エースとして確立した田中将大の3年目 支配的な大黒柱へ、課題はイニング数

杉浦大介

「降りるイニングが早いと思う」

他球団のエース級と比較して物足りないのが投球回。7回を投げ切ったのは31戦中14戦と半分にも満たなかった 【Getty Images】

 メジャーでの過去3年を振り返っても、目を引く数字が並んでいる。3年間の通算では39勝16敗で、勝率7割9厘は勝ち負けの合計が通算50を超えているメジャーの現役投手の中ではベスト。今季も全先発機会中で23戦でチームが勝利したのだから、もう誰にも文句を言わせない。

 そして、田中に関して楽しみなのは、これだけの成績を残した後でも、まだ“メジャーでの完成形に達した”とは感じられないところだ。
 
「まだ全然できると思ってやっています。ちょっと(マウンドを)降りるイニングが早いと思うんですよね、本当にトップのピッチャーは100球以上投げる。チームがこれまでの僕の2年間を踏まえて大事に使ってくれているというのはあるんですけど。そこも関係なしに、投げていけるようになっていけば、(エリートレベルに)近づいていけるのかなと思います」

 1日の会見時。「メジャーの投手として自分にまだ伸びしろが残っていると思うか?」と問うと、田中からはそんな答えが返ってきた。

 確かに、課題を挙げるならその部分なのだろう。今季の31先発機会中、田中が7回を投げきったのは14戦のみ。サイ・ヤング賞のライバルとなった リック・ポーセロ(レッドソックス)が7月29日以降の13先発中11度、コリー・クルバー(インディアンス)が全32先発中19度 、クリス・セール(ホワイトソックス)が全31先発中23度、ジャスティン・バーランダー(タイガース)が33先発中20戦で少なくとも7イニングを投げたのと比べれば、やはり見劣りする。

“球界のエース”に成長するために――

 比較的早い回にマウンドを降りるケースが多いため、“支配的な大黒柱”というよりも、“試合を作るのが上手な投手”という印象を周囲に与えているのは事実。評価をさらに上げるためには、まずはこのイメージを変えるような投球をする必要がある。

 口で言うのは簡単でも、これを成し遂げるのは容易な作業ではない。ただ、投手としての成熟度を感じさせ、2〜3年目の間にメジャーの先発ピッチャーとして大きな成長を感じさせた田中なら、希望はあるのではないか。

 鳴り物入りでの米国デビューから早くも3年――。日本からやってきた“勝利の使者”は、米国でも同様の呼称が相応しい投手になった。そして、右ひじの不安がなくなり、課題をひとつずつ打ち消していった今季は、さらなる高みへの通過点。
 
 年齢的にも28歳と脂が乗り切る2017年は、田中にとってすべてが結実するシーズンになる予感も感じさせる。その先に、“ヤンキースのエース”から、“球界のエース”へと成長する可能性がうっすらと見えてくるようでもある。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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