オシムさんと“阿部ちゃん”の師弟関係 ライター島崎が語るJリーグの魅力(3)
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06年にJ1優勝を果たした浦和の壮麗な陣容
06年シーズンのレッズは、J1最終節でガンバ大阪を下して悲願のJリーグ制覇を達成 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】
06年当時の浦和はギド・ブッフバルト監督に率いられた精鋭チームでした。1トップは元ブラジル代表の“大砲”ワシントン、ダブルトップ下には稀代のプレーメーカーであるロブソン・ポンテ、さまざまな意味でチームのレジェンドである山田暢久が居並び、ボランチには“天才”小野伸二(北海道コンサドーレ札幌)、あるいは“水を運ぶ”鈴木啓太と、現在の日本代表キャプテン・長谷部誠(フランクフルト/ドイツ)が双璧を成します。そしてサイドには三都主アレサンドロと平川忠亮の“槍”が立ち、バックラインは田中マルクス闘莉王(名古屋グランパス)、ネネ、坪井慶介(湘南ベルマーレ )が鎮座。そして最後尾のGKは都築龍太、もしくは“山神様”山岸範宏(モンテディオ山形)という陣容でした。
うーん、確かにこの陣容は壮麗です。しかもベンチには細貝萌(シュツットガルト/ドイツ)、永井雄一郎(ザスパクサツ群馬)、相馬崇人(ヴィッセル神戸)、岡野雅行らが控えているんですよ。この強力布陣で戦った06年シーズンのレッズは、J1最終節でガンバ大阪を下して悲願のJリーグ制覇を達成します。今思い出しても、あの時の埼玉スタジアムの荘厳な雰囲気は素晴らしかったなぁ。でも、今回はそのお話ではありません。
06年シーズンの浦和のJリーグ成績は22勝6分け6敗で勝ち点72でした。その中で、僕が最も思い出深い一戦として挙げたいゲームは06年5月3日のJ1第11節、フクダ電子アリーナでのジェフユナイテッド千葉vs.浦和の一戦です。
衝撃的なチームだったオシムさん率いるジェフ
オシム監督が率いたジェフの「すさまじき攻守転換の嵐」には衝撃を受けた 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】
いやー、オシムさんが率いたジェフは本当に衝撃的なチームでした。このチームを端的に形容するならば、「すさまじき攻守転換の嵐」です。攻撃から守備、守備から攻撃への移行速度が尋常ではありません。自陣でボールを奪取すると、GK以外のフィードルプレーヤー全員が敵陣へ殺到しますし、逆に相手にボールを持たれると複数の選手がボールホルダーへ猛アプローチします。
フクダ電子アリーナの記者席で取材していた僕は、ジェフの激しい攻守転換スピードと状況判断の鋭さに思考が追い付かず、「あっ、あっ、わっ、うっ」などと感嘆符しか発せない状況に陥りました。惜しみない労力、絶え間ない連動はチームスポーツの原点を感じさせるのですが、その基本に忠実な姿勢が逆に新鮮な風を巻き起こす。まさに当時のジェフはJリーグ史上に燦然(さんぜん)と輝くエポックメーキングなチームでした。
06年5月3日。試合開始1分に羽生直剛選手(FC東京)が放ったシュートをGK山岸が右足一本でセーブした瞬間に、レッズの苦闘を予見しました。その後もジェフの強烈なカウンターアタックとすさまじいプレス&チェイスに晒されたわがアウェーチームは防戦一方となります。そして73分、巻誠一郎選手(ロアッソ熊本)の強烈なポスト直撃シュートが決まってジェフが先制。ごう音鳴り響く中ですから聞こえるはずもないのに、僕の耳の奥底には巻選手のシュートがポストに当たった時の「コン!」という音がいまだに残っているんですよね。まあ、気のせいなんですが……。
そして最後は、89分にバックライン裏を突いた中島浩司選手が右足シュートを突き刺してダメ押しの2点目をゲット。これでジェフが“風雲昇り龍”の勢いだったレッズの鼻っ柱を折る格好となりました。この試合後の記者会見でオシムさんが、内外のプレッシャーを浴びながらタイトル争いを繰り広げるレッズの境遇を指して、「浦和の敵は浦和」と述べたセリフはオシム語録として有名にもなりました。