落選から1年…結実した田中智美の思い 故障ギリギリの努力で難レース制す
「誰よりも私がリオに行きたい」
小原(写真奥)との終盤のデッドヒートを制して日本人トップでゴールした田中。リオ五輪代表の座を大きく手繰り寄せた 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
「狙っていたのは優勝。日本人トップを考えていませんでした」
しかしその差は少しずつ広いていく。逆に37キロ手前で後方から追い上げてきた小原に捉えられ、ここから2人は前後する形でデッドヒートを繰り広げた。
前に出たのが小原、背後に田中がつく展開。その意図を小原はこう振り返る。
「田中さんに追いついた時、ペースを落としたくなかったですし、前をいく外国人選手(キルワ)との差も詰まっている感じがありましたので、目指すのはそこだと思っていました」
小原は田中に追いつくも、そのバネのある走りを目にし、引き離せないと悟ったという。この時点でラスト勝負を覚悟したが、それでも背後で「力を貯める」選択はしなかった。そのコメントにあるように小原も田中同様、優勝を目指していた。
結果的にここで後ろについたことで田中が立て直した。ラスト勝負は勝てる自信があったという。
「(優勝した14年11月の横浜国際マラソンと)同じ展開。誰よりも私がリオに行きたい気持ちが強い」
その思いを感じさせるスパート。フィニッシュ直前で小原を振り切った。
ハイレベルな戦いに陸連も高評価
そのタフなレースにもかかわらず、田中、小原は30キロからのペースアップに成功し、ラスト2.195キロも田中が7分10秒、小原もその1秒遅れでカバーした。これはともにキルワを上回るものだ。リオ五輪の設定記録(2時間22分30秒)の突破こそならなかったが、日本陸上競技連盟・尾縣貢専務理事が「タイム、内容とも高く評価できる」という選考レースらしいハイレベルな戦いだった。