水谷「日本中を熱くさせたかった」 卓球男子団体、銀メダル後コメント

スポーツナビ

日本の男子卓球団体で初となるメダルは銀。(左から)水谷、丹羽、吉村は笑顔で表彰台に立った 【Getty Images】

 リオデジャネイロ五輪の卓球競技は日本時間18日、男子団体戦の決勝が行われ、日本は中国に1−3で敗れた。この結果、日本は卓球の男子団体では初となる銀メダルを獲得した。

 敗れた日本だが、“絶対王者”中国を相手に大健闘した。第1試合では丹羽孝希(明治大)が今大会のシングルスで優勝した馬龍と対戦し、ストレートでこの試合を落とす。続くエース・水谷隼(ビーコン・ラボ)は世界ランキング3位の許キンをフルゲームの末に下し、大金星を挙げた。丹羽、吉村真晴(名古屋ダイハツ)がペアを組んだダブルスも勝利はならなかったが、1ゲームを奪い見せ場をつくる。しかし、命運を託された4番手の吉村は馬龍から1ゲームも奪えずに敗退した。

 以下、水谷、丹羽、吉村のコメント。

水谷、金星は「メダル以上の価値があった」

決勝の大舞台で、過去一度も勝ったことのない許キンを下した水谷 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

(銀メダルの感想は?)シングルスで銅メダルを獲得できたこともそうですけれど、この五輪は本当に調子が良くて、毎日良いパフォーマンスができていました。今日は絶対に中国に勝てるんじゃないかという自信もあったので、負けて本当に悔しいです。

(シングルスの銅よりも良い色のメダルだが、それでも悔しい?)うーん……複雑な気持ちではあるんです。僕自身は勝てたのに、チームとしては負けてしまったという形ですから。最後、何とか5番まで回してほしかった、勝っても負けても5番のところで白黒付けたかったという気持ちはあります。

(自身の最終ゲームは7−10からの追い上げだったが)1、2ゲーム目を苦しみながらも取ることができて、最高のスタートが切れました。でも3、4ゲーム目は相手が吹っ切れているということをすごく感じていました。5ゲーム目はかなり余裕を持たれてしまって、いつも僕が逆転負けをするパターンと同じ展開になってしまって。でも唯一違ったのは、僕が最後まで諦めなかったことだと思います。

(逆転されて7−10となったときは)目の前の1本を取ることしか考えていなかったですね。8−10になれば僕のサービスですし、勝つチャンスはすごくあると思っていました。10−10になれば相手は緊張でガチガチになると思っていたので、そこまで何とか持っていきたいという気持ちでした。

(2、3月の世界選手権の団体戦で中国と対戦したときとは、試合内容がまるで違ったが?)この半年間でそれだけ自分が成長できたと思います。3月に行われたカタールオープンではゲームオール、10−4とリードしながらの大逆転負けをしましたが、今回は逆に7−10から逆転することができました。そういうのも含めて、いろいろな思いがこみ上げて来ましたね。今日戦った(中国の)3人とは、10年くらい前のアジア選手権でも決勝戦で戦っています(編注:2009年のアジア選手権)。日本が2−1でリードして、僕が4番で許キン選手とやりましたが、そのときもゲームオール、10−7でリードしながら大逆転をされて、日本が優勝を逃してしまった苦い思い出があります。そういった昔の思い出がこみ上げてきました。

(“ビッグ4”と呼ばれる中国選手に勝った意義をどう考える?)それはものすごく、メダルよりも大きい勝利かもしれないですね。“ビッグ4”と言われている4人に、過去0勝40敗くらいしています。この10何年間、一度も勝ったことがありませんでした。この五輪という最高の舞台の、しかも決勝戦で勝てたということは、これからのことを考えると、メダル以上の価値があったのではないかと思います。

(マッチポイントの場面は何を考えていた?)彼からマッチポイントを取ったことは、(過去の対戦で)10−7になった時も、10−4になった時もそうでしたけれど、全部足したら9ポイントくらいありました。そのときは「勝てるんじゃないか」という油断があったりしましたけれど、今日は相手が絶対にこの場面で何か仕掛けてくるから、自分はそれを狙っていくんだという強い気持ちで3球目に備えていました。

(ロンドン五輪後に補助剤の不正使用を告発したことは結果に結びついている?)補助剤自体は卓球界から全くなくなっていないし、ロンドンのときと何も変わっていないと思います。でも自分自身が受け入れることができたというか、何を言っても今のところ変わる見込みがないということを受け入れて、技術と戦術、いろいろな心技体を鍛えることにしました。現状は何も変わっていないですね。

(6月の荻村杯で馬龍に負けたときはいつも「自信がない」と言っていたが、この1勝でガラッと変わる?)今回(シングルスの準決勝で)馬龍とすごく良い戦いができました。点数だけではなく内容も良かったと思いますし、一昨日、(団体戦の準決勝で)ドイツのティモ・ボルに勝ったときも、対戦成績1勝15敗の相手に勝つことができました。自分の中ではリオに来てからも成長している、さらに自分が強くなっていることを日々感じていました。そしてこうやって、決勝という舞台で中国選手を破ることができて……。メダルとは別に、中国選手を決勝で破るというのがひとつの夢でもあったのですが、今回その目標をかなえることができました。

シングルスで絶対に2勝する――水谷はその決意を胸に、団体戦を勝ち上がってきた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

(日本では男子の卓球への注目が高まっているが、実感することはあった?)もちろんネットでニュースになっていることは分かっていましたし、それはすごくモチベーションになりましたね。もっともっと素晴らしいパフォーマンスを見せて、日本中を熱くさせようという気持ちはもう……途中からはそのために頑張っていたというか、自分の結果よりもとにかく最高のパフォーマンスをして、卓球の魅力を伝えたかったというのはあります。

(ツイッターのフォロワー数も増えたが?)倍くらいになりましたね。2万人くらいから4万人くらいに。メッセージとかもすごくいただいて、最初の方は全部返していたんですけれど、もう追い付かなくなってしまって(苦笑)。帰国する飛行機や待ち時間に全部返したいと思います。

(大会を通じて日本チームの良かった点は?)個々に自分たちの役割をみんなそれぞれ分かっていたことだと思います。僕はシングルスで絶対に2勝することで、彼らはダブルスで何とか1勝すること。その役割をしっかり果たすことができて、それが銀メダルという素晴らしい結果に結び付いたと思います。

(中国に勝つとしたらどれくらい先の未来か?)すごく近いかなと思いますよ。実際、馬龍とやって許キンとやって、五輪では近いかなという気がします。やっぱり技術的なこと、肉体的な部分ではまだまだ中国の方が鍛えられているなというのは試合をしながらも感じます。でも五輪という舞台はメンタルがものすごく大事だと思うし、メンタルという部分で僕は誰よりも強いものを持っているという自負があるので、そこで今回はこういう結果になったと思います。(4年後の金メダルは)今日僕が勝ったことで「あるな」と。明確に見えてきた気がします。

(日本チーム全体のレベルアップは感じた?)まだまだ日本全体で強くなっていかないといけないと思います。もっともっと僕を脅かすような選手がたくさん出てきてほしいですし、僕が2点を落としても他の国に勝てるようなチームになっていかないといけないと思います。今回、(丹羽と吉村は)団体戦のシングルスであまり良い結果を残すことができませんでしたが、彼ら自身も今回はダブルスがキーと分かっていたと思います。シングルスよりもどちらかといえばダブルスを優先した練習が多かったので、その役割を彼らが果たしてくれたのは良かったとは思っています。ただ、東京五輪で金を取るためには、もっともっとシングルスのレベルアップをしていかなければいけないと思います。

(この後はゆっくりできる?)僕自身は、まだ五輪は終わっていないと思っていますし、日本に帰ってからできることもたくさんあると思います。自分にできることがあれば、いろいろと露出して伝えていきたいです。

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