ)がおり、高さという面では充実している。その分、スピードへの対応に不安があるだけに、中山のカバーリング能力が大きなポイントとなる。

 ボランチは神谷優太(湘南ベルマーレ)と原輝綺(市立船橋高)、市丸瑞希(ガンバ大阪)らの組み合わせが有力か。神谷は湘南でセットプレーを任されたり、精度の高いパスと献身的な守備を見せるなど大きく成長した。

「アジア(のチーム)は僕たち(のポジション)を広げようと蹴ってくるので、セカンドボールを拾ってどれだけ自分たちのボールにできるか。そこが一番の鍵なので、ボランチとしてそれをやりながら、周り(の力)を引き出せるかが、僕の仕事だと思っています」と、神谷は自分の役割と責任を自覚しており、攻守の要としてキープレーヤーとなる。

 原は2年生だった昨年に大ブレーク。クレバーな頭脳と予測力を誇り、スペースを埋めたり、着実なボール奪取で守備のバランスを整えられる選手だ。神谷との組み合わせは面白い。これまで代表歴が一切なかった選手だけに、今大会で臆することなくプレーできれば、さらに大化けする可能性を秘めている。

前線はエース小川の爆発に期待

絶対的エースとして君臨する小川航基の爆発に期待がかかる 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 攻撃の中核となるのが、左の堂安律(ガンバ大阪)と右の三好康児(川崎)の両サイドアタッカーだ。威力抜群の左足、鋭いターンからのドリブル突破が武器の堂安と、テクニックに秀でており、中盤でタメを作ったり、カットインから精度の高いラストプレーを見せる三好。個性の異なる2人がサイドに張るだけでなく、バイタルエリアに入り込んで、いかに2トップと関わることができるか。また、サイドバックを押し上げたり、ボランチの一角とトライアングルを形成できるかが、このチームの攻撃の要となる。このポジションには他にも岩崎悠人(京都橘高、京都サンガF.C.内定)、遠藤渓太(横浜F・マリノス)とドリブルを得意とする選手が控え、流れを変えるカードとして期待される。

 そして、前線にはU−19日本代表の絶対的エースとして君臨する小川航基(ジュビロ磐田)が構える。堂安、三好、そして2トップを組む岸本武流(セレッソ大阪)や中村駿太(柏レイソルU−18)らが、彼の得点力をどこまで引き出せるか。内山監督が「彼に言い続けているのは、『当然、ジュビロと役割は違う。ここではゴール前でのシーンをより増やすことが重要』と。中盤に下がってプレーすることを要求していない。よりゴールに近い位置で決定的な仕事をしてほしい」と語るように、小川がいかにゴール前で点を取る仕事に集中し切れるか。彼が決めれば、チームは盛り上がるだけに、今大会での爆発が期待される。

 選ばれし23名がチームの生命線を遵守しながら、個性を発揮し、重たい世界への扉をこじ開ける――。

 10月14日、イエメン戦でU−19日本代表の重要な決戦がいよいよ幕を開ける。

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著者プロフィール

1978年2月9日生まれ、岐阜県出身。5年半勤めていた銀行を辞め単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は35を超える。2013年5月から2014年5月まで週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!』を1年連載。2015年12月からNumberWebで『ユース教授のサッカージャーナル』を連載中。他多数媒体に寄稿し、全国の高校、大学で年10回近くの講演活動も行っている。本の著作・共同制作は12作、代表作は『走り続ける才能たち』(実業之日本社)、『15歳』、『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、『ムサシと武蔵』、『ドーハの歓喜』(4作とも徳間書店)。東海学生サッカーリーグ2部の名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター

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