さらばリーガ・エスパニョーラの優勝争い バルサについていけなくなったマドリー勢

広がり続ける2位以下との勝ち点差

先週末にマラガと引き分け、勝ち点を落としたレアル・マドリー。リーガの行方はほぼ決してしまった 【写真:ロイター/アフロ】

 レアル・マドリーとバルセロナは、近年ハイレベルな競争を繰り広げてきた。とりわけアトレティコ・マドリーがタイトル争いに加わるようになって以降は、まだ13節も残っている段階でリーガ・エスパニョーラのタイトルの行方がはっきりと決まってしまうことなどなかった。

 このような状況をもたらした原因は、全コンペティションを通して33戦も無敗を保っているバルセロナの強さに加え、不安定なパフォーマンスが続くレアル・マドリーとアトレティコ・マドリーがそのペースについていくことができていないことにある。

 これまで3つのコンペティション全てを平行して戦ってきたバルセロナとは違い、他の2チームはリーガと再開したばかりのチャンピオンズリーグ(CL)しか生き残っていない。バルセロナは、昨年12月に日本でクラブワールドカップを戦い、1月以降は国王杯とリーガの連戦を戦い抜いてきた。それに対し、特にレアル・マドリーは年明け以降の2カ月にわたり、十分な休養を取りながら国内リーグのみに集中することができたはずだ。

 にもかかわらず、第25節までを終えて、バルセロナは既に2位アトレティコ・マドリーに勝ち点8差、3位レアル・マドリーには同9差をつけてしまった。

 さらには勝ち点で並んだ際に順位を左右する直接対決の結果でもバルセロナはライバルの2チームを上回っている。既にアトレティコには2勝しているし、レアル・マドリーにも敵地サンティアゴ・ベルナベウで4−0と大勝している。第31節に行われるホーム・カンプノウでの一戦で、それ以上の大敗を喫することはまずないだろう。

 つまり、勝ち点で並んだとしてもバルセロナに追いつくことはできない。実質的にアトレティコ・マドリーとの勝ち点差は9、レアル・マドリーとは同10もついているのである。

 しかも今週末の第26節でバルセロナがセビージャに勝ち、アトレティコ・マドリーとレアル・マドリーが直接対戦するダービーで引き分けに終わった場合、その差は12節を残した時点でほぼ4試合分まで広がることになる。

覇気のない国内リーグの戦いぶり

アトレティコ・マドリーも先週末のビジャレアル戦で勝ち点を落とした 【写真:ロイター/アフロ】

 1−1で引き分けた先週末のマラガ戦後、ジネディーヌ・ジダン監督は「リーガは終わっていない」「(残り13試合で奪える勝ち点は)まだ39ポイント残っている」と繰り返していた。だがそれは彼の本心というよりも、世界中に抱える多数のファンに向けた、マーケティング面を気にした発言のように感じられた。リーガ・エスパニョーラは、少しずつプレミアリーグとトップリーグの覇権を争う力をつけつつあり、興味を失ってもらっては困るのだ。

 実際にレアル・マドリーとアトレティコ・マドリーの国内リーグの戦いぶりを見てみれば、現時点で彼らが本気で狙っているタイトルはCLしかないことが見てとれる。それもバルセロナとの差が開き過ぎてしまった今となっては仕方のないことなのだが。

 アトレティコ・マドリーはホームのビセンテ・カルデロンに強豪ビジャレアルを迎えた先週末の一戦(0−0)で、1ゴールも挙げられなかった。その事実は、現時点でアトレティコ・マドリーが優勝に値するチームではないことを物語っていた。それでもディエゴ・シメオネと選手たちは、常に2強とタイトル争いを繰り広げてきた自分たちの功績がかすむことはないことをよく分かっている。今後彼らが目指すのは、年間予算で遥かに上回るレアル・マドリーより上の順位でシーズンを終えることだ。

 レアル・マドリーは底知れぬポテンシャルと得点力、そして世界最高の選手たちを擁しながら、マラガ戦でも大苦戦を強いられた。もちろんイドリス・カメニがクリスティアーノ・ロナウドのPKを止めていなければ、異なる結果を手にしていたかもしれない。だが、逆に相手が手にした多数のチャンスを決めていれば、負けていた可能性もあったのだ。

 今のレアル・マドリーが抱える問題は決定力の有無にとどまらず、強力な3トップ「BBC(ガレス・ベイル、カリム・ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウド)」のうちの1、2人が欠けた際に同じレベルを維持できないことにある。ヘセは素晴らしいアタッカーだし、イスコも左右中央を問わず3トップの一角としてプレーすることはできる。だが彼らのいずれもBBCのレベルには遠く及ばないのだ。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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