メッシの強すぎるプレー意欲、休養は必要? アルゼンチン代表監督が危機的状況に

アルゼンチン代表監督が犯した深刻なミス

アトレティコ戦で負傷し、3〜4週間の離脱となったメッシ。これをアルゼンチン代表のバウサ監督が批判し、事が大きくなった 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

 リオネル・メッシが3〜4週間の離脱を強いられた右足付け根の負傷は、わずか数日のうちにバルセロナとアルゼンチン代表の関係を悪化させるとともに、同代表のエドガルド・バウサ監督を危機的状況に追い込むことになった。

 バウサは通常、公の場で発言する際には慎重に言葉を選ぶタイプである。しかし、今回ばかりは深刻なミスを犯した。メッシが9月21日(現地時間)のアトレティコ・マドリー戦で負ったけがの原因は彼を常に起用し続けるクラブであるとし、「バルセロナはメッシを十分にケアしていない」と批判してしまったのだ。

 アルゼンチンフットボール協会(AFA)の運営を代行する正常化委員会によって選出されたバウサは、これまでクラブチームの監督しか務めたことがなく、代表監督としてはまだワールドカップ予選を2試合指揮しただけだ。経験不足が招いた今回の失言により、彼はカタルーニャメディアの怒りを買うこととなった。大西洋の向こう側にて、くだんの発言が地元スポーツ紙の一面に怒りを込めて取り上げられたのだ。

 アルゼンチン代表がメッシを必要とし、彼の不在時にチームのパフォーマンスが落ちるのならば、当然ながらバルセロナにも同様のことが当てはまる。カタルーニャメディアはバウサに向けて当然のことを説明しつつ、これまでクラブがメッシを保護しようとしてきたことを実例を挙げて主張した。さらには最近までメッシが母国で厳しい批判の対象とされ、国民に受け入れられるようになるまで大いに苦労してきた傍らで、彼を支え、代表ではいまだ成し得ていないタイトル獲得の機会を与えてきたのはバルセロナであるとも訴えた。

常にプレーすることを望むメッシ

アルゼンチン代表のバウサ監督(右)は苦しい状況に追い込まれている 【写真:ロイター/アフロ】

 カタルーニャメディアのこうした反応に加え、AFAがとったリアクションもバウサを苦しい状況に追い込むことになった。バルセロナとの信頼関係が崩れ、今後メッシを代表に招集していく上で障害が生じることを避けるべく、AFA正常化委員会の責任者であるアルマンド・ペレスがバルセロナのジョセップ・マリア・バルトメウ会長に電話で謝罪してまで、事の沈静化に努めたからだ(この事実はクラブを通して速やかに公表された)。

 現状、バウサは代表監督を続けているが、ペレスが「不適切」と指摘した今回の失言は、ヘラルド・マルティーノやアレハンドロ・サベーラ、セルヒオ・バティスタら前任者たちが犯したことのない、重大なミスだった。だが彼の失言とは別に、メッシの負傷に際して議論されるべきテーマがもう1つある。

 バルセロナ、アルゼンチン代表を問わず、出場可能な全ての試合でプレーしたがる、メッシ本人の強すぎるプレー意欲である。

 パリでアーセナルを破った2006年のチャンピオンズリーグ決勝を観戦した人々の多くは、当時19歳のメッシがケガでプレーできなかった悔しさを滲ませ、ミックスゾーンに現れることなく、チームメートが繰り広げるお祭り騒ぎにもほとんど加わらなかったことを記憶しているはずだ。

 常にプレーすることを望むメッシは、たとえそれが消化試合であっても、途中交代を強いられるたびに監督に怒りをぶつけてきた。翌日の練習に姿を現さなかったこともある。

1/2ページ

著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント