財産となる苦さを味わったU−19代表 課題を見据え10年ぶりの世界を目指す
強豪国との3連戦は苦い結果に
内山監督も「まずやれない貴重なレベルの相手ばかり」と語る大会だったが…… 【佐藤博之】
5月18日から22日にかけて韓国・水原(スウォン)にて開催された「SUWON JS CUP」。韓国の伝説的英雄パク・チソン氏の財団が次世代育成のために主催しているというこの大会に招かれたU−19日本代表は、1年後に同じ韓国で行われるFIFA U−20 ワールドカップ(W杯)、そして4年後の日本で開かれる東京五輪を目指して活動する年代である。日本サッカー協会も大きな力を入れて海外遠征などを重ねてきたが、今回はとりわけ力の入る大会だった。何しろ対戦国は同年代のフランス、ブラジル、そして地元の韓国と「まずやれない貴重なレベルの相手ばかり」(内山篤監督)である。
加えて、欧州がオフシーズンに突入した直後で、初戦の相手となったフランスがリーグアンで試合出場を重ねているような選手を多数招集できていたことも価値があった。日本戦のスタメンには、チェルシーからレンヌへ期限付き移籍中のFWジェレミー・ボガ、パリ・サンジェルマンですでに出場機会を得ているMFクリストファー・ヌクンク、今季リヨンでトップデビューを果たした期待のMFリュカ・トゥザールなどの実力派が居並んだ。これでもまだベストではないのだが、間違いなく骨のある相手だった。
肩すかしに終わってしまったフランス戦
フランスとの試合は相手の「本気モード」と引き出すことができず 【佐藤博之】
ただ、長旅を経て韓国に来たフランスが疲労を見せて、早々に崩れた日本を侮ったからこそという印象はぬぐえず、むしろフランスの「本気モード」を引き出せないままに終わってしまった。「ハイレベルな国際経験を積むことでしか得られないものがある」(内山監督)という目的で臨んでいる大会なのだから、つまらない失点を序盤に喫したことで、フランスとタフな勝負を「し損なった」と言うべき試合だろう。
日本がうまく試合に入れず、フランス代表の偉丈夫たちを前に「全体に消極的で、怖がってしまっている選手が多かった」(内山監督)のは、国内のヤマザキナビスコカップなどの影響でベストメンバーが組めなかったからだという見方もある。確かに、国際経験の浅い選手が多数含まれていたことと序盤の不出来は無縁ではない。
ただ、それならば経験のある選手たちに心理面で周りを引っ張る仕事をしてもらいたかったところで、むしろリーダーシップの不在やチームワークの課題を感じさせる試合内容だった。「ビビって緊張している選手がいましたね」という話ではなく、そういう選手がいるなら何とか助けなければいけないし、チームのあるべき姿のはずだ。そこを「監督がやるだろう」としているようだと、個人の成長もない。
その意味で、ブラジルとの第2戦は内容面で大きな改善があった。試合開始から攻守でアグレッシブなプレーが目に付き、「(体が)一回りは大きいし、当てたときの感覚が違う」(DF柳貴博/FC東京)相手にも怯むことなく戦って、戦術的にもまとまりがあった。前半で2点を先行する流れとなり、後半はブラジルの「本気モード」を引き出した。
結局、選手たちが「後半のブラジルはまるで違った」と語った通りの圧力と個の仕掛けに押し切られて2失点。ドローという結末に満足感などあるはずもないが、それでもフランス戦とは異なるポジティブな感触はあった。「学んだことは本当に多かった」というDF町田浩樹(鹿島アントラーズ)の言葉には、率直な実感がこもっていた。