聖地に消えた幻のトップフィニッシュ アメリカズカップ、ソフトバンクの挑戦

中山智

“聖地”ニューヨークで開催

第5戦はアメリカズカップの聖地、ニューヨークで開催された 【写真:ロイター/アフロ】

 ニューヨークの中心地として高層ビルが建ち並ぶマンハッタン島。その南端西側、すぐ南には自由の女神を望むハドソン川の河口が、アメリカズカップ・ワールドシリーズ・ニューヨーク大会の舞台となった。

 1851年にイギリスから持ち帰られたカップは、このニューヨークにある「ニューヨーク・ヨットクラブ」に寄贈される。その後1983年に敗れるまで、132年もの間カップを保持し続けた。今大会は、アメリカズカップの歴史の中で“聖地”とも言える場所で開催されるのだ。

 またニューヨークでのレース開催も1920年大会が最後となっており、アメリカズカップ関連のレースとしては約100年ぶりのイベント。それだけに注目度も高く、主催者発表で10万人もの観客が、この記念すべきレースを見守った。

選手を悩ませたレース設定

興行のため陸上近くに設定されたコースで、選手たちは不安定な風に悩まされた 【Getty Images】

 その記念すべきニューヨークでのレースは、参加チームの選手が口をそろえて「難しいレース」とコメントするほど、タフなものとなった。

 ヨットは風のみを動力として帆走する。そのため、一定の風向から安定した風速で吹いているほうが走りやすい。ところが、ビルなどの障害物があると風向や風速が変わってしまう。マンハッタンのような高層ビルが密集しているような場所では、なおさら風に大きな影響が出てくる。
 さらに、ハドソン川の河口ということで潮流も非常に強い。ヨットは風が弱いとこの潮流にあらがえず、コントロールできずに流されてしまうケースもある。

 つまり不確定要素が多く実力以外の要素が勝敗を大きく左右するため、ヨットレースをする海面としては最悪と言ってもいい場所だ。また陸地からある程度距離があればビル風などの影響も少なくなるが、今大会では回航マークやフィニッシュラインが陸上から20〜30メートルと至近距離に設定されていた。

 アメリカズカップを含め、五輪など最近のヨットレースは興行面が重要視され、このように陸上から観戦できる距離にレース海面が設定されることが多くなっている。もちろんファンのために「見えるヨットレース」をイベントすることは重要だが、そのためにセーラーの実力が発揮できないレースとなっては意味がない。

1/2ページ

著者プロフィール

1974年生まれ。本業はITやモバイル業界をメインに取材・執筆をしているフリーライター。海外取材も多く、気になるイベントはフットワーク軽く出かけるのがモットー。大学在学中はヨット部に所属し、卒業後もコーチとしてセーリング競技に携わっている。アメリカズカップのリポートをとおして、セーリング競技に馴染みのない人たちへヨットの認知度アップを狙っている

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント