ソフトバンク上位進出の戦略とは!? 中東で得たアメリカズカップへのヒント

中山智

前大会から4カ月「研究してきた」

「前大会から約4カ月と時間があり、クルーワークや艇のチューニングなど、いろいろと勉強、研究してきた」。ソフトバンク・チーム・ジャパンの早福和彦総監督はレース前日に力強く語っていたが、大きく期待を裏切る結果となった。

 昨年10月に開催されたバミューダ大会から、約4カ月の期間をあけて開催された、アメリカズカップ・ワールドシリーズ第4戦。開催地はアラビア半島の東端に位置するオマーンで、アメリカズカップのイベントとしては初めて中東で行われる。オセアニアや欧州で盛んなセーリング競技だが、近年中東でも大規模な国際大会が開かれるようになっており、注目される地域だ。

ニュージーランドチームのメインスポンサーは、中東UAEのエミレーツ 【中山智】

 レース海面はオマーンの首都マスカットの北側にあるオマーン湾。砂漠気候に位置するため、夏期は最高気温50度を超えることもあるが、開催日の2月27日〜28日は冬にあたり、気温も30度前後と過ごしやすい。風向は海風で、風上方向に陸地や建物がなく安定した風が期待でき、練習で海面を帆走した早福総監督は「潮流などもあまり気にならない」と語るなど、コンディションとしてはクセのない海面だ。こういった海面では、風のふれなどレース結果に大きな影響を与える要素が少ないため、実力差が出る海面と言える。

好スタートを連発したが……

マスカットのゴルフ場を観客に開放し、一般客も無料でレース観戦が可能だった 【中山智】

 現地時間2月27日の大会初日。風速は8ノット(約4.1m/s)とフォイリング(艇を海面上に持ち上げて帆走)には難しいが、規定の6ノットを超え無事レースが行われた。ちなみに、今大会から1日3レースとなった。より多くのポイント獲得が期待でき、トップチームとの差を縮めるチャンスも大きくなっている。

 初日のソフトバンク・チーム・ジャパンは、アメリカズカップのスキッパー(艇長)としてキャリア、実績ともに申し分ないディーン・バーカーがその実力を発揮しスタートでさえを見せる。

 1レース目から3レース目まで、全レース好位置でのスタート。2レース目ではトップスタートで第1マークを2位で回航、3レース目も好位置からのスタートで、第1マークを1位で回航している。

 セーリング競技のスタートは、陸上競技と違い定位置から「よーいドン」でスタートするのではなく、海上で決まったブイとブイを結んだラインを特定の時間に通過する方式だ。ヨットは海上で同じ位置にとどまっていることができないので、相手艇をけん制しつつ、帆走しながらスタート時間のタイミングに、トップスピードでスタートラインを通過するのが重要。実質スタート前からレースが始まっている状態だ。そのため好スタートを切ることがセーリングでのレース、特にマッチレースでは勝利への大きな決め手となっている。

スタート時間のタイミングに、トップスピードでスタートラインを通過することが重要となる 【中山智】

 好スタートを連発していたソフトバンク・チーム・ジャパンだが、その後のレース展開は、逆にさえがなくズルズルと後退する姿が目立ち、結果的には2レース目こそ2位でのフィニッシュだったが、1レース目と3レース目は5位となっている。

 これは2日目も同様で、スタートこそ好位置だがレース中盤で遅れをとることが多く、4レース目は3位、5レース目は6位となってしまう。さらに6レース目は、スタートでリコール(フライング)をしてしまい、ペナルティーでレース中盤は最下位まで順位を落としていた。

 結果的に6レース目は4位でのフィニッシュとなったが、5位のエミレーツ・チーム・ニュージーランドはエリア外帆走のペナルティー。6位のアルテミス・レーシングは、マーク回航中にロープが絡まるというトラブルが発生したため、いわば敵失での4位。それがなければ6位はほぼ確実だった。

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著者プロフィール

1974年生まれ。本業はITやモバイル業界をメインに取材・執筆をしているフリーライター。海外取材も多く、気になるイベントはフットワーク軽く出かけるのがモットー。大学在学中はヨット部に所属し、卒業後もコーチとしてセーリング競技に携わっている。アメリカズカップのリポートをとおして、セーリング競技に馴染みのない人たちへヨットの認知度アップを狙っている

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