西武・山川穂高「三冠王を目標に」 天性の本塁打アーチストが語る夢
「三冠王を目標に」と語る山川 【写真=高塩隆】
外角低めに沈むチェンジアップを巧みにとらえた打球は左翼席へ。低い弾道ながらスタンドインさせられるのは、まさにアーチストならではだ。9月9日、千葉ロッテ戦(西武プリンス)の2回、山川が放った一撃はプロ初の2ケタ本塁打。さらに貴重な先制2ランともなり、同級生の先発・菊池雄星を強力援護した。試合は8対1と完勝。菊池とともにお立ち台に上がり、最高の笑顔を見せたが、開幕当初からよくここまで盛り返したとも思う。
開幕1軍も結果を出せずに2軍へ
昨年も開幕1軍だったんですけど、そのときは試合に出ないまま2軍落ちしましたから。それに比べると今年はちゃんと打席を与えてもらえて。自分が打てないから2軍へ落ちた。それをしっかりと受け止めることができました。とにかく打てばいい。すぐに気持ちを切り替えて、2軍で三冠王になろう、と。結局、2軍でいまは規定打席を割ってしまいましたが、それを達成できましたから(64試合、打率3割3分3厘、22本塁打、64打点)。
――1年目の夏場、『週刊ベースボール』が行ったインタビューで「2軍で圧倒的な成績を残して、自信を持っていかないとつぶされる」と1軍の印象について語っていましたが、その気持ちは変わらない?
そうですね。2軍で一緒にプレーしていた同世代や年下の選手でも当然ながら1軍でプレーすると成績は下がります。例えば2軍で2割5分打っていたとしたら、1軍では1割5分くらいに。実際、いまの僕が2軍で打率3割3分3厘でしたけど、1軍では2割7分4厘ですから。それくらい投手のレベルも違う。それに1軍では打てなかったら2軍に落ちるというプレッシャーもあります。
――冒頭、2軍で三冠を取る気持ちで、と言っていましたが、ただ打つではなく1軍を見据えてという考えは持っていましたか。
はい。たとえば初球の入り球を一発でホームランにしよう、と。やっぱり1軍でも初球、2球目のストライクを取りにくる球が一番甘くなる傾向がありますから。だから、2軍ではそれを絶対にミスショットしないようにと強く思って、打席に立っていましたね。
――キャンプ前に「1、2軍で合わせて30本塁打したい」と目標を立てていました。9月22日時点で、1軍で14本、2軍で22本ですから計36本とその数字はクリアしました。
1軍で最低2ケタ本塁打は達成したかったので、それは良かったです。いまの打席数の中で考えれば、本塁打を打つ確率としては良いほうかなと思いますね。
――パ・リーグの本塁打数上位3人の本塁打率(1本塁打あたりに要する打数)を見ると、1位の北海道日本ハム・レアードが13.68(打数520、本塁打38)、2位の西武・メヒアが14.20(同497、同35)、3位の東北楽天・ウィーラーが19.16(同479、同25)で、さらに参考までに日本ハム・大谷翔平は14.09(同310、同22)。山川選手は8.86(同124、同14)と大きく数字を上回っています。
とにかく自分のリズムで、自分のスイングを心掛けた結果です。特に打席で右方向を狙うこともありません。基本的には自分のポイントでしっかりと振り抜く。タイミングよく、ドンピシャで当たれば僕の打ち方だとレフト方向へ飛びますし、少し遅れれば右方向へ。打球方向は結果論ですね。
――これまで手応えのあった本塁打は?
例えばロッテ・涌井(秀章)さんから打った2本目(8月21日の第8号、西武プリンス)。追い込まれてからでしたし、アウトコースいっぱい147キロの直球をしっかりとらえることができました。でも一番理想の形、タイミングでレフトへ打てたのはファームでした。
――理想の打ち方を1軍で数多く発揮できれば自然と本塁打数は増えていく。
そうですね。それに僕は相手投手をあまり考えないんです。いまは初対戦の投手が多いですし、データうんぬんはそんなに関係ないと思っているので。それよりも、自分のフォーム。相手はずらそうとしてくるんですけど、それは絶対に嫌。ずらされないためにはタイミングが大事でしょう。いろいろな投げ方の投手がいて、いろいろなボールが来ます。だけど真っすぐが来ようが、フォークが来ようが、スライダーが来ようが、タイミングが合っていれば自分のスイングができますから。中村(剛也)さんは基本的にずれないのですごい。打っているときのフォームが全部一緒ですから。だから、中村さんが理想なんです。