バルセロナ、2冠達成も国王杯で大苦戦 本来の姿は延長戦で現れた

決勝で劣勢を強いられたバルサ

2年連続でリーガ・エスパニョーラと国王杯の2冠を獲得したバルセロナ 【写真:ロイター/アフロ】

 バルセロナが2年連続でリーガ・エスパニョーラと国王杯の2冠を獲得した。だが何年も経過した後に残るのは2冠を獲ったという記録だけで、延長戦の末にセビージャを破った国王杯決勝(2−0)で大苦戦を強いられたことは忘れ去られてゆくことだろう。

 シーズン当初、バルセロナは昨シーズンの成功の再現を期待されていた。だがシャビ・エルナンデスやペドロ・ロドリゲス・レデスマを失ったチームは昨季に比べて選手層が薄くなり、また1月から登録可能となった新戦力の2人(アレイクス・ビダルとアルダ・トゥラン)も期待していた活躍ができなかったことで、選手たちはフィジカルコンディションとプレー内容の両面で大きな消耗を強いられることになった。

 シーズン終盤に生じた失速により、チャンピオンズリーグ(CL)ではアトレティコ・マドリーに敗れて連覇の夢が散り(2戦合計で2−3)、独走態勢を築いていたはずのリーガでも最終節まで苦しむことになった。先述した国王杯決勝では、好調のセビージャを相手にボール支配率で下回るほどの苦戦を強いられた。

 国王杯決勝のバルセロナは、長いシーズンを通して蓄積されてきた疲労の大きさを色濃く感じさせた。一方、バーゼルでリバプールとの決勝を制して(3−1)ヨーロッパリーグ(EL)3連覇を果たしたばかりのセビージャからは、90分間を通して常にバルセロナ以上に強固なチームであるという印象を受け続けた。

 バルセロナがセビージャに苦しめられたのはこの試合だけではない。ジョージア・トビリシで行われた今季のUEFAスーパーカップでは一時4−1までリードを広げながら、その後同点に追いつかれ、悪夢のような大逆転負けを喫する寸前まで追い込まれた(最終スコアは5−4)。リーガのホームゲームでも大いに苦しめられ、セビージャにゲームを支配される時間帯もあった。

バルセロナの駒不足が露呈

延長戦でようやく本来の姿を取り戻したバルセロナは、セビージャゴールを脅かし続けた 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 マドリーでの国王杯決勝は、フリーで抜け出したケビン・ガメイロをファウルで止めたハビエル・マスチェラーノの退場(前半36分)により、1時間近くも1人少ない状態で戦うことになった。劣勢の展開を覆したのはリオネル・メッシが通した1本のパスだ。このパスを受けたネイマールを後ろからファウルで止めたことにより、この日がセビージャでのラストマッチとなったエベル・バネガが後半47分に一発退場となった。

 ほどなくもつれ込んだ延長戦では、両チームともに疲労の色が濃い中、数的同数を取り戻したバルセロナの強さが際立つことになった。優れたタレントを駆使してプレーの主軸を担うアンドレス・イニエスタは常に適したプレーを極めてシンプルにこなし、両サイドバックのダニエウ・アウベスとジョルディ・アルバは攻撃のアクセントとなり、屈強なジェラール・ピケはまずビセンテ・イボーラ、後にフェルナンド・ジョレンテへのハイボールを跳ね返し続けた。そしてメッシはアルバとネイマールのゴールを生み出す魔法のようなパスを通しただけでなく、セビージャの守護神セルヒオ・リコに数々のビッグセーブを強いた。

 マスチェラーノの退場に続き、後半12分のルイス・スアレスの負傷退場も生じた影響をもろに受けたこの試合は、バルセロナの駒不足がはっきりと見てとれた一戦でもあった。今季のバルセロナには、ディフェンスラインはジェレミ・マチューとマルク・バルトラの2人、中盤もラフィーニャとセルジ・ロベルトの2人しか有効なバックアッパーがいなかった。

今季も素晴らしい成功を手にしたセビージャ

セビージャはEL決勝でリバプールに逆転勝利を収めた 【写真:ロイター/アフロ】

 試合後セビージャの選手たちが見せた大粒の涙は、バルセロナほどのチームが滅多に与えることのないビッグチャンスを生かすことができなかったことへのフラストレーションの表れだと考えていいだろう。それでもウナイ・エメリが作り上げたチームが今季も素晴らしい成功を手にしたことに変わりはない。

 EL決勝でセビージャが実現した鮮やかな逆転勝利は、2つの意味で優れた功績だった。1つはリバプールがユルゲン・クロップの就任以降、著しい成長を遂げてきた好チームであるから。もう1つは前半終了時点まで一方的に押されていたにもかかわらず、エメリがハーフタイム中に与えたメッセージの効果もあり、後半開始直後には同点に追いついてしまったからだ。

 バルセロナとセビージャに加え、28日(現地時間)にミラノのサンシーロで行われるCL決勝を戦うレアル・マドリーとアトレティコ・マドリー、そしてELで準決勝まで勝ち上がったビジャレアルの躍進などを見る限り、スペインのフットボール界は至って健康な状態にあると言えるだろう。

(翻訳:工藤拓)
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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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