松本山雅が手に入れたい真の成功 初めての降格経験も止まらない成長曲線
東京V戦で感じた4年の月日
東京Vを相手に4−0という今季最多得点勝利を手にした松本山雅 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】
東京Vは反町体制がスタートした12年の初戦で戦った相手。当時の山雅は一方的に主導権を握られて0−2で敗れ、歴然とした力の差を突きつけられたが、4年超の月日が経過した彼らの戦いぶりは全く違っていた。
この日の山雅は開始8分に宮阪政樹が直接FKをたたき込んで先制。その後、東京Vのスピーディーな速攻やサイドからの揺さぶりに翻弄(ほんろう)されるシーンも見られたが、キャプテン・飯田真輝ら守備陣がしっかりと耐えて失点を防ぐ。そして工藤浩平が得たPKを前半28分に高崎が確実に決めて2−0とリードを広げる。
後半もこの大型FWが中央突破とサイドからの崩しで2点を追加。3月末のレンタル加入後、初のハットトリックを達成する。C大阪戦の後、「高崎を含めて点の取れる選手がいない」と嘆いていた反町監督を驚かせるゴールラッシュで、山雅は4−0という今季最多得点勝利を手にした。首位を走る町田ゼルビアとの勝ち点差6をキープし、順位もJ1昇格プレーオフ圏内の6位に再浮上。1年でのJ1復帰に光明が差してきた。
5節終了時で12位と低迷も……
新シーズンを迎えるにあたり、宮阪、當間建文、シュミット・ダニエル、山本大貴ら新戦力を加え、反町監督とエルシオ・フィジカルコーチ以外のコーチングスタッフを一新。心機一転、再出発した山雅だったが、2月28日の今季開幕・ロアッソ熊本戦でいきなり0−1の黒星。暗雲立ち込めるスタートを強いられた。その後もオビナやウィリアンス、石原ら攻撃陣の負傷が相次いだうえ、新たに取り組んでいるボールポゼッションを織り交ぜた戦い方が消化不良となり、3月末までの序盤5試合は1勝2分け2敗の勝ち点5。順位も12位という想定外の苦境に陥った。
一度、下降線をたどり始めたチームが上昇曲線を描くのは難しい。過去の例を見ても、かつての名門クラブであるジェフ千葉や京都サンガF.C.が何年もJ2から這い上がれず、13年にJ1参戦した大分トリニータに至っては2年で一気にJ3まで降格してしまっている。山雅にもこうした危険性がないとは言えない。それでも、昨季初めてJ1を経験した岩間雄大が「J1は本当に素晴らしい舞台だとみんなが感じた。だからこそ、『必ず戻る』という強い気持ちを持ち続けて戦うしかない」と力を込めたように、選手たちは決して諦めることはなかった。
現場の思いにクラブ側もいち早く対応。3月末に鹿島アントラーズから高崎を補強し、大型FWを起点に攻めを組み立てるという従来のスタイルに回帰しつつ軌道修正を図った。4月に入ってから左サイドに定着した那須川のブレークもあって、外からの崩しにも迫力が出てきた。シュミット、當間の加わった守備陣の安定感も高まり、4月は3勝2分けの無敗。10試合終了時点の順位も6位までアップし、ようやく明るい希望が見えてきた。