記録達成後、チームメートと機内で乾杯 イチロー、次のターゲットは3000安打
ピート・ローズの安打数を抜き、ベンチに戻るイチローを出迎えるボンズコーチ(左端)らチームメート 【Getty Images】
「試合が終ってから落ち着いてチームだけになれる最初の時間だったから」
それは、サンディエゴのペトコ・パークでイチローが日米通算ながらピート・ローズのメジャー通算最多安打記録(4256安打)に並び、超えた15日(現地時間)の試合後のことだが、その計画は断念せざるをえなかった。
「バスの中では飲み物が用意できないって言われて、そもそも空港までの距離が短いし」
ペトコ・パークから球場までは10分ちょっと。せっかくの機会が慌ただしくなるのは誰も望まず、早々に次の選択肢に舵を切ったプラードは、ドン・マッティングリー監督に許可を求めた。
「イチローが打ったんだ。飛行機の中でシャンパンで乾杯してもいいか」
監督がそれを拒否する理由などなかった。
「もちろんだ」
サンディエゴからマイアミへ向かう機中、安定高度に達すると各選手のグラスにシャンパンが注がれた。
「みんな、手元に渡ったか」
立ち上がったプラードは、確認してからグラスを掲げた。
「歴史の一部に関われたことを誇りに」
「マギーがサプライズで日本酒を用意してくれて、粋な計らいですよね。みんなで乾杯(しました)」
あのとき、そう話したイチローは、さらにうれしそうに言っている。
「(ディー・)ゴードンなんかは、お酒飲まないのに飲んでくれて」
今回、そのマギーもゴードン(薬物違反で出場停止中)もいなかったが、ベテランのプラードが仕切り役になった。監督から、「ならば、お前が乾杯の音頭を取れ」と言われた彼は、みんながグラスを手にしたのを見てスピーチを始めた。
日本でも米国でも乾杯の音頭を取る人がスピーチをするのは共通だが、なんと言ったのか? と聞くと、「特にメディアに発表することではない」と彼は話したが、一言だけ教えてくれた。
「まあ、これだけは伝えたかったんだ。『みんな、歴史の一部に関われたことを誇りに思っている』って」
さすがにイチローの頭からシャンパンをかけたり、シャンパンファイトが行われたわけではないが、それぞれがその乾杯に思いを込めた。
「4257本って、日本の安打を加えたとしても、すごい数字だと思わないか」とヤンキース時代の14年にもわずかならイチローとチームメートだったことがあるプラード。「そのことに敬意を評したかったし、日米通算だろうが、彼が祝福されるのは当然のことだ。いつか、『俺はイチローとプレーしていたんだよって』孫にも言いたい(笑)」