韓国ロッテがドラえもんとコラボ イベントから見える韓国の社会事情
右胸の下にドラえもんが描かれたユニホームを着る選手。23日先発したコ・ウォンジュン(左)とジャイアンツのジャイアン(?)4番打者のチェ・ジュンソク 【ストライク・ゾーン】
一方、隣国の韓国では昨年からSKワイバーンズがアニメ「ポケットモンスター」の人気キャラクター「ピカチュウ」と共同プロモーションを実施。そして今年はロッテジャイアンツが世界的な人気を誇る「ドラえもん」とコラボレーションを行っている。ロッテの場合、ドラえもんが描かれた斬新なデザインのユニホームを採用しているのが特徴だ。韓国で日本のキャラクターが取り入れられているというと、「パクリだ」と安易に反応する人もいそうだが、これらは作品やキャラクターの正規版権を取得した韓国企業によって管理・運営されている。
人気回復策だけではないコラボレーション
スタンドは活気があふれ、ドラえもん限定グッズの売り上げも好調だ 【ストライク・ゾーン】
ロッテは2012年まで韓国ナンバーワンの動員力を誇り、年間130万人、1試合平均約2万人の観客を集めていた。しかしこの3年間は成績低迷などで観客が40%近く減少している。そこで人気回復策の一つとしてドラえもんとのコラボ実施に至った。
しかしこの企画は単なる客寄せ目的だけではない。選手が着用したドラえもんユニホームはシーズン終了後、ネットオークションにかけられ売上金は全額、恵まれない子供たちに寄付される予定だ。貧富の格差が大きい韓国では、「疎外階層」と呼ばれる世間の関心から疎外された貧困層や社会的弱者の増加が深刻な問題になっている。ロッテ球団は疎外階層児童の支援のため、11年からユニセフ(国際連合児童基金)と協約を結び社会貢献活動を実施。毎月1試合、ユニセフデーと銘打った試合では胸に「unicef」とデザインされたユニホームを着用し、14年には来場者1人あたり1000ウォン(約98円)を積み立てるなど、年間1000万円単位の寄付を行っている。
社会貢献に積極的な韓国球界
韓国の各球団は子供向けの支援だけではなく、シーズンオフになるとひとり暮らしの高齢者が寒い冬を乗り切れるようにと、選手たちが住宅地を回り練炭を届ける行事が恒例になっている。韓国の賃金労働者の平均年収は3240万ウォン(約317万円。14年韓国・全国経済人連合会調べ)と集計されているが、年収2000万ウォン(約196万円)を下回る人の割合が37.3%を占め、格差は顕著だ。平均年俸が1億2656万ウォン(約1240万円。外国人選手と新人を除く)の韓国のプロ野球選手たちは自らが「恵まれた存在」であるという意識が強く、社会貢献活動に積極的に取り組んでいる。
今月、ロッテの本拠地である釜山サジク球場前の広場では、ドラえもんの韓国でのライセンスを持つデウォンメディアが企画した、「ドラえもんのひみつ道具100展」が24日まで行われた。これまで香港、台湾、中国で行われてきたこのイベントは、昨年韓国での初開催を首都ソウルで行った。キム・チーム長は今回この催しが釜山で行われたことに意味があるという。「釜山は韓国第2の都市(人口約350万人)ですが、日本の大阪のように首都と並び称される大都市ではありません。このようにたくさんの子供たちが集えるイベントが釜山で開かれることは珍しいことです」。韓国は人口約5000万人のうち、ソウルを中心とした首都圏に人口の半数近くが在住。一極集中による地域格差も韓国が抱える問題点になっている。