大谷、古巣帰還の一戦で両軍ファンの逆鱗に触れた「まさかの敬遠」 ブーイングとエ軍ファンの思い
古巣・エンゼルスとの対戦で、初回の打席に向かう大谷翔平(ドジャース)。両軍のファンから拍手が送られた 【写真は共同】
9月3日(現地時間、以下同)の試合で大谷翔平(ドジャース)が初回の打席に向かうと、揃って立ち上がり、温かい拍手を送った。
延長十回、ドジャースが1点を勝ち越し、なおも2死二塁で大谷が打席に向かうと、エンゼルスは敬遠を選択。大谷がバットを置くと、怒号混じりの凄まじいブーイングが飛び交った。
水と油であるのはずの両軍ファンが並んで声を上げるさまは、シュールな光景だった。
「翔平が打って、エンゼルスが勝つのが理想」と話す、エンゼルス時代の大谷のユニホームを着たファンに会った。
「負けても翔平が打ってくれれば、それでいいかな」
ドジャースは「大嫌い」というファンがいた。
「でも、翔平の50-50は見てみたい。翔平がプレーオフに出て活躍する姿を見てみたい。優勝して喜ぶ姿も見てみたい」
矛盾しているが、エンゼルスよりも大谷のほうが上位にくる。そんなファンがいることを大谷に伝えてみると、「そう思ってくれているファンの方がいるというのはすごくうれしい」と言って、続けた。
「エンゼルスのファンには感謝しかない。ここで今年もプレーできたというのは、よかったんじゃないかなと。打つ、打たない、もちろん打てればいいですけど、(エンゼル・スタジアムで)プレーできたことが特別」
珍しく大谷の顔が紅潮していた。
※リンク先は外部サイトの場合があります
ファンが愛想をつかすエンゼルスの采配
9月4日の試合前、エンゼルスの関係者と話す大谷翔平 【写真は共同】
2000年オフ、アレックス・ロドリゲスはマリナーズのオファーを蹴り、レンジャーズから提示された2億5200万ドルという破格の契約を選んだ。迎えた翌年、初めてシアトルでプレーしたときは、球場全体にブーイングが飛び交い、偽札がばらまかれた。「お前は、俺たちを裏切って金を選んだ」。強烈な当てつけだった。
現象だけ切り取れば、大谷も同じである。ドジャースが提示した条件は、エンゼルスには届かないものだった。
「でも、翔平はプレーオフでプレーしたかった。ここにいたらそれは叶わなかった」と別のエンゼルスファン。
「だから、仕方がない。もう彼は十分、エンゼルスに貢献してくれた」
シリーズ初戦、エンゼルスを延長で下したドジャースは、またプレーオフに一歩近づいた。一方でエンゼルスのシーズンは、とうの昔に終わっている。大谷が残留したところで、結果はさほど変わらなかったはず。
「あんな選手を、再建の道筋も見えないチームに縛り付けておくのは、残酷すぎる」とさらに別のファン。
「翔平はいま、嬉々としてプレーしているように見える。これで良かったんだと思う」
裏を返せば、エンゼルスに愛想をつかしているとも受け取れる。実際、エンゼルスファンのチーム離れを肌で感じた。
「翔平がいなくなってから、あまりエンゼルスの試合を見なくなった」とある女性ファン。
「球場に行く回数も減った。今回はチケットが売り出されたときに買ったけど」
負けていることだけが、球場から足が遠のいた理由ではないのではないか。敬遠の場面に話を戻すと、エンゼルスのロン・ワシントン監督は、あの選択をする必要があったのか。
「翔平を歩かせたあと、ムーキー(・ベッツ)に内野ゴロを打たせてゲッツーを取れれば、1点差で裏の攻撃を迎えられる」
2アウトだったじゃん、というツッコミはさておき、勝ったところで、エンゼルスの順位がいまさら、どうにかなるわけではない。それなら、ファンが見たいものを見せるという考えはなかったのか。最後まで残っていた誰もが、エンゼルスの勝利以上に、大谷の打席を待っていたのである。