潔し!フェラーリ、ベッテルの負けっぷり 今宮純のF1開幕戦インプレッション
やり返すのは、この開幕戦だ。しかし金曜フリー走行1回目からハミルトンはトップタイムを続け、フリー走行2回目で焦る気持ちから不用意にスピン・アウト。ロズベルグは、すべてのセッションで劣り、なんとか予選で2位につけたが心は曇る……。
やっと青空が広がった日曜。開幕日和となったところでスタート・キャンセルのハプニング。ダニール・クビアトがグリッド手前まで来てトラブルで止まり、2年前のようなエクストラ・フォーメーションラップ、57周レースとなる。あのときもハミルトンはポールポジションから、スタートに失敗している(結果はパワーユニットのトラブルで2周リタイア)。勝ったのはロズベルグだ。これを見た、ふたりの深層心理はどうか。絶対有利なはずのハミルトンは動揺し、不利なロズベルグに千載一遇の機会が生まれるという考えが浮かんだ。
スタートでフェラーリの戦法がはまる
視点を、スタートで1−2を決めたベッテルとライコネンに移そう。フェラーリ・チームはパワーユニットの単一マッピング規制に合わせたスタート練習にテストから励んでいた。そろってダッシュ成功は、そうとしか思えない。メルセデスに挑戦する年、彼らはスタート性能の向上と軟らかいタイヤ・スペックの活用にこだわり、予選よりも決勝に焦点を絞ったテストを重ねていた。その戦法が炸裂した開幕戦、1コーナーを真っ赤に染めた1−2に世界中が興奮する。
1周目ベッテル1位、ハミルトン6位。ガードマンのように2位ライコネンがいて、3位ロズベルグを抑える。前衛がリードして後衛が抑えこむ1−2は、理想のパターン。まずフェラーリはベッテルを13周目にピットに入れ、再びスーパーソフト選択で攻撃。ライコネンはステイさせて敵2台を翻弄(ほんろう)する戦法に出た。こういうミッションを黙々と遂行できるライコネンは16周目まで粘ってピットイン。ここでロズベルグが2位に割り込んで1−3に変わるが、スーパーソフトのライコネンはミディアムのロズベルグを追い込めるはず、だった。