ダニエル太郎、善戦も腹痛に泣く ウィンブルドン初勝利はお預けに

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逆転劇も期待されたダニエルだが……

善戦したダニエル太郎だが、ウィンブルドン初勝利はお預けとなった 【写真:アフロ】

 現地時間28日に行われたウィンブルドン第2日は、快晴のち曇りから雨という典型的な“ウィンブルドン気候”。前日に1回戦を突破した錦織圭(日清食品)は、コーチのマイケル・チャンを相手に、午前11時から1時間足らずの軽い練習で切り上げた。前哨戦から引きずっている脇腹の痛みを気にする仕草も見せたが、表情は明るかった。2回戦の対戦相手、ジュリアン・ベネトー(フランス)とは過去4度対戦、最近は3連勝している相手だけに、気持ちは座っているのだろう。なるようにしかならない、そんな心境かもしれない。

 この日の日本勢は、男女1人ずつ登場した。ウィンブルドン本戦初出場のダニエル太郎(エイブル)は、自ら「粘りが身上」というプレーでかつてトップ10に届いたフアン・モナコ(アルゼンチン)を追い詰めた。ともにクレーコート巧者。立ち上がりから長いラリーの応酬になり、芝の試合とは思えない我慢比べの流れ。第1セットはダニエルが第5ゲームを先にブレークした。しかし、第8ゲームで打ち負けて追いつかれ、第12ゲームのセットポイントではネットに嫌われ先手を許した。

 ダニエルのグランドスラム大会出場はこれが5大会目。5セットマッチも2試合経験した23歳は身も気持ちもフレッシュだ。第2セット、先にブレークされ追いすがる展開で辛抱に辛抱を重ね、第9ゲームをブレーク。5−4でリードの第10ゲームでは2度のデュースに持ち込まれる苦しい場面があったが、打ち合いからフォアハンドのウイナーを決めてセットオールに持ち込んだ。

 父親が米国人、母親が日本人。抜群のスタイルで女性ファンが多いが、ファッションにはまったく無関心で、好きな音楽は70年代ロックのレッド・ツェッペリン、好きな俳優はウディ・アレンと実に渋い趣味を持つ。テニス観も「フィジカルは25歳になるまでにできればいいと思っている」と至って大陸的で、全仏オープンの後も、芝に備えることなく、得意なクレーコートのチャレンジャー2大会を回った。

 いわゆる「Nothing to lose(負けてもともと)」とは一味違う、ゆったりしたプレーの選手だけに、この日の試合でも5セットをフルに使った逆転劇を期待したが、そう思い通りにはいかなかった。第3セットを落とし、ここから挽回に出るかと思われた第4セットの途中で、主審にトレーナーを要求。

「圭さんとは違う、ただの内科的な腹痛です。水を取り過ぎたんだと思います。食事とか水分補給にはずいぶん気をつけていますけど、特に(イギリスでは)給水の配分が難しい……今日負けたのは、ですから、芝のせいではありません」

 第4セットは力が入らず2−6。ウィンブルドン初勝利はお預けになった。

日比野の1回戦は順延に

元世界9位の実力者に積極的なプレーを見せた日比野菜緒 【写真:アフロ】

 日本勢のもう1人、日比野菜緒(フリー)が第32シードのアンドレア・ペトコビッチ(ドイツ)を慌てさせたのは、ダニエルが引き揚げた17番コートの第2試合。ペトコビッチは、いまでこそランキングを世界38位まで落としたが、2011年にはウィンブルドンを除くメジャー3大会でベスト8に進んで世界9位まで駆け上がった、ツアー通算6勝の実力者。

 芝が苦手なのは確かだが、さらにこの日は風も強かった。試合の立ち上がり、ペトコビッチの集中力が整う前に日比野が攻めた。第1セットを先取し、第2セットは第5ゲームを先にブレークされたものの、第8ゲームをブレークバック。第10ゲーム、相手のサービスゲームながらデュースに持ち込んで勝利まであと2ポイントに迫ったが、ここで1ポイントが取れなかった。この場面でウイナーを打ち込むペトコビッチとの経験の差とも言えるだろう。第11ゲームをブレークされセットタイ。追いつかれた側の気持ちの落差は大きい。ファイナルセット、一気に2ブレークダウンの4−0まで持っていかれ、どうにか1ゲームを奪い返して1−5とした第7ゲームの途中で、雨によって中断、順延となった。

 この日は雨で30試合が翌日に持ち越されたが、男子はボトムハーフ、女子はトップハーフが戦われた。男子では第2シードの地元、アンディ・マリー(イギリス)、第4シードのスタン・ワウリンカ(スイス)が、第7シードのリシャール・ガスケ、ジョーウィルフリード・ツォンガ(ともにフランス)、フアンマルティン・デルポトロ(アルゼンチン)らとともに順当勝ち。女子も第1シードのセリーナ・ウィリアムズ(米国)が危なげなくストレート勝ち。第13シードで最近好調のスベトラーナ・クズネツォワ(ロシア)がかつて世界ランキングトップのキャロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)をストレートで退けた。

(文:武田薫)


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