フェデラーvs世界772位、夢物語が実現 全英で話題を呼んだ「テニス界の奇跡」
25歳コーチがたどり着いた夢舞台
世界772位のウィリス(左)がウィンブルドンのセンターコートでフェデラーと対戦。絵に描いたような夢物語が実現した 【写真は共同】
この日のハイライトは、センターコートに登場したロジャー・フェデラー(スイス)とマーカス・ウィリス(イギリス)の第3試合だ。ウィリスは地元イギリスの小都市ウォーリックにあるテニスクラブでコーチとして働く25歳。世界ランクは772位で、予選出場の推薦枠をめぐる国内プレーオフの3試合を失セット0で突破し、予選1回戦で世界ランク99位の杉田祐一(三菱電機)を破ったのが対トップ100相手の初勝利。予選3試合を突破して本戦初出場を果たし、リカルド・ベランキス(リトアニア)との1回戦がツアーレベルでは初めての試合。ここで初勝利を飾るという初物ずくめ。夢の舞台ウィンブルドンのセンターコートでフェデラーと対戦するという、まさに絵に描いたような夢物語が大会に花を添えた。
センターコートは満員、記者席も地元記者を中心にすし詰め状態の中で試合がスタート。一味違った緊張感が漂って、ぎこちない立ち上がりになったのは仕方ないだろう、第1セットは両者ともにファーストサーブが50%を切る内容だったが、フェデラーが24分、6−0で奪った。
どうなることかと不安がざわめく中、ウィリスも徐々に落ち着きを取り戻していった。第2セットの第2ゲームで初めてサービスをキープすると、会場はまるで勝ったかのような大騒ぎ。0−6、3−6、4−6でストレート負けを喫したが、雨にたたられた第3日に明るい話題を振りまいたことは確かだった。
普段はテニスコーチを務める25歳の快挙は、雨が降りしきるウィンブルドンに明るい話題となった 【Getty Images】
地方都市のテニスコーチが、ウィブルドンのセンターコートでフェデラーと対戦する――まさに現代の奇跡と言っていいだろう。
脇腹痛の錦織、練習でも精彩を欠く
一方の錦織は、午前11時からの練習が雨のためにできず、雨が上がった12時半からマイケル・チャン、ダンテ・ボッティーニの2人のコーチと軽く打ち合った。1回戦で手当てを受けた脇腹痛が心配されるが、この日は軽いボレー練習の後に、サーブ練習もごく軽目に5分ほど打ちこんだだけ。再び雨足が強くなったところで早々に切り上げた。
試合前ということがあったにしても、試合開始が危ぶまれる天候の中、隣のコートでぎりぎりまで練習を続けるアンディ・マリー(イギリス)らとは対照的に精彩を欠いた。天の恵みの休養日となればいいのだが……。
(文:武田薫)
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